ライサンダー・セイヤーズは寝起きが悪かったが、彼のオリジナルの片方はもっと悪かった。ただ育児期間中はきちんと子供より早起きして朝食を作っていたので、ライサンダーは安心して父親に頼んでおいた。
「日曜日の朝、8時にヘリに乗るから6時に起こして。」
しかし、ドームに戻って以来、ダリル・セイヤーズ・ドーマーは朝はポール・レイン・ドーマーに起こされるまで眠る怠惰な生活に慣れきってしまっていた。
ライサンダーが目覚めた時、時計は7時半を廻っていた。彼は慌ててバスルームに走った。そしてジョギングから戻ってシャワーを浴びて出て来たポールと危うく衝突しそうになった。
「何を慌てているんだ?」
毎朝5時に起きるポールが尋ねた。彼はこれからダリルを起こして朝食に出かけるつもりだった。
「寝過ごしたんだ。勤務時間が1時間早くなったから6時に起こしてって、父さんに頼んでおいたのに・・・」
父さんとお父さんは別人だな、とポールは思った。
「それはダリルに頼んだおまえが悪い。」
と言いはしたものの、彼は息子の難儀を見過ごすことは出来なかった。
「何時までに職場に入れば良いのだ?」
「9時。ポートランドの空港に8時半に着いて、車で半時間走るんだ。」
「俺が解決してやる。顔を洗って着替えろ。俺はダリルを起こす。」
ライサンダーが言われた通りバスルームに入ると、ポールは寝室に入った。ベッドではダリルが枕を抱きしめて惰眠を貪っていた。ポールは自身の着替えをしながら彼に呼びかけた。
「寝ていて良いのか、脱走ドーマー! 遺伝子管理局が子供をもらって行くぞ!」
ダリルがガバッと跳ね起きた。悪い夢でも見た様なぼんやりした顔で周囲を見廻す彼に、ポールが冷たい声で命令した。
「10分以内に出動準備を終わらせろ。直ぐに出かけるぞ。朝飯は抜きだ。」
何が何だかわからないが、ポールが怒っている様なのでダリルは慌ててバスルームに走った。危うくライサンダーとぶつかりかけて、やっと彼は息子との約束を思い出した。
「すまない、ライサンダー、つい寝過ごして・・・」
「もういいよ!」
ライサンダーはぷんぷんしながら自室に行って服を着替えた。
居間ではポールがどこかに電話を掛けていた。
「・・・そう、君のフライトはキャンセルさせてもらう。民間企業に着陸させて君の立場を悪くさせたくないからな・・・うん、機体は借りる。・・・ああ、全ての責任は俺が負うから。」
ポールは電話を終えるとライサンダーが服装を整えて鞄を持って立っているのを見た。それからバスルームに向かって怒鳴った。
「早くしろ、ダリル!」
「父さんはもういいよ、お父さんが助けてくれるのなら・・・」
ライサンダーが諦めて言うと、ポールがチッと舌を鳴らした。
「ダリルが必要なんだ。おまえの職場に直接ヘリコプターを飛ばす。ゴールドスミスは正規パイロットだから、民間企業の中に直接機体を乗り入れるには許可を取らなければならない。そんな暇はないから、彼のフライトはキャンセルさせて機体だけ借りた。」
「それじゃ、操縦するのは・・・」
「おまえの寝坊助親父だ。」
ええ!っと驚くライサンダーの目の前をダリルがバタバタ走って寝室に入り、服を着た。その間にポールはもう1件電話を掛けた。
3人が部屋を出ると8時になる寸前で、アパートの前に輸送班の反重力ボートが待機していた。
「レイン・ドーマーの頼みだから乗せるけど、普通、人間は緊急時しか乗せないんだ。」
ポールファンの操縦士のドーマーはそう言って、3人が乗るとすぐに発進した。走っている間にポールはクラウス・フォン・ワグナー・ドーマーに朝食会にダリル共々行けなくなったと告げた。クラウスが「何事ですか」と尋ねたので、彼は答えた。
「倅の緊急事態だ。大したことじゃない。」
ゲートは簡単に出られる。外に出ると直ぐに空港だ。 ゴールドスミス・ドーマーが機体の準備をして待っていた。
「僕は操縦させてもらえないんだな?」
「君に災いが降りかかるのは御免だからな。」
ダリルが申し訳なさそうにパイロットに謝った。
「ごめん、必ず機体を無事に返すよ。」
ゴールドスミスは溜息をついた。
「まぁ、君だから許す。腕は確かだから。」
3人のドーマー父子は静音ヘリに乗り込んだ。数分後には空に上がっていた。ライサンダーが初めて一息ついて、ポールに囁いた。
「父さんがヘリの操縦出来て良かった・・・」
「免許取得は2日前だったがな。」
とポールが平然と言った。
「フライトは3回目だから安心しろ。」
「日曜日の朝、8時にヘリに乗るから6時に起こして。」
しかし、ドームに戻って以来、ダリル・セイヤーズ・ドーマーは朝はポール・レイン・ドーマーに起こされるまで眠る怠惰な生活に慣れきってしまっていた。
ライサンダーが目覚めた時、時計は7時半を廻っていた。彼は慌ててバスルームに走った。そしてジョギングから戻ってシャワーを浴びて出て来たポールと危うく衝突しそうになった。
「何を慌てているんだ?」
毎朝5時に起きるポールが尋ねた。彼はこれからダリルを起こして朝食に出かけるつもりだった。
「寝過ごしたんだ。勤務時間が1時間早くなったから6時に起こしてって、父さんに頼んでおいたのに・・・」
父さんとお父さんは別人だな、とポールは思った。
「それはダリルに頼んだおまえが悪い。」
と言いはしたものの、彼は息子の難儀を見過ごすことは出来なかった。
「何時までに職場に入れば良いのだ?」
「9時。ポートランドの空港に8時半に着いて、車で半時間走るんだ。」
「俺が解決してやる。顔を洗って着替えろ。俺はダリルを起こす。」
ライサンダーが言われた通りバスルームに入ると、ポールは寝室に入った。ベッドではダリルが枕を抱きしめて惰眠を貪っていた。ポールは自身の着替えをしながら彼に呼びかけた。
「寝ていて良いのか、脱走ドーマー! 遺伝子管理局が子供をもらって行くぞ!」
ダリルがガバッと跳ね起きた。悪い夢でも見た様なぼんやりした顔で周囲を見廻す彼に、ポールが冷たい声で命令した。
「10分以内に出動準備を終わらせろ。直ぐに出かけるぞ。朝飯は抜きだ。」
何が何だかわからないが、ポールが怒っている様なのでダリルは慌ててバスルームに走った。危うくライサンダーとぶつかりかけて、やっと彼は息子との約束を思い出した。
「すまない、ライサンダー、つい寝過ごして・・・」
「もういいよ!」
ライサンダーはぷんぷんしながら自室に行って服を着替えた。
居間ではポールがどこかに電話を掛けていた。
「・・・そう、君のフライトはキャンセルさせてもらう。民間企業に着陸させて君の立場を悪くさせたくないからな・・・うん、機体は借りる。・・・ああ、全ての責任は俺が負うから。」
ポールは電話を終えるとライサンダーが服装を整えて鞄を持って立っているのを見た。それからバスルームに向かって怒鳴った。
「早くしろ、ダリル!」
「父さんはもういいよ、お父さんが助けてくれるのなら・・・」
ライサンダーが諦めて言うと、ポールがチッと舌を鳴らした。
「ダリルが必要なんだ。おまえの職場に直接ヘリコプターを飛ばす。ゴールドスミスは正規パイロットだから、民間企業の中に直接機体を乗り入れるには許可を取らなければならない。そんな暇はないから、彼のフライトはキャンセルさせて機体だけ借りた。」
「それじゃ、操縦するのは・・・」
「おまえの寝坊助親父だ。」
ええ!っと驚くライサンダーの目の前をダリルがバタバタ走って寝室に入り、服を着た。その間にポールはもう1件電話を掛けた。
3人が部屋を出ると8時になる寸前で、アパートの前に輸送班の反重力ボートが待機していた。
「レイン・ドーマーの頼みだから乗せるけど、普通、人間は緊急時しか乗せないんだ。」
ポールファンの操縦士のドーマーはそう言って、3人が乗るとすぐに発進した。走っている間にポールはクラウス・フォン・ワグナー・ドーマーに朝食会にダリル共々行けなくなったと告げた。クラウスが「何事ですか」と尋ねたので、彼は答えた。
「倅の緊急事態だ。大したことじゃない。」
ゲートは簡単に出られる。外に出ると直ぐに空港だ。 ゴールドスミス・ドーマーが機体の準備をして待っていた。
「僕は操縦させてもらえないんだな?」
「君に災いが降りかかるのは御免だからな。」
ダリルが申し訳なさそうにパイロットに謝った。
「ごめん、必ず機体を無事に返すよ。」
ゴールドスミスは溜息をついた。
「まぁ、君だから許す。腕は確かだから。」
3人のドーマー父子は静音ヘリに乗り込んだ。数分後には空に上がっていた。ライサンダーが初めて一息ついて、ポールに囁いた。
「父さんがヘリの操縦出来て良かった・・・」
「免許取得は2日前だったがな。」
とポールが平然と言った。
「フライトは3回目だから安心しろ。」