昼食の後、ポール・レイン・ドーマーはハイネ局長の部屋へ緊急会議の為に向かった。他の班のチーフ達も集合だ。中米班のクロエル・ドーマーは外へ出かける予定を急遽キャンセルしたし、南米班のホセ・ドルスコ・ドーマーに至っては、南米は遠いので1回出かけると1週間は帰らないのだが、2日で切り上げて早朝の飛行機で戻ってきた。
遺伝子管理局のドーマー達は、一体何事だろうと不安になった。しかし誰も会議の内容を知らなかった。
ダリルは午後の仕事を片付け、3時過ぎに食堂へ休憩に出かけた。すると珍しくラナ・ゴーン副長官が1人で遅い昼食を取っていた。ランチタイムはとっくに終了していたが、最高幹部の特権で厨房部に取り置きしてもらっていたらしい。
ダリルは周囲を見回し、パパラッチらしき者がいないか確認してから、カフェイン抜きの珈琲を取って副長官のテーブルに近づいた。
「こんにちは、そこへお邪魔しても宜しいですか?」
ラナ・ゴーン副長官は皿から目を上げた。ちょっと微笑んで見せた。
「良いわよ。貴方は休憩なの?」
「ええ・・・オフィスの方が片付いたので、ジムへ行く前の休憩です。」
「相棒は一緒じゃないのね。」
「今日は緊急会議です。」
ラナ・ゴーンには初耳だったらしい。
「遺伝子管理局の緊急会議ですか?」
「そうです。中央研究所には情報が行かなかったんですね?」
「多分、学術的な話題ではないからでしょう。」
メーカーの摘発や外の世界の現実的な問題にドームは関わらない。コロニーからの内政干渉になるからだ。ドームに報告がないと言うことは、ドーマーにトラブルが発生したと言うのでもないのだ。
外の問題となると、恐らくFOK関連だろうな、とダリルは推測した。現在、深刻な問題となっているクローン収容所襲撃と殺人事件の話だ、きっと。
「レインは忙しくなるでしょうね。」
とラナ・ゴーンが呟いた。
「JJもこれからマザーコンピュータのプログラム再構築に参加するので、あの2人は当分交際を発展させる暇はなさそうよ。」
彼女からポールの交際問題に関する発言があったので、ダリルはびっくりした。
「執政官の間でも話題になっているのですか、あの2人の交際が?」
「当然でしょう。ドーム一の美男子と、今注目を集めている遺伝子を見ることが出来る少女の恋愛ですよ。」
「貴方方は彼等を結婚させたいのですか? それとも別れさせたい?」
「貴方はどうなの?」
どうして誰も彼もが私の意見を聞きたがるのだろう・・・。
ダリルは少しうんざりした。ちょっと意地悪く言ってみた。
「私が、2人は別れた方が良い、と言ったら、ご満足ですか?」
ラナ・ゴーンは彼をじっと見て、それから彼を驚かせることを言った。
「レインは、私に貴方とつきあってくれと言ったのよ。」
「え?」
「貴方方は女性が間に割り込んでも平気だって。」
ポールがそんなことを? 勿論、ダリルもそう思っている。しかしポールとそんな話をしたことはなかった。世間の男性同士のカップル、女性が極端に少ないこの時代では男性同士の恋愛は珍しくなかったが、彼等は第3者が間に入るのを好まない。ダリルとポールも、男が割り込めば気まずくなるはずだが、女性が入って来るとどうなるのかは、実はまだ経験がないのでわからなかった。
「私は、JJがレインのことを大好きだと言うのは知っています。レインも彼女が好きなんです。でも、彼は家族と言うものを知りません。JJは両親と一緒に暮らしていたので、当然知っています。JJが目指しているものが家庭を作ることだったら、レインは応えられないかも知れません。私はそれを心配しています。JJを傷つけたら彼自身も傷ついてしまいます。」
「セイヤーズ」
とラナ・ゴーンが優しく言った。
「貴方が山奥の家で子供を育て始めた時、貴方は家族がどんなものか知っていたの?」
遺伝子管理局のドーマー達は、一体何事だろうと不安になった。しかし誰も会議の内容を知らなかった。
ダリルは午後の仕事を片付け、3時過ぎに食堂へ休憩に出かけた。すると珍しくラナ・ゴーン副長官が1人で遅い昼食を取っていた。ランチタイムはとっくに終了していたが、最高幹部の特権で厨房部に取り置きしてもらっていたらしい。
ダリルは周囲を見回し、パパラッチらしき者がいないか確認してから、カフェイン抜きの珈琲を取って副長官のテーブルに近づいた。
「こんにちは、そこへお邪魔しても宜しいですか?」
ラナ・ゴーン副長官は皿から目を上げた。ちょっと微笑んで見せた。
「良いわよ。貴方は休憩なの?」
「ええ・・・オフィスの方が片付いたので、ジムへ行く前の休憩です。」
「相棒は一緒じゃないのね。」
「今日は緊急会議です。」
ラナ・ゴーンには初耳だったらしい。
「遺伝子管理局の緊急会議ですか?」
「そうです。中央研究所には情報が行かなかったんですね?」
「多分、学術的な話題ではないからでしょう。」
メーカーの摘発や外の世界の現実的な問題にドームは関わらない。コロニーからの内政干渉になるからだ。ドームに報告がないと言うことは、ドーマーにトラブルが発生したと言うのでもないのだ。
外の問題となると、恐らくFOK関連だろうな、とダリルは推測した。現在、深刻な問題となっているクローン収容所襲撃と殺人事件の話だ、きっと。
「レインは忙しくなるでしょうね。」
とラナ・ゴーンが呟いた。
「JJもこれからマザーコンピュータのプログラム再構築に参加するので、あの2人は当分交際を発展させる暇はなさそうよ。」
彼女からポールの交際問題に関する発言があったので、ダリルはびっくりした。
「執政官の間でも話題になっているのですか、あの2人の交際が?」
「当然でしょう。ドーム一の美男子と、今注目を集めている遺伝子を見ることが出来る少女の恋愛ですよ。」
「貴方方は彼等を結婚させたいのですか? それとも別れさせたい?」
「貴方はどうなの?」
どうして誰も彼もが私の意見を聞きたがるのだろう・・・。
ダリルは少しうんざりした。ちょっと意地悪く言ってみた。
「私が、2人は別れた方が良い、と言ったら、ご満足ですか?」
ラナ・ゴーンは彼をじっと見て、それから彼を驚かせることを言った。
「レインは、私に貴方とつきあってくれと言ったのよ。」
「え?」
「貴方方は女性が間に割り込んでも平気だって。」
ポールがそんなことを? 勿論、ダリルもそう思っている。しかしポールとそんな話をしたことはなかった。世間の男性同士のカップル、女性が極端に少ないこの時代では男性同士の恋愛は珍しくなかったが、彼等は第3者が間に入るのを好まない。ダリルとポールも、男が割り込めば気まずくなるはずだが、女性が入って来るとどうなるのかは、実はまだ経験がないのでわからなかった。
「私は、JJがレインのことを大好きだと言うのは知っています。レインも彼女が好きなんです。でも、彼は家族と言うものを知りません。JJは両親と一緒に暮らしていたので、当然知っています。JJが目指しているものが家庭を作ることだったら、レインは応えられないかも知れません。私はそれを心配しています。JJを傷つけたら彼自身も傷ついてしまいます。」
「セイヤーズ」
とラナ・ゴーンが優しく言った。
「貴方が山奥の家で子供を育て始めた時、貴方は家族がどんなものか知っていたの?」