2017年10月28日土曜日

退出者 2 - 6

「ハイネが住人がいる場所を東海岸から潰していき、航空班がその該当区域の無人とされている場所を空から見て行くのさ。不審な建物などがあれば、パイロットが現地警察に通報している。勿論、セイヤーズのことは伏せてあるがね。」
「見つけても、あの男は捕まえられません。」

とレインが諦めた様に呟いた。

「俺だって捕まえられないのに・・・」

 するとニュカネンが余計なことを言った。

「君が何か余計なことをセイヤーズに言ったんだろう? あの男が絶望するようなことを・・・」
「何を!」

 レインが振り返って怒鳴った。

「おまえに何がわかるって言うんだ?!」

 自動運転なので運転手が余所見をしても大丈夫だが、助手席のケンウッドは心穏やかではない。

「レイン、運転に専念してくれないか?」
「すみません・・・」

 副長官のちょっと間延びした物言いがレインの気分を鎮める効果を発揮した。レインは前を向き直り、数分間沈黙した後、ケンウッドに提案した。

「副長官、局長に俺がお手伝いしたがっていると伝えて頂けませんか? 内勤の日に照合を手伝えると思います。」

 すると、堅物ニュカネンが異を唱えた。

「遺伝子情報リストを無差別に照会出来るのは幹部だけだぞ、レイン。」

 幹部候補生から降格されたレインがグッと唇を噛み締めた。ケンウッドは助け船を出して遣った。

「ハイネが許可すれば、君にも見られるさ。局長に話しておくよ。ニュカネン・・・」
「はい?」
「あまり固く考えるな。ハイネは年寄りだが君より柔軟だぞ。」

 車が大きくバウンドして、3人は口を閉じた。車は路面の凹凸を読み取ってスムーズに走れるはずだが、深い轍があったのだ。レインがケンウッドに右前方の岩の固まりを指さした。

「あれが遺跡です。昔のショッピングモールらしいです。今でも時々壁の崩落があって土煙が立ち上っています。」

 それは確かに人間が建設した大きな建物だった。ケンウッドは興味をそそられたが、見学する時間はなかった。恐らくこれからも時間はないだろう。
 やがて前方に緑の固まりが見えてきた。レインが教えてくれた。

「あれがセント・アイブス・メディカル・カレッジ・タウンを砂漠から守る防風林です。」