2018年11月1日木曜日

JJのメッセージ 2 1 - 10

 遺伝子管理局長ローガン・ハイネ・ドーマーには、富豪の奥方より重要な小娘の件を抱えていた。朝食会の話題が終わったと判断したので、彼は一番重要な報告に移った。

「レインが昨日部下のジョージ・ルーカス・ドーマーから受けた報告ですが・・・」

 ケンウッドが物思いから覚めた表情で振り返った。

「4X関係か?」
「そうです。」

 ゴーン副長官にどれだけ情報が伝わっているのか、ハイネはわからなかったが、彼女も毎日この打ち合わせ会に出ているから、説明は要らないだろう。

「ニューシカゴから南西に下った農場で、少女を目撃したそうです。」
「農場?」
「かなり以前から牛の生産をしている農場があるのですが、そこに人の出入りが多く、誰がいるのか、何人住んでいるのか、付近の住民にもよくわかっていないらしいのです。」
「もしや、メーカーのアジトなのか?」
「そのようです。牛の生産と言えば、体外受精などを行いますから、人間の研究も隠れて出来るでしょう。それに農場の名義に登録されている男性は生きていれば90歳になるのですが、実際に住んでいる男は高齢ではありますが、名義人ではないそうです。」
「高齢の男性? まさか、ラムゼイなのか?」
「可能性はあります。」
「少女はそこで何をしているのだ?」
「ルーカスが見た時は庭で立って空を見上げていたそうです。」
「・・・わからんなぁ・・・」
「拘束されているのではなく、働いているのかも知れません。レインは部下達にもっと詳細を探れと命じたそうです。」
「うむ・・・」
「それから・・・」

 ハイネはこれも不確かですが、と続けた。

「ニューシカゴで葉緑体毛髪を持つ少年が目撃されています。セイヤーズの息子と年恰好が似ているので、ライサンダー・セイヤーズの可能性があります。」
「葉緑体毛髪は珍しくないだろう? 一時期地球上でもコロニーにでも大流行した髪だ。セイヤーズの息子と決めつけるのは如何なものか?」
「その少年を同伴していた男が、少女が目撃された農場の男であってもですか?」
「そうなのか?」
「その男は、農場主の秘書と呼ばれています。滅多に外出しないそうですが、主人の身の回りの世話を任されているらしく、主人の個人的な買い物はその秘書がする習慣になっているとかで、街では知られているそうですよ。」

 ゴーンは、ハイネの口調がのんびりしているので、どこまで重要な話なのか掴めなかった。しかし養子のクロエル・ドーマーがいつも局長の言葉に感銘を受けている様子なので、きっと全部重要なのだろう。
 ケンウッドは考え込んだ。コロニー人の遺伝子学者サタジット・ラムジーと思われる 
メーカー、ラムゼイが農場主ならば、セイヤーズの息子と4Xと呼ばれる娘は何故そこにいるのだろう? 
 その時、ハイネがまた言った。

「少女はヘリで上空を旋回したルーカスに手を振ってくれたそうです。まるでおいでと言っているかのように・・・」