2019年9月28日土曜日

Break 26

登場人物紹介


クワク・カササ・ドーマー

アフリカ・ドーム遺伝子管理局長。 ハイネより20歳年下。


カール・シュミット

西ユーラシア・ドーム長官。 ケンウッドより2歳上だが、長官歴はまだ5年。
ケンウッドとは大学時代からの知り合い。セイヤーズの遺伝子が危険値S1と知って、セイヤーズの所有権をあっさり放棄した。


グエン・バン・チュー

地球人類復活委員会副委員長。
東アジア・ドームでの勤務経験あり。宇宙では対外折衝を主に行なっている。


マイケル・ケント

アメリカ連邦捜査局副局長。


クリステル・ヴィダン

ローガン・ハイネとダニエル・オライオンの養育係だったコロニー人。
ハイネが幼少期に既に退職。


キャロル・ダンスト

ドーム空港総合支配人。 元ドーマーの女性。


ローガン・セドウィック・パーシバル

ヘンリー・パーシバルとキーラ・セドウィックの一人息子。
一卵性双生児の妹シュラミス、ショシャナと三つ子。
植物関係の遺伝子工学研究者になることを夢見ている。


シュラミス・セドウィック・パーシバル

ヘンリーとキーラの長女。一卵性双生児の妹ショシャナと、卵子違いのローガンとは三つ子。三つ子のリーダー格的存在。
幼少期からケンウッドに片想いの恋をしている。
愛称はシュリー。


ショシャナ・セドウィック・パーシバル

ヘンリーとキーラの次女。ローガン、シュラミスと三つ子の一人。
ヤマザキ・ケンタロウのファン。
ピアニストとして身を立てることを夢見ている。


ハンニバル・グリューネル・ドーマー

ドームの航空班長。航空機とドーム空港の統括をしている。
所属は輸送班だが、遺伝子管理局との仕事に重点を置く業務なので、遺伝子管理局との繋がりが他の輸送班より強い。


オレプ・ニエレレ

アフリカ・ドーム長官。
ヒトゲノムの研究者。先祖はマサイ族。


ジャック・ドヌーヴ

アメリカ・ドーム執政官。
太陽からの放射線と遺伝子の関係を研究している博士。中米班、南米班と親しい。


マーク・グレイザー

アメリカ・ドーム執政官。


ジェセフィン・カタダ

アメリカ・ドーム執政官。

2019年9月8日日曜日

Break 25

登場人物紹介

(登場順)

ティム・マーランド

クローン製造部の研究員。ヤマザキ、ハイネ、アイダと野外シミュレーションでキャンプに行ったが、ハイネとアイダの仲に気がつかなかった。


ジェラルド・ハイデッカー・ドーマー

北米南部班第4チームのリーダー。4Xが方程式ではなく生きた女性だと確認した。


ソフィア・ケプラー

宇宙連邦議会の議員。厚生福祉委員会の委員。ニコラス・ケンウッドの昔の婚約者。政治活動にのめり込みすぎてケンウッドにフラれた過去を持つ。


サンディ・トラバース

赤毛のミトコンドリア研究者。ヤマザキ・ケンタロウの恋人。ただし、本人はコロニーにいるので、物語に登場しない。名前が話題に出るのみである。


ヴァレリア・サントス

ケプラー議員の秘書。元人材派遣会社の営業。化粧品会社にテスト用モデルを派遣する仕事をしていてケンウッドと知り合った。ニコラス・ケンウッドの昔の婚約者。ケンウッドが研究に夢中になる癖を直さなかったので、彼女から彼をフった。


コリン・エストラーベン・ドーマー

遺伝子管理局内務捜査班の若き精鋭。ビル・フォーリー・ドーマーの弟子。


2019年9月2日月曜日

Break 24

 本編の、ドーム側から描いた話。
だから、本編を読んでおられない方には、話の進行状態が不明な箇所もあるかと。
同じ副題をラベルから検索して読んでいただくと、多少はご理解いただけるかと(笑

2019年8月26日月曜日

家路 2 4 - 9

「局長と長官にお尋ねしたいのですが・・・」

とセイヤーズが言った。レインが振り返ったので、彼等の間で打ち合わせはなかったことなのだろう。ハイネが目で促したので、セイヤーズは続けた。

「静音ヘリのパイロット、ゴールドスミス・ドーマーが言ったのですが、局長は私がネット環境に触れなければ外出を許して下さるおつもりなのではないのかと・・・」

 ハイネが何の反応も示さないので、ケンウッドが代わりに答えた。

「私が、そのつもりになったのだよ、セイヤーズ。」
「えっ! 長官が?」

 セイヤーズの驚愕の表情を、ケンウッドは不謹慎ながら面白いと感じた。まさか外出許可を執政官から出されると思っていなかったのだろう。

「君は機械を見ればその仕組みを理解するし、使い方も教えられなくてもわかってしまう。部品さえあれば、欲しい装置を作って使うことも出来る。だが、何もなければ何も作らないし、何もしないだろう?」
「ええ・・・そうですが・・・」
「君の能力は先祖の記憶の蓄積だ。記憶にないものは作れないし、理解は教えられてからだ。そうでないかね?」
「仰る通りです。」
「宇宙の法律が君のタイプの遺伝子保有者を管理したがるのは、記憶の蓄積を元に保有者が何か犯罪を犯すのではないか、或いは犯罪に利用されるのではないかと恐れているからだ。しかし、君は善良な人間だ。君自身は無意識に記憶を使ってしまうかも知れないが、意図的に悪用したりしない。それは、このドームの者ならみんな信じていることだ。」
「有り難うございます。」
「私達が恐れているのは、君の遺伝子を手に入れて悪用する者が現れることだ。だから・・・」

 ケンウッドはハイネをチラリと見た。先祖の記憶がなくても自身で分析して新しいことを構築してしまう能力を持つこの男の方こそ、宇宙連邦は警戒すべきではないか、と彼は思ったが、口に出さなかった。
 彼はセイヤーズに向き直った。

「君が出来るだけ外部の人間との接触を制限して、決められた敷地内だけでネット環境に触れずに生活すると約束出来るなら、年に数回の外出を認めても良いと私は考えるのだがね、セイヤーズ。」

 セイヤーズはケンウッドを見つめ、それからハイネとヤマザキを交互に見て、最後にレインを見た。レインが言った。

「君は、ライサンダーと孫に会いに行けると、長官は仰ったんだ。」
「わかってるよ・・・」

とセイヤーズが掠れた声で答えた。

「だけど・・・誰か私の頬っぺたを抓ってくれないか?」

2019年8月22日木曜日

家路 2 4 - 8

 セイヤーズはレモンジュースを自身に、レインには水を入れて席に着いた。ケンウッドがレモンソーダを一口味わってから、ハイネに笑顔で頷いて味の評価を示した。そしてセイヤーズ達に向き直った。

「フランシス・フラネリーは息災だったかね?」
「はい、相変わらず精力的に活動されているようです。」
「あのパワーが羨ましいです。」

 セイヤーズの返答に続いてレインも取り替え子の妹を評価した。セイヤーズは、これが雑談の席と割り切ることにして、質問される前に話を進めた。

「ドッティ女史はモントレー一帯の土地を州から買取ました。購入の条件として、居住場所以外に建物は造らない、自然を現状維持する、向こう200年間は他者に売却しない、と言うことです。それで、フランシスはその売買契約の場に同席して、彼女がそこに居住することを州に認めさせました。」
「彼女は間借り人です。」

とレイン。

「家屋の所有はライサンダー・セイヤーズ、土地の所有者はアメリア・ドッティ、と言うことで話はまとまりました。家屋に大家以外の他の人が入居することは、ライサンダーとの契約になるので、州は誰が住もうが関知しません。フランシスはダリル・セイヤーズが農地として開墾した面積だけ農業用地として使用出来ます。ですから、彼女が何か別事業をあの場所で行うことは出来ません。」

 土地契約の話はハイネには関心がなさそうだったが、ドーマー達の社会復帰の訓練場所を探しているケンウッドは少々落胆した。セイヤーズの農地でドーマー達に土を触らせて見たかったのだが。すると彼の心の内を見透かしたかのようにセイヤーズが言った。

「フランシスは農業を知っていますが、あの地方での経験はないので、ライサンダーが教えることになりました。もっとも、2人とも勉強や海外のビジネスもあるので、常時あの場所にいられる訳ではありません。それで、長官に提案があるのですが、よろしいでしょうか?」
「提案?」

 ケンウッドはまだ何も内容を聞いていないのに、なんだか嬉しくなった。

「遠慮なく言ってくれ。ここは会議場じゃない。談話室で私達は雑談しているんだよ。」

 セイヤーズがニッコリした。レインは相変わらず真面目な顔をしている。セイヤーズがケンウッドの方へ体を傾けた。

「ドームはドーマーの社会復帰準備として保養所計画を練っていると聞きましたが、まだ具体的なプランを立てた訳ではないですね?」
「うん。ターナー総代が各班のチーフ達と相談しているところだ。」
「モントレーは保養所として利用するには、居住許可面積が狭すぎます。ですが、少人数で交代に使うことは可能です。」

 ケンウッドもセイヤーズの方へ体を向けた。何か面白いことを言ってくれるのかと期待していた。セイヤーズは端末を操作して、談話室のテーブルの上に彼の「山の家」の立体地図を出した。

「左の家は私が母屋として造ったものです。寝室が2部屋と居間と台所だけの狭い家です。フランシスはこの家を改装して、彼女とライサンダーと娘が住める広さに建て替える予定です。つまり、地下室と二階を継ぎ足すのですが。」

 彼は右の小さな建物を指した。

「これは私が作業小屋として造ったものです。車庫と農機具小屋、ガラクタ置き場を兼ねています。彼女はここも改装して、人間が寝泊まり出来る家にするつもりです。」
「ゲストハウスかね?」
「建前はそうなります。でも、彼女は私の提案を喜んでくれました。」
「君の提案?」
「彼女とライサンダーが家を留守にしても畑の面倒をみてくれる人が生活する家です。」

 使用人を雇うのか、とケンウッドは思ったのだが、セイヤーズはハイネの方を向いて言った。

「ドーマーの園芸班をモントレーの畑で働かせたいのですが、駄目でしょうか?」

 レインが急いでセイヤーズの言葉の足りない部分を解説した。

「つまり、園芸班の保養所にしたいと彼は言っているのです。本当の土で作物を栽培したり草花の世話をする体験をさせて、社会復帰の訓練に出来ないかと、彼は提案しています。」

 ほうっとヤマザキが感心した。

「山の家は街から遠いのだろ? ドーマーがいきなり実社会に出て戸惑うより、暫く外の環境に体を慣らして少しずつ里へ降りて行けば良いってことだな?」
「そうです、ヤマザキ博士!」

 セイヤーズが嬉しそうに微笑んだ。

「山の家は狭いので、全てのドーマーが寝泊まりするのは不可能です。だから、園芸班だけでも来てもらえれば、畑の世話と彼等の実地学習が同時に出来ます。それに、私達の孫が成長するに従って、親以外の人間と交流することも学ぶ必要が出てきます。園芸班も街の住民と交流して社会勉強が出来ます。」

 能天気なセイヤーズと違って何事も慎重なレインはそっとハイネの顔色を伺った。ハイネはこんな場合、いつも眠たそうな顔で聞いているのかいないのか、ぼーっとしているのだ。ケンウッドが、ハイネ、と呼びかけた。局長が目を長官に向けた。

「君はどう思う? セイヤーズとミズ・フラネリーが考えたプランは素敵だと思わないかい?」

 ハイネは遠くを見るような顔で言った。

「園芸班に直接話を持って行けば良いでしょう。ターナー総代と三者で相談して、まとまれば執政官にお伺いを立てることです。」

 セイヤーズとレインは顔を見合わせた。そして、いきなり2人でハイタッチした。局長と長官の了承を得た、と判断したのだ。



2019年8月20日火曜日

家路 2 4 - 7

 ダリル・セイヤーズ・ドーマーとポール・レイン・ドーマーが帰還したのは翌日の昼だった。レインから局長に報告したいと電話を受けたネピア・ドーマーはいつもの如く不機嫌そうな声で、

「私用での外出であるから、局長のオフの時間に局長ご自身に都合をお聞きしなさい。」

と突き放した言い方をした。本当は局長に接する部下の行動全てを掴んでおきたいのだが、ハイネからそうしろと言われていたので、仕方がない。セイヤーズは完全に私用だが、レインはセイヤーズの監視だから業務ではないか、とネピアは思ったのだ。だがハイネはレインとセイヤーズの息子と、レインの取り替え子の妹との話し合いだから、私用だと言った。

「部下の私用の報告に、君の貴重な業務時間を割く必要はないだろう?」

とハイネから言われると、ネピアは言い返せなかった。局長の業務を記録するのが第1秘書の仕事の一つだから、レインの報告を正規の業務と見なせば、ネピアの業務が増えるのだ。
 レインはそんな局長執務室内の上司達のやりとりを知らずに、局長の昼休みと思しき時間にもう一度局長本人の私用番号に電話をかけて、面会の時間と場所の約束を取りつけた。電話から1時間後に、彼等は指定された図書館の談話室に入った。
 談話室は10人程度の人がディスカッション出来る広さで、グループ学習の為の部屋だ。そこにハイネとケンウッド長官が座っていたので、レインは少し緊張を覚えた。しかも、どう言う訳か、医療区長のヤマザキ・ケンタロウまでいた。それで、レインはやっと、これがお昼休みの「雑談」だと合点した。
 2人の若いドーマーが入室すると、ちょうどローガン・ハイネが飲み物のサーバーのところで執政官達の飲み物を作っていた。図書館は原則飲食を禁じられているが、ロビーと談話室は飲み物を自分でサーバーから取ることが出来るし、好みの調合も出来る。ヤマザキがドーマー達を見て微笑んだ。

「ヤァ、お帰り。西部は乾燥していただろう? 何か飲むかい?」

 レインが数秒間躊躇った隙に、能天気なセイヤーズがサーバーの側に行った。

「私が入れましょうか、局長?」
「お構いなく。」

とハイネ。ケンウッドが言った。

「ハイネは腕の良いバーテンダーなんだよ、セイヤーズ。」
「そうなんですか?」

 セイヤーズが驚いて上司達を見比べた。ヤマザキがハイネに声を掛けた。

「そうだ、ハイネ、ドームが解散した暁には、君はバーテンダーになれば良いぞ。店の開店資金ぐらいなら、僕が出資してやる。」
「止せ止せ、ケンタロウ。ハイネがバーテンダーになったら味見ばかりしていつ客に酒が出せるか、わからんぞ。」

 ケンウッドの言葉に、レモンジュースに炭酸水を加えていたハイネが吹き出しそうになった。


2019年8月15日木曜日

家路 2 4 - 6

 夕食の後、ケンウッドはハイネと共に医療区のヤマザキ・ケンタロウを見舞った。ヤマザキは血色良く、食事も普通に食べて、病室内を退屈そうに歩き回っていた。ケンウッドが入室すると、顔を見るなり照れ笑いした。

「いやぁ、入院って言うもんが、こんなに退屈だとは、経験してみないとわからんもんだなぁ!」

 ケンウッドはハイネと思わず顔を見合わせた。ハイネが言った。

「これで入院患者の扱いが以前よりマシになると良いのですが・・・」
「おいおい、僕が患者を虐待していたみたいな言い方じゃないか。」

 ヤマザキがむくれて見せたので、ケンウッドとハイネは笑った。 取り敢えずヤマザキをベッドに座らせて、彼等も椅子に座った。

「元気で良かったよ。ハイネから君が入院したと聞かされた時は、どんな重病かと心配したがね。」

 ケンウッドが笑って言うと、ヤマザキは

「くたばって欲しかったんじゃないか?」

とからかった。ハイネがちょっとムッとした表情を作って見せた。

「私より若いのに、くたばってもらっては困ります。貴方がいなくなったら、誰が私の肺の面倒を見るんです?」

 ヤマザキがはっはっはっと笑った。

「やっと僕の重要性を認めたな、この爺さんは!」

 ハイネが肩を竦めてケンウッドを見た。ケンウッドは笑うしかなかった。

「私達は、新たな道を進み始めたところだ。ケンタロウもハイネも私も、まだくたばるわけに行かないよ。まぁ、そうだね・・・ケンタロウは暫く水泳を控えてもらおうか。」
「ええ? 水泳は僕の健全な趣味の一つだぞ。」
「ケンタロウ。」

とハイネが窘めた。

「長官の忠告はちゃんと聞きなさいよ。」
「そうだ、足がつる心配がなくなる迄、陸上でトレーニングしてるんだね。」

 がっくり肩を落とすヤマザキの背をケンウッドは手で軽く叩いて励ました。そしてハイネを見ると、老ドーマーは優しい眼差しで彼とヤマザキを見ていた。ケンウッドはふと気が付いた。ヤマザキがプールで溺れかけたのを救助したのはハイネではないのか、と。ヤマザキはハイネが泳ぐと、いつも彼の肺を心配して様子を見に行く。きっと昨夜もそうしたのだ。そして自分もハイネについて泳いでいて、足をつったのだ。

 2人が一緒にいて良かった・・・

 ケンウッドはハイネにも言った。

「ケンタロウが泳いでも平気になる迄、君も水泳をちょっとだけ控えてやってくれないか? さもないと、ケンタロウがまたプールに入るだろうから。」
「了解です。」

 ハイネは答えて、可笑しそうに笑った。 それで、ケンウッドの想像が正解だったことがわかった。