その夜、ハイネは妻のアイダ・サヤカの部屋に行った。多忙な医療区長のアイダだが、必ず休日は取ることにしている。彼女は部下にきちんと休むことを実践させるために、彼女自身が行動で示してやるのだ。
ハイネは彼女の手作りの夜食を楽しみ、2人で一緒にテレビで映画を見た。彼女の好きなラブコメだったが、彼も楽しめた。映画が終わって、彼女が眠前の軽いカクテルを作りながら言った。
「私たち以外のドーマーとコロニー人のカップルがいるって言う噂を聞いたことがありますか?」
「カップル? 複数ですか?」
「ええ・・・」
アイダはそんなに深刻な表情ではなく、街の噂話を耳にしたと言う顔で言った。
「男性同士で仲良くしているのは、時々目にします。でも今回私の耳に入ったのは、男女のカップル。」
ハイネは彼女が早くグラスを持ってソファに戻ってこないかな、と思いつつ、話題に興味を抱いた。
「男はドーマーでしょうな?」
「確率的に、そうなるわね。」
「女性は執政官ですか?」
「執政官もいるし、研究員もいるし・・・」
アイダがようやくグラスを持ってソファに戻った。ハイネに一つを手渡し、彼等は軽くグラスを合わせて乾杯した。
「遊びで恋愛するなと言うつもりはありませんが、分別ある行動をして欲しいわ。地球人保護法は面倒だし、後で感情的な争いになっても困ります。」
コロニー人は地球に永住する訳でなく、いつか宇宙に帰ってしまう。別れの時に辛い思いをするのは、勿論当事者達だが、周囲も心配するし、穏やかに見まもるのは難しいだろう。アイダの様に特例で永住を認められたコロニー人は極稀なのだ。
ハイネがあまり反応しないので、アイダは一つの確信を持った。
「貴方はご存知ないのね?」
「何をです?」
ハイネは他人の恋愛に無関心だ。誰と誰がカップルで、と言うことは気がつくが、それだけだ。どこまで深い仲なのか、とか、上手く交際が進んでいるのか、などは当事者の問題だから割り切って干渉しないし、興味も持たない。
アイダは2人きりの部屋であるにも関わらず、声を潜めた。
「副長官とドーマーの仲が良いと言う噂・・・」
ハイネが初めて反応した。妻の目を見つめた。
「副長官? ラナ・ゴーンがドーマーと交際しているのですか?」
「交際しているのかどうか、詳しいことはわかりませんけど、、噂です。夜になると彼女とドーマーが庭園でデートをしていると言う・・・」
「ゴーンは夫がいるのでは?」
「それが・・・」
アイダは友人の個人的情報を口外することに後ろめたさを感じつつも、夫に告げた。
「彼女は最近離婚したのです。彼女が地球に入れ込み過ぎて、夫と考えが合わなくなり、別れたそうです。」
「ほう・・・」
ハイネは興味を失った。独身になった副長官が新しい男友達を作っても誰も咎めない。男性がドーマーであると言うだけだ。ゴーンなら分別があるだろう。
「ちなみに、その相手のドーマーが誰なのか、わかっているのですか?」
すると、アイダが珍しく躊躇った。
「聞いて驚かないで下さい。」
「驚くかどうか、わかりませんよ。」
「彼を罰しないと約束して下さいます?」
「罰する?」
ハイネは初めて胸騒ぎを覚えた。
「遺伝子管理局の職員ですか?」
「ええ・・・」
「誰です?」
まさかゴーンの養子のクロエルではあるまいな、と彼はあってはならぬことを想像した。アイダが覚悟を決めて告白した。
「ダリル坊やなのよ。」
ハイネは肩の力を抜いた。
「セイヤーズ?」
「ええ。」
「あの、能天気な男ですか?」
「彼は紳士よ。」
「わかっています。」
ハイネはちょっとぼーっとしたところがあるセイヤーズとキビキビしたゴーンを思い浮かべた。そして呟いた。
「面白いカップルですね・・・」
ハイネは彼女の手作りの夜食を楽しみ、2人で一緒にテレビで映画を見た。彼女の好きなラブコメだったが、彼も楽しめた。映画が終わって、彼女が眠前の軽いカクテルを作りながら言った。
「私たち以外のドーマーとコロニー人のカップルがいるって言う噂を聞いたことがありますか?」
「カップル? 複数ですか?」
「ええ・・・」
アイダはそんなに深刻な表情ではなく、街の噂話を耳にしたと言う顔で言った。
「男性同士で仲良くしているのは、時々目にします。でも今回私の耳に入ったのは、男女のカップル。」
ハイネは彼女が早くグラスを持ってソファに戻ってこないかな、と思いつつ、話題に興味を抱いた。
「男はドーマーでしょうな?」
「確率的に、そうなるわね。」
「女性は執政官ですか?」
「執政官もいるし、研究員もいるし・・・」
アイダがようやくグラスを持ってソファに戻った。ハイネに一つを手渡し、彼等は軽くグラスを合わせて乾杯した。
「遊びで恋愛するなと言うつもりはありませんが、分別ある行動をして欲しいわ。地球人保護法は面倒だし、後で感情的な争いになっても困ります。」
コロニー人は地球に永住する訳でなく、いつか宇宙に帰ってしまう。別れの時に辛い思いをするのは、勿論当事者達だが、周囲も心配するし、穏やかに見まもるのは難しいだろう。アイダの様に特例で永住を認められたコロニー人は極稀なのだ。
ハイネがあまり反応しないので、アイダは一つの確信を持った。
「貴方はご存知ないのね?」
「何をです?」
ハイネは他人の恋愛に無関心だ。誰と誰がカップルで、と言うことは気がつくが、それだけだ。どこまで深い仲なのか、とか、上手く交際が進んでいるのか、などは当事者の問題だから割り切って干渉しないし、興味も持たない。
アイダは2人きりの部屋であるにも関わらず、声を潜めた。
「副長官とドーマーの仲が良いと言う噂・・・」
ハイネが初めて反応した。妻の目を見つめた。
「副長官? ラナ・ゴーンがドーマーと交際しているのですか?」
「交際しているのかどうか、詳しいことはわかりませんけど、、噂です。夜になると彼女とドーマーが庭園でデートをしていると言う・・・」
「ゴーンは夫がいるのでは?」
「それが・・・」
アイダは友人の個人的情報を口外することに後ろめたさを感じつつも、夫に告げた。
「彼女は最近離婚したのです。彼女が地球に入れ込み過ぎて、夫と考えが合わなくなり、別れたそうです。」
「ほう・・・」
ハイネは興味を失った。独身になった副長官が新しい男友達を作っても誰も咎めない。男性がドーマーであると言うだけだ。ゴーンなら分別があるだろう。
「ちなみに、その相手のドーマーが誰なのか、わかっているのですか?」
すると、アイダが珍しく躊躇った。
「聞いて驚かないで下さい。」
「驚くかどうか、わかりませんよ。」
「彼を罰しないと約束して下さいます?」
「罰する?」
ハイネは初めて胸騒ぎを覚えた。
「遺伝子管理局の職員ですか?」
「ええ・・・」
「誰です?」
まさかゴーンの養子のクロエルではあるまいな、と彼はあってはならぬことを想像した。アイダが覚悟を決めて告白した。
「ダリル坊やなのよ。」
ハイネは肩の力を抜いた。
「セイヤーズ?」
「ええ。」
「あの、能天気な男ですか?」
「彼は紳士よ。」
「わかっています。」
ハイネはちょっとぼーっとしたところがあるセイヤーズとキビキビしたゴーンを思い浮かべた。そして呟いた。
「面白いカップルですね・・・」