ボーデンホテルは白亜の洒落た3階建てだった。翼を広げた白鳥をイメージしており、フロントは中央にある。ダリルはホテルの宿泊客とは思えない街の住人が駐車場の片隅にたむろしているのを見かけた。麻薬の売人か男娼の類だ。車上荒らしが獲物を待っているのかも知れない。彼は明るい街灯の近くに駐車した。通行人の目につく場所で、彼の車はお世辞にも高級車とは言えない。多分、ターゲットのランクでは下位になるだろう。
大理石の床が輝くロビーには予想したより多くの人間がいた。上品な遊び場所と言えば、ここしかないので、夜遊びしたい人々が集まってくるのだ。女性もイブニング姿で歩いている。
ダリルは自分の身なりを恥ずかしいと思わないが、それでもちょっと気後れした。
ネクタイでもしてくるべきだったろうか?
フロントに行くと、チェックインのピークが過ぎて、フロントクラークは疲れた顔をしていた。
ダリルが管理局のポール・レインは到着しているかと尋ねると、彼は端末を覗いて、チェックイン済みだと答えた。ダリルは姓だけ名乗り、面会希望者が来ていると告げてくれ、と頼んだ。クラークは内線をかけ、客と言葉をいくつか交わしてから、彼を振り返った。
「3421号室でお待ちです。上がってきて欲しいとのことです。」
ホテルでは宿泊客への来客を部屋に入れないはずだが・・・とダリルは疑問に思ったが、クラークはいつものことだと言う顔をしていたので、もしかすると管理局は特別に規則を曲げているのかも知れない。
ダリルはクラークに礼を言って、エレベーターに向かった。ボタンを押す際に、ちらりとフロントを見ると、先ほどのクラークはまだ電話を握っており、ダリルと目が合うと慌てて顔を背けた。
ダリルはエレベーターに乗ると、地下階から屋上までの全てのボタンを押して、扉が閉まる直前に外へ出た。
クラークは次の客の相手を始めており、ダリルの行動に気づかなかった。
階段を上がると、数人とすれ違ったが、怪しい素振りをする人物はいなかった。
3階は静かだった。ここは宿泊用の部屋しかない。3421号室は右翼の北の並びで一番中央寄りだった。ダリルはドアのそばに立ち、周囲を見回した。この部屋を見張っている人間はいない様だ。
ボーイが一人、ワゴンにルームサービスの空き皿を載せて3415号室から出て来た。
ダリルはカードキーを探すふりをしてポケットをあちこち探った。
彼の後ろをボーイが通り過ぎ、エレベーターホールの向こうにあるスタッフ用通路へ消えて行った。
ダリルは3421号室のドアチャイムを鳴らした。
中で人が動く気配がした。ドアまで来て、ドアレンズで外を覗いた様だ。ダリルはドアの横に立っていた。ドアの外に誰もいないのを不審に思ったのか、中の人物がドアを少しばかり開いた。ダリルの知らない声が彼の名前を呼んだ。
「セイヤーズ・ドーマーか?」
ダリルはドアの陰で言った。
「失礼、部屋を間違えた様だ。」
ドアが動き、男が頭を出した。 赤毛の頭髪がある。そいつがダリルに気づいた時、ダリルは相手の顔面を殴りつけた。そして、素早くドアの中に男を押し込み、自分も中に入った。
大理石の床が輝くロビーには予想したより多くの人間がいた。上品な遊び場所と言えば、ここしかないので、夜遊びしたい人々が集まってくるのだ。女性もイブニング姿で歩いている。
ダリルは自分の身なりを恥ずかしいと思わないが、それでもちょっと気後れした。
ネクタイでもしてくるべきだったろうか?
フロントに行くと、チェックインのピークが過ぎて、フロントクラークは疲れた顔をしていた。
ダリルが管理局のポール・レインは到着しているかと尋ねると、彼は端末を覗いて、チェックイン済みだと答えた。ダリルは姓だけ名乗り、面会希望者が来ていると告げてくれ、と頼んだ。クラークは内線をかけ、客と言葉をいくつか交わしてから、彼を振り返った。
「3421号室でお待ちです。上がってきて欲しいとのことです。」
ホテルでは宿泊客への来客を部屋に入れないはずだが・・・とダリルは疑問に思ったが、クラークはいつものことだと言う顔をしていたので、もしかすると管理局は特別に規則を曲げているのかも知れない。
ダリルはクラークに礼を言って、エレベーターに向かった。ボタンを押す際に、ちらりとフロントを見ると、先ほどのクラークはまだ電話を握っており、ダリルと目が合うと慌てて顔を背けた。
ダリルはエレベーターに乗ると、地下階から屋上までの全てのボタンを押して、扉が閉まる直前に外へ出た。
クラークは次の客の相手を始めており、ダリルの行動に気づかなかった。
階段を上がると、数人とすれ違ったが、怪しい素振りをする人物はいなかった。
3階は静かだった。ここは宿泊用の部屋しかない。3421号室は右翼の北の並びで一番中央寄りだった。ダリルはドアのそばに立ち、周囲を見回した。この部屋を見張っている人間はいない様だ。
ボーイが一人、ワゴンにルームサービスの空き皿を載せて3415号室から出て来た。
ダリルはカードキーを探すふりをしてポケットをあちこち探った。
彼の後ろをボーイが通り過ぎ、エレベーターホールの向こうにあるスタッフ用通路へ消えて行った。
ダリルは3421号室のドアチャイムを鳴らした。
中で人が動く気配がした。ドアまで来て、ドアレンズで外を覗いた様だ。ダリルはドアの横に立っていた。ドアの外に誰もいないのを不審に思ったのか、中の人物がドアを少しばかり開いた。ダリルの知らない声が彼の名前を呼んだ。
「セイヤーズ・ドーマーか?」
ダリルはドアの陰で言った。
「失礼、部屋を間違えた様だ。」
ドアが動き、男が頭を出した。 赤毛の頭髪がある。そいつがダリルに気づいた時、ダリルは相手の顔面を殴りつけた。そして、素早くドアの中に男を押し込み、自分も中に入った。