彼女はまだ銃を持っていた。近づくダリルに銃口を向けながら、少しずつ燃えさかるバイクから遠ざかろうと動き始めた。ダリルは、今更ながら、自分の腕を掲げ、撃つ意志がないことを示そうと試みた。
「バイクを撃ったのは、君に遠くへ行って欲しくなかったからだ。もう撃たないから、君も銃をしまってくれ。」
腕を伸ばしたまま、ゆっくりと銃を下げ、地面に置いた。愚かな行為だと言う意識が心の底にあったが、彼女に信用してもらうには、他に方法を思いつかなかった。
少女が銃を振って、彼に退がれと合図した。彼は素直に従った。彼女が前に出て来て、彼に狙いを付けたまま身をかがめ、彼の銃を拾い上げた。それを自分のベルトに差し込む。なんだか闘い慣れている、と彼は思った。
また銃が振られた。今度は「歩け」だ。ダリルは正面玄関に向かって歩き始めた。彼の車が駐まっている。ライサンダーの姿は見えない。今は出てこない方が良い。
不意に少女が前に回り込み、彼を足止めした。空いている手を差し出したので、車のエントリーキーを要求しているのだとわかった。ダリルが手を下ろそうとすると、彼女は首を振った。
「腕を上げたままでは、キーは出せないぞ。」
ダリルは話しかけた。
「それとも、君が私のポケットから取るかい? 右の尻ポケットだ。」
彼女は彼の後ろに回った。彼女の手が彼のお尻に伸びた時、建物の方で物音がした。乾いたカサッと言う音だ。彼女がそちらへ顔を向けた瞬間、ダリルは彼女の手首を掴み、銃口を自分からそらせた。彼女が引き金を引き、ポンッと音がして、ダリルの車がぐらりと揺れた。ダリルは気づかずに、彼女の手首を捻って銃を取り上げるのに成功した。同時に彼女が彼の股間を蹴り上げた。
このアンフェアな行為は、男には効果覿面だった。
ダリルは思わず彼女を放し、地面に倒れ込んだ。その隙に彼女は建物内に駆け込んだ。
悶絶しているダリルにライサンダーが駆け寄った。
「大丈夫かい、父さん?」
ちょっと笑っている。ダリルは呻いた。
「見てわからんか! 大丈夫な訳がなかろう!」
醜態を息子に見られた。涙は苦痛だけが原因だけではなかったかも?
ライサンダーは肩をすくめ、建物を見た。
「俺が仇を取ってやるよ。」
ダリルの返事を待たずに彼は走り去った。
多分、この苦痛と屈辱は一生忘れないだろう。苦痛が治まったダリルは悪態をつきながら自動車のタイヤ交換をした。少女の銃の流れ弾が当たって、タイヤがパンクしていたのだ。
お陰でライサンダーの加勢に行く迄時間をくった。
ライサンダーも小娘も建物から出てこない。息子が彼女に簡単にやられるとは思わないが、静か過ぎるのが気になる。ダリルは建物に入った。階段に近づき、息子の名前を呼ぶと、階上から返事があった。
「2階だよ、父さん。」
「バイクを撃ったのは、君に遠くへ行って欲しくなかったからだ。もう撃たないから、君も銃をしまってくれ。」
腕を伸ばしたまま、ゆっくりと銃を下げ、地面に置いた。愚かな行為だと言う意識が心の底にあったが、彼女に信用してもらうには、他に方法を思いつかなかった。
少女が銃を振って、彼に退がれと合図した。彼は素直に従った。彼女が前に出て来て、彼に狙いを付けたまま身をかがめ、彼の銃を拾い上げた。それを自分のベルトに差し込む。なんだか闘い慣れている、と彼は思った。
また銃が振られた。今度は「歩け」だ。ダリルは正面玄関に向かって歩き始めた。彼の車が駐まっている。ライサンダーの姿は見えない。今は出てこない方が良い。
不意に少女が前に回り込み、彼を足止めした。空いている手を差し出したので、車のエントリーキーを要求しているのだとわかった。ダリルが手を下ろそうとすると、彼女は首を振った。
「腕を上げたままでは、キーは出せないぞ。」
ダリルは話しかけた。
「それとも、君が私のポケットから取るかい? 右の尻ポケットだ。」
彼女は彼の後ろに回った。彼女の手が彼のお尻に伸びた時、建物の方で物音がした。乾いたカサッと言う音だ。彼女がそちらへ顔を向けた瞬間、ダリルは彼女の手首を掴み、銃口を自分からそらせた。彼女が引き金を引き、ポンッと音がして、ダリルの車がぐらりと揺れた。ダリルは気づかずに、彼女の手首を捻って銃を取り上げるのに成功した。同時に彼女が彼の股間を蹴り上げた。
このアンフェアな行為は、男には効果覿面だった。
ダリルは思わず彼女を放し、地面に倒れ込んだ。その隙に彼女は建物内に駆け込んだ。
悶絶しているダリルにライサンダーが駆け寄った。
「大丈夫かい、父さん?」
ちょっと笑っている。ダリルは呻いた。
「見てわからんか! 大丈夫な訳がなかろう!」
醜態を息子に見られた。涙は苦痛だけが原因だけではなかったかも?
ライサンダーは肩をすくめ、建物を見た。
「俺が仇を取ってやるよ。」
ダリルの返事を待たずに彼は走り去った。
多分、この苦痛と屈辱は一生忘れないだろう。苦痛が治まったダリルは悪態をつきながら自動車のタイヤ交換をした。少女の銃の流れ弾が当たって、タイヤがパンクしていたのだ。
お陰でライサンダーの加勢に行く迄時間をくった。
ライサンダーも小娘も建物から出てこない。息子が彼女に簡単にやられるとは思わないが、静か過ぎるのが気になる。ダリルは建物に入った。階段に近づき、息子の名前を呼ぶと、階上から返事があった。
「2階だよ、父さん。」