2016年8月18日木曜日

4X’s 8

 ドーマーは、ドームの外で48時間しか活動出来ない。それ以上外にいると、抗原注射の効力が切れて、細菌や汚染された大気や紫外線に抵抗力のない純粋培養の彼らの体は、忽ち衰弱する。
 ポールは、細切れの捜査はしたくなかった。
限定された時間での捜査が一向に捗らないのは、18年かかったダリルの捜索で経験済みだ。
 自分が動けないのなら、18年間外気の中で生活して「普通の地球人」並の体になったダリルを使うしかあるまい。
 ポールは仕事に関しては実に合理的な考えを持つ人間だった。

「この娘を見つけたら、私は報酬に何を得られるんだ、ポール?」

とダリルが尋ねた。
ポールは、ここへ来る前にドームの現長官ケンウッドと交わした約束を提示した。

「君を捜索第1優先対象から除外してやる。」

さらに、ここへ来てから思いついた条件も・・・今この瞬間に思いついたのだが・・・付け加えた。

「息子の子孫登録をしておいてやる。今日、帰ったらすぐにやっておく。」

 ダリルは横を向いて呟いた。

「君がここに残るって言うのはないんだな・・・」
「それなら、今すぐ君を車に押し込んでドームに帰るさ。」

 2人は目を合わせた。暫く見つめ合った。睨み合ったと言った方が良かった。微かな緊張感が彼らの間に流れた。
 やがて、ダリルが尋ねた。

「妻帯の夢は叶えたのか?」
「クローンの女は欲しくないんだ。」
「コロニー人は地球人と添わないだろう?」
「今は、妻帯に興味がない。」

 ポールは心の中で呟いた。

 俺が欲しいのは、おまえだけだ、ずっと探していたんだぞ。それなのに、こんなド田舎で、子供を作って・・・

彼は立ち上がった。