2019年2月23日土曜日

囮捜査 2 2 - 3

  カナダ連邦捜査局側も会議室からの中継だった。捜査責任者より上位にいる局長がハイネに挨拶し、ハイネもカメラの遠くから挨拶を返した。あちらの会議室にはアメリカ連邦捜査局の捜査主任と捜査官数名も参加しており、会議は北米北部班のチーフ・ドーソンからの訴えで、FOK対策を練ることが目的だった。クローンの少年達を何らかの人体実験に使って殺害する卑劣な連中が存在する。連中はクローンの解放を謳っているが、実際に彼等に収容施設から誘拐された少年達が生きて解放された話はどこにもない。FOKは大義名分を掲げたテロリストを装っているが、その実体は恐らく研究目的で人間を調達する組織なのだろう。クローンを狙っているのは、クローンならば大きな社会問題にならないと勘違いしているからだ。だがクローンも人権がある人間だ。クローン殺害は殺人事件に他ならない。
 殺人は警察の担当だが、狙われるのが遺伝子管理局が保護したクローンであるなら、これは遺伝子管理局の担当でもある。だから、話し合いの結果、遺伝子管理局は警察、カナダとアメリカの連邦捜査局に協力することになった。
 会議は4名のチーフと外の捜査機関との話し合いがメインで、ハイネ局長は黙って聞いていた。クロエルがそっと表情を伺った時、局長は居眠りをしていた。彼はそっと局長と呼びかけてみた。ハイネが薄眼を開けて彼を見た。クロエルはそっと目で先方を映しているスクリーンを指して、注意を促した。一瞬ハイネはバツの悪そうな顔をしたが、すぐ真面目な表情に戻った。
 外の捜査機関は囮捜査を提案した。FOKの幹部が恐らく医療研究機関の人間だと言う調べはついているのだった。そしてメンバーも数人目星がついているのだが、確証が掴めないでいる。だから囮を使って主要メンバーを炙り出そうと言うのだ。

「しかし、クローンの子供達を囮に使う訳に行きませんよ。」

 ホアン・ドルスコが相手の案に意見を述べていた。先方の代表が言った。

「子供を使うつもりはありません。我が方では、連中がある人物に興味を抱いているという情報を得ています。遺伝子管理局は、メーカーのラムゼイをご存知ですね?」
「ええ、知っています。彼は既に死亡していますが。」
「彼が殺害されたと我々は考えていますが、管理局は事故死扱いされていますね?」
「殺害の確証がないからです。新たな証拠が出て裁判所が認めれば死亡原因の訂正を行います。」

 クロエルが一瞬何か言いたそうにドルスコを振り返ったが、結局口を挟まなかった。
 先方のアメリカ側捜査官が言った。

「アメリカの捜査局はセント・アイブス・メディカル・カレッジのミナ・アン・ダウン教授と言う人物が一連の事件の要にいるのではないかと考えています。彼女をご存知ですね?」

 これにはポール・レイン・ドーマーが頷いた。