ドーム空港から飛行機に搭乗して旅に出るのは2度目だ。1度目は元ドーマー達からサンプル用の細胞をもらうために出かけた。あれから既に5年以上経つか・・・。
ローズタウンに向かう機内には大勢の女性達が赤ん坊と共に乗っていた。出産を終えて家族が待つ自宅へ帰る人々だ。ドーム周辺で待機していた経済的に余裕のある夫を持つ女性達はそれぞれ自動車や自家用機で一足先に帰ってしまっている。
機内では赤ん坊は新生児用の部屋に入れられる。保育器が並んでいて、母親達は座席と同じ番号の保育器の中にいる我が子と空の上では離れていなければならない。偶に赤ん坊がむずかると部屋の係が呼びに来てくれる。ローズタウンへは約2時間のフライトだ。赤ん坊が静かに寝ていてくれることを母親達は願う。自宅に帰れば、もう世話をしてくれるドーマーはいないのだから・・・。
不幸にも出産に至らなかった女性達も搭乗している。彼女達は母親達と離れた座席を指定されるが、仲良くなった人同士で座席を移動することがある。機内スタッフは万が一の事故の場合を考えてあまり良い顔をしないが、母親になれなかった女性達の気持ちを考えて黙認することが多い。
遺伝子管理局の局員や他のドームのスタッフが移動する場合、彼等には専用の区画が充てられている。男ばかりだから、女性に不安を与えないよう配慮されているのだ。ケンウッドは女性区画の様子を移し出すモニター画面を眺めていた。今まで出産の為に遠路を旅する人々の道中を想像したこともなかったが、実際に観察して改善すべき点などを探した。ふと気が付くと、男性が数名女性の中に混ざっていた。自動車や自家用機で移動する手段を持たない遠方の夫達が妻と共に家路についているのだ。
幸せな父親だ。もっとも、これからが子育てで大変だろうが・・・
ドーム人専用区画に乗っているのは、遺伝子管理局北米南部班第3チームと中米班第2チームだった。第3チームはローズタウンからカリブ海沿岸を、中米第2チームはカリブ海を巡る予定だった。ドームの中では騒がしい中米班も機内では静かで、島巡りの準備資料に目を通したり、目を閉じて休んでいた。北米班の方はローズタウンで飛行機から降りるので、専ら休憩だ。ケンウッドの隣に座っているポール・レイン・ドーマーはサングラスをかけたまま寝ていたし、通路をはさんで座っているリュック・ニュカネン・ドーマーは目を開けたままボーッとしていた。弟分のクラウス・フォン・ワグナー・ドーマーは別の仲間と端末でゲームをしていた。
今回の支局巡りは班チーフとは別行動で、最高幹部はチームリーダーのトバイアス・ジョンソン・ドーマーだが、彼は幹部用の仕切られた小部屋に入ってしまい、話しにならない。和気藹々の遠足を想定していた訳ではないが、ケンウッドはこの雰囲気は苦痛に感じられた。ドーマー達はこれが普通なのだろうか? 男ばかりだからこんな重い空気なのだろうか? 女性達が乗っている区画は明るく華やかな様子に見える。乗客の世話をする航空班の客室係ドーマー達も女性の世話をする方が楽しそうだ。
当たり前か・・・
飲み物を運んで来た若いドーマーにケンウッドは女性と話しが出来るだろうか、と囁きかけてみた。
「かまわないと思いますよ。」
と客室係は言った。
「僕等も世間話とかさせてもらっていますから。」
それでケンウッドは寝ているレインを邪魔しない様に立ち上がり、ニュカネンに断って移動した。
女性達はコロニー人の博士を快く迎えてくれ、ドームでの待遇に感謝してくれた。
お陰でケンウッドはローズタウンまで楽しく旅が出来た。
ローズタウンに向かう機内には大勢の女性達が赤ん坊と共に乗っていた。出産を終えて家族が待つ自宅へ帰る人々だ。ドーム周辺で待機していた経済的に余裕のある夫を持つ女性達はそれぞれ自動車や自家用機で一足先に帰ってしまっている。
機内では赤ん坊は新生児用の部屋に入れられる。保育器が並んでいて、母親達は座席と同じ番号の保育器の中にいる我が子と空の上では離れていなければならない。偶に赤ん坊がむずかると部屋の係が呼びに来てくれる。ローズタウンへは約2時間のフライトだ。赤ん坊が静かに寝ていてくれることを母親達は願う。自宅に帰れば、もう世話をしてくれるドーマーはいないのだから・・・。
不幸にも出産に至らなかった女性達も搭乗している。彼女達は母親達と離れた座席を指定されるが、仲良くなった人同士で座席を移動することがある。機内スタッフは万が一の事故の場合を考えてあまり良い顔をしないが、母親になれなかった女性達の気持ちを考えて黙認することが多い。
遺伝子管理局の局員や他のドームのスタッフが移動する場合、彼等には専用の区画が充てられている。男ばかりだから、女性に不安を与えないよう配慮されているのだ。ケンウッドは女性区画の様子を移し出すモニター画面を眺めていた。今まで出産の為に遠路を旅する人々の道中を想像したこともなかったが、実際に観察して改善すべき点などを探した。ふと気が付くと、男性が数名女性の中に混ざっていた。自動車や自家用機で移動する手段を持たない遠方の夫達が妻と共に家路についているのだ。
幸せな父親だ。もっとも、これからが子育てで大変だろうが・・・
ドーム人専用区画に乗っているのは、遺伝子管理局北米南部班第3チームと中米班第2チームだった。第3チームはローズタウンからカリブ海沿岸を、中米第2チームはカリブ海を巡る予定だった。ドームの中では騒がしい中米班も機内では静かで、島巡りの準備資料に目を通したり、目を閉じて休んでいた。北米班の方はローズタウンで飛行機から降りるので、専ら休憩だ。ケンウッドの隣に座っているポール・レイン・ドーマーはサングラスをかけたまま寝ていたし、通路をはさんで座っているリュック・ニュカネン・ドーマーは目を開けたままボーッとしていた。弟分のクラウス・フォン・ワグナー・ドーマーは別の仲間と端末でゲームをしていた。
今回の支局巡りは班チーフとは別行動で、最高幹部はチームリーダーのトバイアス・ジョンソン・ドーマーだが、彼は幹部用の仕切られた小部屋に入ってしまい、話しにならない。和気藹々の遠足を想定していた訳ではないが、ケンウッドはこの雰囲気は苦痛に感じられた。ドーマー達はこれが普通なのだろうか? 男ばかりだからこんな重い空気なのだろうか? 女性達が乗っている区画は明るく華やかな様子に見える。乗客の世話をする航空班の客室係ドーマー達も女性の世話をする方が楽しそうだ。
当たり前か・・・
飲み物を運んで来た若いドーマーにケンウッドは女性と話しが出来るだろうか、と囁きかけてみた。
「かまわないと思いますよ。」
と客室係は言った。
「僕等も世間話とかさせてもらっていますから。」
それでケンウッドは寝ているレインを邪魔しない様に立ち上がり、ニュカネンに断って移動した。
女性達はコロニー人の博士を快く迎えてくれ、ドームでの待遇に感謝してくれた。
お陰でケンウッドはローズタウンまで楽しく旅が出来た。