2019年2月15日金曜日

囮捜査 2 2 - 1

 遺伝子管理局北米北部班チーフ、クリスチャン・ドーソン・ドーマーがハイネに面会を求めて来たのは、ハイネがアパートの自室で眠る準備をしている時だった。ドーソンは翌日局長の日課が終わってからで良いです、と言うので、ハイネは素早く端末で現時点での仕事量を確認して、昼食後は時間が空くことを確かめた。

「午後1時半から、局長室で良いか?」
「はい。その時間で結構です。それで・・・」

 ドーソンは電話で少し緊張した顔を見せた。

「外部とテレビ会談したいのですが、よろしいでしょうか?」
「外部?」
「カナダの連邦捜査局です。FOKの事件に関する捜査協力を遺伝子管理局に要請してきました。」

 ああ、とハイネは頷いた。北部ではクローン収容所が襲撃されて子供が誘拐される事件が連続して3件起きていた。遺伝子管理局は警備を強化させるしか対抗方法がないのだが。外の警察機構が何を求めているのか、聞く必要はある。

「わかった、外部通信回路を開いておく。」
「有り難うございます。」

 ドーソンが通話を切った後、ハイネはちょっと考えてから、残る3名のチーフ達に招集をかけた。集合時間は翌日の午後1時半、場所は局長執務室、つまり、ドーソンが要請したカナダ連邦捜査局とのテレビ会談に、チーフ全員を立ち合わせるつもりだった。
 ハイネは外の世界を知らない。だから外の政府組織が協力を求めてくれば、彼は外の世界を知っている人間をオブザーバーに呼ぶ。かつては秘書達にそれを要請していた。しかし今回は現在進行形の凶悪犯罪の対策だ。外の世界で何が起きているのか知っている現役のチーフ達が適任と思えた。遠い南米にいる南米班チーフには気の毒だが大至急帰還を求めた。中米班は足止めをくらい、北米南部班は抗原注射の効力切れ休暇中だ。そして最後に北米北部班のチーフにメールを送った。

ーー明日のテレビ会議にはチーフ全員を参加させる。