2017年6月23日金曜日

侵略者 2 - 4

 宴が終わり、元ドーマー達はそれぞれの家庭へと帰って行った。ケンウッドはドームの庶務班が予約してくれたホテルに入った。一流ホテルと呼ばれる高い所は遠慮したかったが、空気清浄機や清潔な水、食べ物を得られる宿となるとどうしても宿泊料金が跳ね上がる。ドームは執政官が安宿に泊まるのを良しとしないのだ。入り口でベルボーイの他にベルボーイロボット、それに警備員が居るのを見て、警備も重要なのだと気が付いた。
元ドーマー達も注意を与えてくれたではないか。コロニー人であることを周囲に勘付かれるな、と。
 採取した検体が入っている小型冷蔵ケースを自分の手に残し、後の荷物はロボットに運んでもらった。ロボットだとチップは不要だ。
 部屋はシングルだが広くて寛げた。ケンウッドはシャワーを浴びて、下着姿のままベッドに寝転がった。まさか一日芝生の大地を歩き回るとは予想していなかったが、なんとか重力にも耐えられた。それどころか、風や日光や土の匂いがとても気持ちが良かった。
コロニーにも庭園はあるし、畑もあるが、ゴルフ場の様な贅沢な土地利用は出来ない。

 地球は良いなぁ・・・

 ふと彼は、何故膨大な費用をかけても地球人類復活委員会が活動しているのか、理解出来るような気がした。

 コロニー人も自由に訪問出来る世界をこの地球上に取り戻したいのだ。

 だから自然だけでなく人間が安心して住める世界を復活させようとしているのだ。女性が生まれる惑星を生き返らせるのだ。
 1度は愛想を尽かして出て行った母星、しかし、地球はコロニーが敵うはずのない、とてつもなく大きな世界で、惑星自らが生きようとしている。

 どうしても救わなくては・・・

 何故女性が生まれないのか、その謎を解明しなければならない。コロニー人とどこが違うのだろう。地球人の遺伝子はどの時点で狂ってしまったのだろう。
 疲れがケンウッドの体に覆い被さって来た。彼はいつしか眠りに落ちた。そして夢の中で緑の大地をどこまでも歩いて行った。