ジムに入り、着替えてトレーニングルームに行くと、そこで事件が起きていた。手錠を掛けられた若いドーマーが1人、保安課員2人に挟まれて立っているコロニー人の研究者が1人、そしてリプリー長官とドーム維持班総代ロビン・コスビー・ドーマー、遺伝子管理局内務捜査班チーフ副官が闘技場の入口に立っていた。保安課員に挟まれているコロニー人は顔に殴打された痕跡があり、唇が切れて出血していた。挟まれているのは保護されているためだろうが、セルシウスとレインには逃亡を防ぐために抑えられている様にも見えた。
「何でしょう?」
レインが不安そうな表情で呟いた。手錠を掛けられるなど滅多にあることではない。ドーマーがコロニー人を殴打したのだと言うことは察せられたが、原因は何だろう?
セルシウス・ドーマーは維持班総代と長官が話し合っているのを見て、遺伝子管理局は介入すべきでないと判断した。内務捜査班はドームの警察の様な組織だから、そこに居るのだ。局長第1秘書としてセルシウス・ドーマーは事件の経緯だけは抑えておこうと思ったので、近くで野次馬をしているドーマーに声を掛けた。
「何があったのだ?」
声を掛けられた若いドーマーは、彼が遺伝子管理局長の第1秘書とは気づかなかったが、自身が目撃したことを教えてくれた。
「手錠を掛けられているヤツと保安課員に挟まれて立っているヤツが、揉み合いをしていたんですよ。原因はわかりません。コロニー人が、ドーマーを突き飛ばしたんです。それで激怒したドーマーが相手を殴ってしまって・・・誰かが保安課員に連絡したので、この騒ぎです。」
「地球人とコロニー人故の対立ではないのかね?」
遺伝子管理局が気にするのはその点だ。目撃者は首を振った。
「そんな深刻な問題とは思えませんね。」
その時、話し合っていた長官、内務捜査班、維持班総代が散会した。長官と総代がドーマーに話しかけ、長官の指図で保安課員が手錠をドーマーの手首から外した。そしてドーマーとコロニー人を連れてジムから出て行った。
レインがその後ろ姿を見ていると、いつの間にか内務捜査班副官がそばに来ていた。「やあ」とセルシウスが挨拶すると、相手も「やあ」と返答した。
「君の姿を見て、もう局長のお耳に入ったのかと思ったが、服装から見て、そうじゃないね?」
セルシウスが苦笑した。秘書の存在イコール局長、と言う図式なのか?
「偶然来合わせただけさ。あれはただの喧嘩だったのか?」
「それが当事者2人共にだんまりで語らないのさ。だから長官が2人を観察棟へ連れて行った。そこで語る気になるまで頭を冷やさせる。」
「重大案件にはならないだろうな?」
「それはないと思う。」
内務捜査官はちょっと考えてから言った。
「恐らく、彼等は互いに誰かを庇っているんじゃないかな。」
「何でしょう?」
レインが不安そうな表情で呟いた。手錠を掛けられるなど滅多にあることではない。ドーマーがコロニー人を殴打したのだと言うことは察せられたが、原因は何だろう?
セルシウス・ドーマーは維持班総代と長官が話し合っているのを見て、遺伝子管理局は介入すべきでないと判断した。内務捜査班はドームの警察の様な組織だから、そこに居るのだ。局長第1秘書としてセルシウス・ドーマーは事件の経緯だけは抑えておこうと思ったので、近くで野次馬をしているドーマーに声を掛けた。
「何があったのだ?」
声を掛けられた若いドーマーは、彼が遺伝子管理局長の第1秘書とは気づかなかったが、自身が目撃したことを教えてくれた。
「手錠を掛けられているヤツと保安課員に挟まれて立っているヤツが、揉み合いをしていたんですよ。原因はわかりません。コロニー人が、ドーマーを突き飛ばしたんです。それで激怒したドーマーが相手を殴ってしまって・・・誰かが保安課員に連絡したので、この騒ぎです。」
「地球人とコロニー人故の対立ではないのかね?」
遺伝子管理局が気にするのはその点だ。目撃者は首を振った。
「そんな深刻な問題とは思えませんね。」
その時、話し合っていた長官、内務捜査班、維持班総代が散会した。長官と総代がドーマーに話しかけ、長官の指図で保安課員が手錠をドーマーの手首から外した。そしてドーマーとコロニー人を連れてジムから出て行った。
レインがその後ろ姿を見ていると、いつの間にか内務捜査班副官がそばに来ていた。「やあ」とセルシウスが挨拶すると、相手も「やあ」と返答した。
「君の姿を見て、もう局長のお耳に入ったのかと思ったが、服装から見て、そうじゃないね?」
セルシウスが苦笑した。秘書の存在イコール局長、と言う図式なのか?
「偶然来合わせただけさ。あれはただの喧嘩だったのか?」
「それが当事者2人共にだんまりで語らないのさ。だから長官が2人を観察棟へ連れて行った。そこで語る気になるまで頭を冷やさせる。」
「重大案件にはならないだろうな?」
「それはないと思う。」
内務捜査官はちょっと考えてから言った。
「恐らく、彼等は互いに誰かを庇っているんじゃないかな。」