食事を終える頃になって、厄介な連中が現れた。執政官のポール・レイン・ドーマーのファンクラブだ。彼等はダリルを見つけると真っ直ぐやって来たので、食堂で談笑していた多くのドーマー達が声を顰めた。一気に緊張が建物の中に走った。
ダリルは彼等と関わり合いたくなかったが、自分が標的になっていると承知していたので、腹をくくって座っていた。ジョージ・ルーカス・ドーマーがファンクラブの先頭に立っている男を見て、呟いた。
「懲りないヤツだな、ギル博士も・・・また鼻を折られたいのかな?」
アナトリー・ギルは大勢の人間に囲まれているのでダリルが暴れるはずがないと思い込んでいるらしく、大胆にもテーブルの空いている席にどかっと腰を下ろした。
「大胆なことをしてくれたもんだな、セイヤーズ。」
彼の背後には執政官達が5名ばかり立っており、それを囲んでドーマー達が立ち上がった。
ダリルが座って、とドーマー達に手振りで合図を送ると同時にルーカスがギルに言った。
「セイヤーズ・ドーマーは『した』んじゃない、『された』んです。」
「どっちがなんて問題じゃない。」
「そうかな? パーカーの行動の責任は中央研究所にあるんじゃないですか?」
「彼は執政官ではない。」
「ドーマーでもありません。扱いは執政官と同じだ。」
「あの男はオリジンだ。だから丁重に扱われている。そうでなければ、誰が卑しいメーカーなんかと・・・」
ドーマー達が一斉に口を閉じてギルを見た。いきなり食堂の中が完全な沈黙に支配された。ギルがギョッとして周囲を見回した。ドーマー達が見つめているのがセイヤーズではなく自身だと気が付いた時、彼の腋の下に冷たい汗が流れ出た。
「メーカーは卑しいですか?」
とダリルが尋ねた。
「彼等は確かに金銭でクローンを創って販売しています。しかしクローンを発注する人間は切実に子供が欲しいのです。メーカーは彼等を喜ばせる為に命を創っているのです。メーカー達は生命を作り出しますが、殺しはしません。クローンを大事に育てて、注文者に引き渡す時には丁寧に育て方を指導します。彼等は生命の尊さを知っています。私はメーカーを卑しいと思ったことはありません。」
「そうですよ、ギル博士。」
とルーカスの秘書がダリルに賛同した。
「遺伝子管理局がメーカーを摘発するのは、彼等が遺伝子管理法に違反しているからです。クローンを製造して良いのはドームだけと言う法律にね。彼等の多くは未熟な技術でクローニングするから、生まれてくる子供達はひ弱で大人になる迄に死亡してしまうと言う事実をご存じですよね? しかしメーカー達は故意にひ弱な子供を売ってあくどく稼いでいる訳ではありません。どんなに研究を重ねても彼等の技術はそこが限界なのです。私は現役時代、多くのメーカーを逮捕しましたが、連中はもっと勉強したがっていました。例え違法でも丈夫な子供を創ってやりたかったと悔やんでいました。
彼等は決して卑しい人間ではありません。」
ルーカスも言った。
「ギル博士、聞けばパーカーは遺伝子組み換えに関しては超一流の腕前だそうじゃないですか。ラムジー博士仕込みの技術で正常な健康状態のクローンを創ることも出来るってね。他のドームから彼の講義を受けに来る執政官もいると聞きましたよ。ギル博士、貴方はどうなんです? 彼から得られるものは何もない程完熟した技術をお持ちですか?」
ドーマー達にやりこめられてアナトリー・ギルは顔を真っ赤にした。彼の仲間の執政官は分が悪いと悟って2人が席を立った。
「何の話でしたっけ。」
とダリルが気まずい雰囲気を崩すつもりで間の抜けた調子で呟いた。
「パーカーの行動の責任は誰が取るかってことです。」
と隣のテーブルに居たドーマーが囁いた。ああ、それなら、とダリルは言った。
「パーカー自身の責任じゃないかな。オフタイムだったし、彼は立派な大人だ。 だけど、たかが1回のキスだけでこんな大騒ぎは無駄じゃないですか。」
ダリルは彼等と関わり合いたくなかったが、自分が標的になっていると承知していたので、腹をくくって座っていた。ジョージ・ルーカス・ドーマーがファンクラブの先頭に立っている男を見て、呟いた。
「懲りないヤツだな、ギル博士も・・・また鼻を折られたいのかな?」
アナトリー・ギルは大勢の人間に囲まれているのでダリルが暴れるはずがないと思い込んでいるらしく、大胆にもテーブルの空いている席にどかっと腰を下ろした。
「大胆なことをしてくれたもんだな、セイヤーズ。」
彼の背後には執政官達が5名ばかり立っており、それを囲んでドーマー達が立ち上がった。
ダリルが座って、とドーマー達に手振りで合図を送ると同時にルーカスがギルに言った。
「セイヤーズ・ドーマーは『した』んじゃない、『された』んです。」
「どっちがなんて問題じゃない。」
「そうかな? パーカーの行動の責任は中央研究所にあるんじゃないですか?」
「彼は執政官ではない。」
「ドーマーでもありません。扱いは執政官と同じだ。」
「あの男はオリジンだ。だから丁重に扱われている。そうでなければ、誰が卑しいメーカーなんかと・・・」
ドーマー達が一斉に口を閉じてギルを見た。いきなり食堂の中が完全な沈黙に支配された。ギルがギョッとして周囲を見回した。ドーマー達が見つめているのがセイヤーズではなく自身だと気が付いた時、彼の腋の下に冷たい汗が流れ出た。
「メーカーは卑しいですか?」
とダリルが尋ねた。
「彼等は確かに金銭でクローンを創って販売しています。しかしクローンを発注する人間は切実に子供が欲しいのです。メーカーは彼等を喜ばせる為に命を創っているのです。メーカー達は生命を作り出しますが、殺しはしません。クローンを大事に育てて、注文者に引き渡す時には丁寧に育て方を指導します。彼等は生命の尊さを知っています。私はメーカーを卑しいと思ったことはありません。」
「そうですよ、ギル博士。」
とルーカスの秘書がダリルに賛同した。
「遺伝子管理局がメーカーを摘発するのは、彼等が遺伝子管理法に違反しているからです。クローンを製造して良いのはドームだけと言う法律にね。彼等の多くは未熟な技術でクローニングするから、生まれてくる子供達はひ弱で大人になる迄に死亡してしまうと言う事実をご存じですよね? しかしメーカー達は故意にひ弱な子供を売ってあくどく稼いでいる訳ではありません。どんなに研究を重ねても彼等の技術はそこが限界なのです。私は現役時代、多くのメーカーを逮捕しましたが、連中はもっと勉強したがっていました。例え違法でも丈夫な子供を創ってやりたかったと悔やんでいました。
彼等は決して卑しい人間ではありません。」
ルーカスも言った。
「ギル博士、聞けばパーカーは遺伝子組み換えに関しては超一流の腕前だそうじゃないですか。ラムジー博士仕込みの技術で正常な健康状態のクローンを創ることも出来るってね。他のドームから彼の講義を受けに来る執政官もいると聞きましたよ。ギル博士、貴方はどうなんです? 彼から得られるものは何もない程完熟した技術をお持ちですか?」
ドーマー達にやりこめられてアナトリー・ギルは顔を真っ赤にした。彼の仲間の執政官は分が悪いと悟って2人が席を立った。
「何の話でしたっけ。」
とダリルが気まずい雰囲気を崩すつもりで間の抜けた調子で呟いた。
「パーカーの行動の責任は誰が取るかってことです。」
と隣のテーブルに居たドーマーが囁いた。ああ、それなら、とダリルは言った。
「パーカー自身の責任じゃないかな。オフタイムだったし、彼は立派な大人だ。 だけど、たかが1回のキスだけでこんな大騒ぎは無駄じゃないですか。」