2016年8月22日月曜日

4X’s 18

「既に息子から紹介があったと思うが、私はダリル・セイヤーズ、息子はライサンダーだ。君をメーカーから守って欲しいと管理局から依頼されて探しに来た。
どうすれば、君に信用してもらえるのかな?」

 ダリルがポケットに手を入れると、少女がベルトに差したダリルの拳銃のグリップを掴んだ。彼は動きを止めて言った。

「君の写真を出すだけだよ。」

 動作はゆっくりと行わなければならない。ダリルはそっとプラスティックの写真を取り出した。
 ドーマー同士の情報交換は普通端末で行う。ポールは彼に端末を送って来たのだが、ダリルは管理局に自分の位置情報を与えたくなくて、家に置いて来た、写真は端末からプリントアウトしたのだ。
 写真をカウンターの上にそっと置いて、再び壁際に退いた。
少女がカウンターの上の写真を眺め、彼を見た。

「私の友達からもらった。友達は君と君のお母さんを助けようとここへ来たが、間に合わなかった。君のお母さんは君を逃がして亡くなったんだね? 彼女は今際の際、友達に君のことを託した。しかし、友達はドーム人なので、ここへは長く居られない。だから、私が代理で君を保護しに来たんだ。」

 少女は何か言いたそうにしたが、コミュニケーションを取る方法を思いつかない様子だった。
そこへライサンダーがデイパックを持って戻って来た。荷物を受け取ったダリルは、シリアルバーを取り出し、息子と分け合った。

「名前を教えてくれたら、君にもあげるよ。」

 彼はノートとペンも出して、カウンターに置いた。
ライサンダーがこれ見よがしに水筒から水を飲むと、彼女はイライラを募らせた。
ダリルは彼女が可哀想になった。虐めるためにここに来たのではない。
それに日が沈んでしまい、気温が低下し始めた。
月明かりだけで、3人は互いの様子を伺っている状態だ。出来れば早く山の家に帰りたい。
ダリルは根負けした。
カウンターの上に、シリアルバーの残りと水筒を置いた。

「休戦だ。君も食べて飲んで、休むと良い。寝ている間は手を出さないと約束する。」