遺伝子管理局ローガン・ハイネ・ドーマーの2人いる秘書達は先刻から笑いたいのを我慢して苦しい思いを耐えていた。
局長が苦虫を潰した様な顔でデスクの向こうで横を向いたまま座って沈黙しており、デスクのこちら側では直立不動の姿勢でポール・レイン・ドーマーとダリル・セイヤーズ・ドーマーが指示を待って5分たっていた。長い5分間だった。
やがて、ハイネ局長が口を開いた。
「届け出なくヘリコプターを出動させたのは?」
「私です。」
とポール。
「航空班長に断り無くパイロットの乗務予定を変更したのは?」
「私です。」
とこれもポール。
「輸送班の反重力ボートに人を乗せたのは?」
「私です。」
「免許取り立ての、航空班に所属していない新米パイロットにヘリの操縦をさせたのは?」
「私です。」
「民間企業の敷地内に無許可でドームのヘリを着陸させたのは?」
「私です。」
局長は溜息をついた。
「ドームからの外出を固く禁じられているダリル・セイヤーズ・ドーマーを外出させたのは?」
「それも私です。」
局長がポールに向き直った。
「6件の違反の理由を全て言えるのだろうな?」
するとポールは横に立っているダリルを指さして、平然と言い切った。
「こいつが朝寝坊したからです。」
2人の秘書は我慢出来ずに吹き出し、慌てて顔をコンピュータの陰に隠した。
「ええっと・・・そのぅ・・・」
ダリルがもじもじとしながら言い訳した。
「息子に6時に起こすよう頼まれていたのですが、私がつい寝過ごしまして、レインが息子の出勤が遅れると危惧したので・・・」
「君等は・・・」
ハイネ局長が2人を見上げた。
「それでもドーマーなのか? いつからマイホームパパになったのだ?」
ダリルが身をすくめたが、ポールは依然として平気な顔で上司を見つめていた。
「しかし、今朝の出来事で航空班も輸送班も非常事態に対処出来ることが判明しました。」
局長は椅子をくるりと半廻転させて部下達に背を向けた。そして年長の秘書に声を掛けた。
「ネピア、こいつらをどうしてくれよう?」
「そうですね・・・」
ネピア秘書が暢気な声で答えた。
「レインはまた頭を丸めてはいかがですかな? 子煩悩な父親であることを忘れて暫く仕事一筋だった頃に戻って見ては?」
「セイヤーズは?」
「外に出たくて堪らないのでしたら、放り出しておやりなさい。」
ダリルとポールは思わず振り返って秘書のブースを見た。秘書達はコンピュータを操作していて、2人のどちらとも目を合わせようとしなかった。
局長が咳払いしたので、ダリル達はまた前へ向き直った。局長も彼等に向き直った。
「レイン、西海岸のメーカー達はまだごたごたしているのだろう? さっさと片付けて来い。」
「わかりました。」
「メキシコ系の組織と中国系の組織の解体を急げ。」
「では、すぐに理髪係に頭を剃ってもらって髪が今の長さに戻る迄に片付けて来ます。」
秘書達が顔を上げると、局長は笑いもせずにポールに手を振って「行け」と合図した。
ポールは軽く黙礼して足早に部屋から出て行った。
ダリルはまな板の上の鯉の気分で局長の「御下知」を待った。 局長は机面を指でコツコツと数回叩いてから、考えをまとめたようだ。
「セイヤーズ、髪を染めろ。」
「はぁ?」
「眉毛も同じ色に染めて、外に出るのだ。仕事をさせてやる。」
局長が苦虫を潰した様な顔でデスクの向こうで横を向いたまま座って沈黙しており、デスクのこちら側では直立不動の姿勢でポール・レイン・ドーマーとダリル・セイヤーズ・ドーマーが指示を待って5分たっていた。長い5分間だった。
やがて、ハイネ局長が口を開いた。
「届け出なくヘリコプターを出動させたのは?」
「私です。」
とポール。
「航空班長に断り無くパイロットの乗務予定を変更したのは?」
「私です。」
とこれもポール。
「輸送班の反重力ボートに人を乗せたのは?」
「私です。」
「免許取り立ての、航空班に所属していない新米パイロットにヘリの操縦をさせたのは?」
「私です。」
「民間企業の敷地内に無許可でドームのヘリを着陸させたのは?」
「私です。」
局長は溜息をついた。
「ドームからの外出を固く禁じられているダリル・セイヤーズ・ドーマーを外出させたのは?」
「それも私です。」
局長がポールに向き直った。
「6件の違反の理由を全て言えるのだろうな?」
するとポールは横に立っているダリルを指さして、平然と言い切った。
「こいつが朝寝坊したからです。」
2人の秘書は我慢出来ずに吹き出し、慌てて顔をコンピュータの陰に隠した。
「ええっと・・・そのぅ・・・」
ダリルがもじもじとしながら言い訳した。
「息子に6時に起こすよう頼まれていたのですが、私がつい寝過ごしまして、レインが息子の出勤が遅れると危惧したので・・・」
「君等は・・・」
ハイネ局長が2人を見上げた。
「それでもドーマーなのか? いつからマイホームパパになったのだ?」
ダリルが身をすくめたが、ポールは依然として平気な顔で上司を見つめていた。
「しかし、今朝の出来事で航空班も輸送班も非常事態に対処出来ることが判明しました。」
局長は椅子をくるりと半廻転させて部下達に背を向けた。そして年長の秘書に声を掛けた。
「ネピア、こいつらをどうしてくれよう?」
「そうですね・・・」
ネピア秘書が暢気な声で答えた。
「レインはまた頭を丸めてはいかがですかな? 子煩悩な父親であることを忘れて暫く仕事一筋だった頃に戻って見ては?」
「セイヤーズは?」
「外に出たくて堪らないのでしたら、放り出しておやりなさい。」
ダリルとポールは思わず振り返って秘書のブースを見た。秘書達はコンピュータを操作していて、2人のどちらとも目を合わせようとしなかった。
局長が咳払いしたので、ダリル達はまた前へ向き直った。局長も彼等に向き直った。
「レイン、西海岸のメーカー達はまだごたごたしているのだろう? さっさと片付けて来い。」
「わかりました。」
「メキシコ系の組織と中国系の組織の解体を急げ。」
「では、すぐに理髪係に頭を剃ってもらって髪が今の長さに戻る迄に片付けて来ます。」
秘書達が顔を上げると、局長は笑いもせずにポールに手を振って「行け」と合図した。
ポールは軽く黙礼して足早に部屋から出て行った。
ダリルはまな板の上の鯉の気分で局長の「御下知」を待った。 局長は机面を指でコツコツと数回叩いてから、考えをまとめたようだ。
「セイヤーズ、髪を染めろ。」
「はぁ?」
「眉毛も同じ色に染めて、外に出るのだ。仕事をさせてやる。」