昼食を取っていると、ネピア・ドーマーからポールの端末に連絡が入った。
「午後2時にセイヤーズを伴って局長室に来い、とさ。」
ネピア・ドーマーはダリルの上司であるポールの顔を立てただけなのだろうが、ポールには堅物の局長第1秘書がダリルにいけずをしている様に思えるのだ。ダリルは気にしなかった。秘書会議の時はいつも無視されているので、ちゃんと相手にしてくれたことの方が嬉しかった。
やっぱり私は脳天気かなぁ・・・
ライサンダーのことは言及していないので、連れて行かない方が良いだろう、と二親は判断した。ライサンダーはジムで運動して、空いた時間はJJと図書館デートをすると言った。JJの彼氏であるはずのポールは、彼女が息子とデートしても気にしないようだ。
ドームの中では誰も女性に「悪さ」出来ないと信じている。
局長に面会することになったので仕事の調整を相談し始めた二親からライサンダーは視線を配膳コーナーに向けた。すると、そこには件の局長がいて、カウンターの向こうにいるスタッフに何やら声を掛けていた。ライサンダーは親達が局長に気が付いていないことを確かめると、席を立ってカウンターに近づいて行った。
「何故、私が来るといつも半熟とろとろチーズスフレがないのだ?」
とハイネ局長が尋ねていた。
「人気が高いからすぐ売り切れるんだ!」
カウンターに背を向けたまま、ピート・オブライアン・ドーマーが言った。彼は相手が誰だかわかっていない様子だ。
「今焼いているところだ。5分ばかり辛抱しろよ。」
ハイネ局長が子供みたいにふくれっ面をしたので、隣に立ったライサンダーはおかしくてクスッと笑った。局長が彼を見たので、彼はスカッシュの師匠に宥めるように言った。
「5分くらい待ちましょうよ、師匠。あちらの俺達の席へどうぞ。」
しかし、100歳を越えるドーマー界の長老は子供みたいにまだ文句を言った。
「焼き上がるなり売り切れたら、どうするんだ?」
「五月蠅い野郎だな。僕が半熟とろとろチーズスフレを焼くのは、ローガン・ハイネ・ドーマーの為なんだ。あの御仁は、僕が焼く半熟とろとろチーズスフレをいつも大絶賛して下さる。幼い子供みたいに可愛い笑顔で褒めて下さるんだよ。だけど、あの方はお忙しいので、僕の半熟とろとろチーズスフレをなかなか食べられない、お気の毒なのだ。あんたが食べたければ、ハイネ局長の後から来な・・・」
オブライアンがブツブツ言いながら体を廻転させてカウンターの方を向いた。
「あっ! 局長!!!!」
やっと相手が誰だかわかったオブライアンはうろたえた。ハイネ局長はニコリともせずに言った。
「私は、君が焼く半熟とろとろチーズスフレが食べたいのだ。焼ける迄、ここを動かんぞ。」
「あ、あの、焼き上がったら直ぐ僕がお席までお持ちしますから、どうぞ座ってお待ち下さい。」
オブライアンは厨房班だから、遺伝子管理局の局長は彼の上司ではないのだが、何と言ってもハイネ局長はドームの最長老で、ドーマー達のリーダーだ。全てのドーマー達の尊敬を集めている。その人に失言してしまったオブライアンは冷や汗をどっとかいた。
ライサンダーは彼にこれ以上恥をかかせては気の毒だと思ったので、こと大好物の半熟とろとろチーズスフレに関しては子供みたいに我が儘になってしまうハイネ局長を促した。
「仕事の話はしませんから、俺達と一緒にお昼をどうぞ。」
ローガン・ハイネ・ドーマーは厨房の竈を見て、それからライサンダーが指したテーブルを見た。午後2時に面会するはずの男が2人、こちらの騒動に気が付いて心配そうに見ていた。
局長はオブライアンに言った。
「向こうに居るから、ホールで頼む。」
「かしこまりました。」
ライサンダーは彼が先に支払いを済ませるのを待って、無料のカフェイン抜きの珈琲をカップに注いで彼に手渡した。
「午後2時にセイヤーズを伴って局長室に来い、とさ。」
ネピア・ドーマーはダリルの上司であるポールの顔を立てただけなのだろうが、ポールには堅物の局長第1秘書がダリルにいけずをしている様に思えるのだ。ダリルは気にしなかった。秘書会議の時はいつも無視されているので、ちゃんと相手にしてくれたことの方が嬉しかった。
やっぱり私は脳天気かなぁ・・・
ライサンダーのことは言及していないので、連れて行かない方が良いだろう、と二親は判断した。ライサンダーはジムで運動して、空いた時間はJJと図書館デートをすると言った。JJの彼氏であるはずのポールは、彼女が息子とデートしても気にしないようだ。
ドームの中では誰も女性に「悪さ」出来ないと信じている。
局長に面会することになったので仕事の調整を相談し始めた二親からライサンダーは視線を配膳コーナーに向けた。すると、そこには件の局長がいて、カウンターの向こうにいるスタッフに何やら声を掛けていた。ライサンダーは親達が局長に気が付いていないことを確かめると、席を立ってカウンターに近づいて行った。
「何故、私が来るといつも半熟とろとろチーズスフレがないのだ?」
とハイネ局長が尋ねていた。
「人気が高いからすぐ売り切れるんだ!」
カウンターに背を向けたまま、ピート・オブライアン・ドーマーが言った。彼は相手が誰だかわかっていない様子だ。
「今焼いているところだ。5分ばかり辛抱しろよ。」
ハイネ局長が子供みたいにふくれっ面をしたので、隣に立ったライサンダーはおかしくてクスッと笑った。局長が彼を見たので、彼はスカッシュの師匠に宥めるように言った。
「5分くらい待ちましょうよ、師匠。あちらの俺達の席へどうぞ。」
しかし、100歳を越えるドーマー界の長老は子供みたいにまだ文句を言った。
「焼き上がるなり売り切れたら、どうするんだ?」
「五月蠅い野郎だな。僕が半熟とろとろチーズスフレを焼くのは、ローガン・ハイネ・ドーマーの為なんだ。あの御仁は、僕が焼く半熟とろとろチーズスフレをいつも大絶賛して下さる。幼い子供みたいに可愛い笑顔で褒めて下さるんだよ。だけど、あの方はお忙しいので、僕の半熟とろとろチーズスフレをなかなか食べられない、お気の毒なのだ。あんたが食べたければ、ハイネ局長の後から来な・・・」
オブライアンがブツブツ言いながら体を廻転させてカウンターの方を向いた。
「あっ! 局長!!!!」
やっと相手が誰だかわかったオブライアンはうろたえた。ハイネ局長はニコリともせずに言った。
「私は、君が焼く半熟とろとろチーズスフレが食べたいのだ。焼ける迄、ここを動かんぞ。」
「あ、あの、焼き上がったら直ぐ僕がお席までお持ちしますから、どうぞ座ってお待ち下さい。」
オブライアンは厨房班だから、遺伝子管理局の局長は彼の上司ではないのだが、何と言ってもハイネ局長はドームの最長老で、ドーマー達のリーダーだ。全てのドーマー達の尊敬を集めている。その人に失言してしまったオブライアンは冷や汗をどっとかいた。
ライサンダーは彼にこれ以上恥をかかせては気の毒だと思ったので、こと大好物の半熟とろとろチーズスフレに関しては子供みたいに我が儘になってしまうハイネ局長を促した。
「仕事の話はしませんから、俺達と一緒にお昼をどうぞ。」
ローガン・ハイネ・ドーマーは厨房の竈を見て、それからライサンダーが指したテーブルを見た。午後2時に面会するはずの男が2人、こちらの騒動に気が付いて心配そうに見ていた。
局長はオブライアンに言った。
「向こうに居るから、ホールで頼む。」
「かしこまりました。」
ライサンダーは彼が先に支払いを済ませるのを待って、無料のカフェイン抜きの珈琲をカップに注いで彼に手渡した。