ケンウッドは騒動のその後の展開を語った。
「1時間ほど観察棟で事情聴取していると、女性が1人やって来て、長官に面会を求めた。彼女もクローン製造部の人間だった。」
するとハイネが推理して言った。
「彼女が騒動の原因なのですね?」
「うん。」
人生経験豊かなドーマーに要点を先に言われてしまい、ケンウッドは内心がっかりしたが、その素ぶりは見せなかった。
「コロニー人の男とコロニー人の彼女は恋愛していたんだ。君は承知しているはずだが、ドームで勤務するコロニー人は職場恋愛を禁止されている。地球に来る前に結婚しているカップルは問題ないが、地球上での恋愛はご法度だ。男ばかりのドーマー達が自制しているのに示しがつかなくなるからね。」
「男性同士であれば誰も気にしませんがね。」
とハイネ。女性の絶対数が少ない地球で、しかも住人の9割が男性のドームの中で、女性と恋愛できる男は奇跡の存在だ。
「彼女は恋愛していることを他人に知られるのを恐れた。地球でのキャリアを求めて来ているので、クビにされるのを恐れたんだな。それで彼女は男に任期が終わる迄我慢しようと提案した。しかし男の方は他人に知られても構わないと思ったんだ。ドームに居れば、彼女をいずれ他の男に奪われてしまうのではないかと心配したのだよ。男はいくらでもいるからね。いっそクビになって宇宙に帰った方が自由に彼女と付き合えると思った訳だ。彼は長官に告白しようと言い、彼女は反対した。
彼女と彼が言い合っているところに、件のドーマーが来た。ドーマーは2人の関係を知っていた。実を言うと彼女とドーマーは同じ部署で働いており、親しい友人同士だったので、恋愛相談も受けていたんだ。言い争っている男女を見て、ドーマーは止めに入った。」
「そして男同士が喧嘩する羽目になったのですね?」
「うん。ドーマーは彼女の意見に賛成だったんだ。彼女のキャリアに傷をつけたくないと思ったのだが、コロニー人の男はドーマーが彼の恋人に横恋慕していると勘違いした。」
「そう言う話でしたら、確かに私には関係ありませんね。ドーマー達にも無関係です。1人の女と2人の男の問題でしょう。」
「君達にはね・・・」
ケンウッドは冷めてしまった鶏肉のトマト煮込みを口に運んだ。
「明日の執政官会議で、当事者2人のコロニー人をどうするか話し合う予定だ。男の方は喧嘩の仲裁に入ったドーマーを突き飛ばしたのだから、地球人保護法違反に問われる恐れがある。ドーマーはその点では彼を庇っているが・・・」
「ドーマーがコロニー人の男性を殴ったことに対する処罰は、維持班が下すはずですが?」
「うん、コスビー・ドーマーが配下の班長会議で処罰を決めるそうだ。」
するとハイネが不満気な顔をした。チーズが冷えて硬くなったせいかも知れない。
「班長会議を開くほどの罪でもないでしょう。コスビーとクローン製造部のドーマーの代表が2人で話し合えば済みますよ。」
「私もそう思ったので、長官室でこの騒動を聞かされた時に異見したのだが・・・あっさり無視された。」
ハイネはケンウッドの顔を見て笑った。
「コスビーは初めて班長会議を開くのです。今回は程度の軽い事件なので練習にもってこいじゃないですか。」
「
「1時間ほど観察棟で事情聴取していると、女性が1人やって来て、長官に面会を求めた。彼女もクローン製造部の人間だった。」
するとハイネが推理して言った。
「彼女が騒動の原因なのですね?」
「うん。」
人生経験豊かなドーマーに要点を先に言われてしまい、ケンウッドは内心がっかりしたが、その素ぶりは見せなかった。
「コロニー人の男とコロニー人の彼女は恋愛していたんだ。君は承知しているはずだが、ドームで勤務するコロニー人は職場恋愛を禁止されている。地球に来る前に結婚しているカップルは問題ないが、地球上での恋愛はご法度だ。男ばかりのドーマー達が自制しているのに示しがつかなくなるからね。」
「男性同士であれば誰も気にしませんがね。」
とハイネ。女性の絶対数が少ない地球で、しかも住人の9割が男性のドームの中で、女性と恋愛できる男は奇跡の存在だ。
「彼女は恋愛していることを他人に知られるのを恐れた。地球でのキャリアを求めて来ているので、クビにされるのを恐れたんだな。それで彼女は男に任期が終わる迄我慢しようと提案した。しかし男の方は他人に知られても構わないと思ったんだ。ドームに居れば、彼女をいずれ他の男に奪われてしまうのではないかと心配したのだよ。男はいくらでもいるからね。いっそクビになって宇宙に帰った方が自由に彼女と付き合えると思った訳だ。彼は長官に告白しようと言い、彼女は反対した。
彼女と彼が言い合っているところに、件のドーマーが来た。ドーマーは2人の関係を知っていた。実を言うと彼女とドーマーは同じ部署で働いており、親しい友人同士だったので、恋愛相談も受けていたんだ。言い争っている男女を見て、ドーマーは止めに入った。」
「そして男同士が喧嘩する羽目になったのですね?」
「うん。ドーマーは彼女の意見に賛成だったんだ。彼女のキャリアに傷をつけたくないと思ったのだが、コロニー人の男はドーマーが彼の恋人に横恋慕していると勘違いした。」
「そう言う話でしたら、確かに私には関係ありませんね。ドーマー達にも無関係です。1人の女と2人の男の問題でしょう。」
「君達にはね・・・」
ケンウッドは冷めてしまった鶏肉のトマト煮込みを口に運んだ。
「明日の執政官会議で、当事者2人のコロニー人をどうするか話し合う予定だ。男の方は喧嘩の仲裁に入ったドーマーを突き飛ばしたのだから、地球人保護法違反に問われる恐れがある。ドーマーはその点では彼を庇っているが・・・」
「ドーマーがコロニー人の男性を殴ったことに対する処罰は、維持班が下すはずですが?」
「うん、コスビー・ドーマーが配下の班長会議で処罰を決めるそうだ。」
するとハイネが不満気な顔をした。チーズが冷えて硬くなったせいかも知れない。
「班長会議を開くほどの罪でもないでしょう。コスビーとクローン製造部のドーマーの代表が2人で話し合えば済みますよ。」
「私もそう思ったので、長官室でこの騒動を聞かされた時に異見したのだが・・・あっさり無視された。」
ハイネはケンウッドの顔を見て笑った。
「コスビーは初めて班長会議を開くのです。今回は程度の軽い事件なので練習にもってこいじゃないですか。」
「