2016年8月30日火曜日

捕獲作戦 3

  乱暴な訪問者が帰った後、ダリルは一人で畑の手入れをした。ここに居を定めてから毎日欠かさず行ってきた作業だ。手放したくなかったが、子供たちの安全を考えると転居した方が良いだろう。JJをドームに保護してもらったら、ライサンダーを連れてどこかへ行こう。
 電話が鳴った。出ると支局のブリトニー嬢だった。

「ミスター・セイヤーズですね? レイン局員から連絡がありました。西部支局に急用が出来たので、今夜帰りにこちらに立ち寄れるとのことです。
ボーデンホテルはご存じですね?」

 ボーデンホテルはこの近辺では一番大きなホテルで、ドーマーたちもよく利用する。大陸の西半分の支局巡りをして一日で用事が終わらない時に、そこに宿を取るのだ。
各部屋に空気清浄機が完備され、飲料水も蒸留水しか使用しない。雑菌が恐いドーマーたちには、安心出来る数少ない宿泊施設だ。ダリルも若い頃、1,2度泊まったことがある。
 知っていると答えると、ブリトニー嬢は親切に相手の到着時間を教えてくれた。

「今夜の19時から20時の間に到着されます。面会時間は21時まで。お部屋はフロントで尋ねて頂けると案内してくれます。」

 直接部屋に来いと言うのか? ポールとダリルの個人的な面会ならそれは不思議ではないが、今回は形だけでも公務だ。ポールは本当にブリトニー嬢にそんなことを言ったのか?

「面会は部屋でするのですか?」

と尋ねると、彼女も「あら?」と呟いた。

「ええっと・・・普段は局員がロビーに下りてくるんじゃないかしら? 私が聞き間違えたのかも・・・」

ダリルは彼女に余計な心配をさせたくなかったので、気楽な調子で言った。

「今夜、ホテルに行って、フロントに尋ねればわかることですね。連絡、有り難うございます。」

電話を切って、考えた。これは罠かも知れない。しかし、ポールがこんな安っぽい罠を張るだろうか? そもそも、何の為に彼が罠を張るのだ? JJの処遇について、話し会うだけではないのか?