真夏のドームは、冷房に電力を大量に消費するので、外の太陽光発電パネルを増やす。パネルの反射光がドームに入らないよう、外壁が光を跳ね返すので、内部の人間は野原が無粋な板に覆われたな、と思うだけだが。
ジェリー・パーカーは体調が回復すると、午後の休憩時間に壁に出かけた。昼寝をしたかったし、会いたい人もいた。
遺伝子管理局のローガン・ハイネ・ドーマーは彼の期待通り、壁のベッドでうたた寝をしていた。ジェリーは邪魔をしないように少し離れた位置に昼寝場所を取り、半時間ばかり眠った。
やがて、局長が両腕を伸ばし、ウンと声を上げて伸びをした。ジェリーはその声で目覚めた。局長が滑り降りるのが視野の隅に入り、彼も慌てて降りた。
「こんにちは」
声を掛けると、ハイネが振り返った。ちょっと目を細めて彼を見た。
「やぁ、久し振りだな。」
「そうですね。」
ジェリーは言いたかったことを急いで頭の中で整理して口に出した。
「この前は折角俺の希望を聞き届けて下さったのに、騒ぎを起こして申し訳ありませんでした。セイヤーズにも怪我をさせちまって、ケンウッドに叱られました。」
「あんなのは怪我の内にはいらん。」
局長がクスッと笑った。
「セイヤーズは事故の後、無断で行動した。君の希望を逆に利用したのだ。」
「そう言ってもらえると、気が楽です。」
「ジェシー・ガーが警察に捕まる前に死亡したのは残念だったな。恐らくあの男はビューフォードの犯罪をいくらでも喋っただろうに。」
「すみません・・・」
ジェリーは局長の視線を受け止めるのが辛くなり、目を伏せた。あの瞬間理性を失ってしまったのは事実だ。
「人間だからな。」
とハイネが呟いた。
「どんなに歳を重ねても制御出来ない感情ってものは、誰にでもあるさ。」
彼等は庭園を抜ける道を歩き始めた。
「だが、これで君の気は収まったのかな?」
「ええ。」
ジェリーは微笑んで見せようと努力した。
「博士に直接手を下した男が死んで、何だか俺も気が抜けた気分です。」
「気が抜けたら、早く歳をとるぞ。」
「え?」
ハイネ局長が片眼を瞑って見せた。
「君に関心を寄せている女性がいるのだが、気が付いていないのかね?」
ジェリー・パーカーは体調が回復すると、午後の休憩時間に壁に出かけた。昼寝をしたかったし、会いたい人もいた。
遺伝子管理局のローガン・ハイネ・ドーマーは彼の期待通り、壁のベッドでうたた寝をしていた。ジェリーは邪魔をしないように少し離れた位置に昼寝場所を取り、半時間ばかり眠った。
やがて、局長が両腕を伸ばし、ウンと声を上げて伸びをした。ジェリーはその声で目覚めた。局長が滑り降りるのが視野の隅に入り、彼も慌てて降りた。
「こんにちは」
声を掛けると、ハイネが振り返った。ちょっと目を細めて彼を見た。
「やぁ、久し振りだな。」
「そうですね。」
ジェリーは言いたかったことを急いで頭の中で整理して口に出した。
「この前は折角俺の希望を聞き届けて下さったのに、騒ぎを起こして申し訳ありませんでした。セイヤーズにも怪我をさせちまって、ケンウッドに叱られました。」
「あんなのは怪我の内にはいらん。」
局長がクスッと笑った。
「セイヤーズは事故の後、無断で行動した。君の希望を逆に利用したのだ。」
「そう言ってもらえると、気が楽です。」
「ジェシー・ガーが警察に捕まる前に死亡したのは残念だったな。恐らくあの男はビューフォードの犯罪をいくらでも喋っただろうに。」
「すみません・・・」
ジェリーは局長の視線を受け止めるのが辛くなり、目を伏せた。あの瞬間理性を失ってしまったのは事実だ。
「人間だからな。」
とハイネが呟いた。
「どんなに歳を重ねても制御出来ない感情ってものは、誰にでもあるさ。」
彼等は庭園を抜ける道を歩き始めた。
「だが、これで君の気は収まったのかな?」
「ええ。」
ジェリーは微笑んで見せようと努力した。
「博士に直接手を下した男が死んで、何だか俺も気が抜けた気分です。」
「気が抜けたら、早く歳をとるぞ。」
「え?」
ハイネ局長が片眼を瞑って見せた。
「君に関心を寄せている女性がいるのだが、気が付いていないのかね?」