翌日もまだケンウッドは宇宙から戻って来なかった。副長官のラナ・ゴーンが説明するには、彼は委員会の科学者達から引っ張りだこでJJ・ベーリングの能力のことや人工羊水の分析や、その他諸々の質問攻めにあっているのだと言う。
ケンウッドの留守を預かる3名のドーム最高責任者、ゴーン副長官、ゴメス保安課長、それにハイネ遺伝子管理局長は打ち合わせ会を副長官室で行い、平素と変わらぬ生活を続けていくことで合意した。ゴメスは遺伝子管理局がこの数日外の連邦捜査局と接触したり情報を収集したり支局長を召喚したりと活発に動いていることが気になったが、ハイネがそのことに一切言及しないので、黙っていた。このドーマーの機嫌を損なうとドーム生活が辛くなると言うコロニー人の間での注意を守ったのだ。地球人がすることに口出しは無用だ。
遅い昼食の後でハイネが昼寝をしようと食堂から出た時、ダリル・セイヤーズ・ドーマーから電話がかかってきた。出ると、いきなり彼は局長に用件を告げた。
「FOKに殺害されたと思われるロバート・セレックの父親、ナサニエル・セレックに面会したいのですが?」
「何の為に?」
「どこで息子がクローンだとばれてしまったのか、心当たりがないか、聞きたいのです。遺伝子管理局は密告を受けたが、密告者が何故ロバートがクローンであると知ったのか調べていないでしょう? セレック親子は旅をして暮らしていました。周囲の人間にすぐには子供の出生の秘密を知られるとは思えません。」
「密告者とFOKの接点を探ろうと言うのか?」
「警察の仕事だなんて仰らないで下さい。警察は密告者の身元を調べもしていないのです。」
セイヤーズはクローンの息子の父親だ。外の世界に残してきた息子が心配でならない。ハイネは少し黙ってから、質問した。
「日帰りで行ける距離か?」
「早朝に出かければ充分です。心配でしたら、チーフ・ドーソンの班に同行します。」
「では、明日行ってこい。刑務所には私から連絡を入れておいてやろう。道草は食うなよ。」
ケンウッドや執政官が聞けば反対するだろう。しかしハイネはセイヤーズをドームに閉じ込めるのは無理だと思っていた。この男はその気になればマザーコンピュータも乗っ取れる。だが節度があるし、私欲もない。その心にあるのは彼が愛する人々の安全だけだ。
ハイネはダリル・セイヤーズと言う男を信じることに決めた。
ケンウッドの留守を預かる3名のドーム最高責任者、ゴーン副長官、ゴメス保安課長、それにハイネ遺伝子管理局長は打ち合わせ会を副長官室で行い、平素と変わらぬ生活を続けていくことで合意した。ゴメスは遺伝子管理局がこの数日外の連邦捜査局と接触したり情報を収集したり支局長を召喚したりと活発に動いていることが気になったが、ハイネがそのことに一切言及しないので、黙っていた。このドーマーの機嫌を損なうとドーム生活が辛くなると言うコロニー人の間での注意を守ったのだ。地球人がすることに口出しは無用だ。
遅い昼食の後でハイネが昼寝をしようと食堂から出た時、ダリル・セイヤーズ・ドーマーから電話がかかってきた。出ると、いきなり彼は局長に用件を告げた。
「FOKに殺害されたと思われるロバート・セレックの父親、ナサニエル・セレックに面会したいのですが?」
「何の為に?」
「どこで息子がクローンだとばれてしまったのか、心当たりがないか、聞きたいのです。遺伝子管理局は密告を受けたが、密告者が何故ロバートがクローンであると知ったのか調べていないでしょう? セレック親子は旅をして暮らしていました。周囲の人間にすぐには子供の出生の秘密を知られるとは思えません。」
「密告者とFOKの接点を探ろうと言うのか?」
「警察の仕事だなんて仰らないで下さい。警察は密告者の身元を調べもしていないのです。」
セイヤーズはクローンの息子の父親だ。外の世界に残してきた息子が心配でならない。ハイネは少し黙ってから、質問した。
「日帰りで行ける距離か?」
「早朝に出かければ充分です。心配でしたら、チーフ・ドーソンの班に同行します。」
「では、明日行ってこい。刑務所には私から連絡を入れておいてやろう。道草は食うなよ。」
ケンウッドや執政官が聞けば反対するだろう。しかしハイネはセイヤーズをドームに閉じ込めるのは無理だと思っていた。この男はその気になればマザーコンピュータも乗っ取れる。だが節度があるし、私欲もない。その心にあるのは彼が愛する人々の安全だけだ。
ハイネはダリル・セイヤーズと言う男を信じることに決めた。