2018年11月19日月曜日

牛の村   2 2 - 5

 再びハイネ局長が語り出した。

「ニューシカゴ近郊の山間に、牛の放牧をしている農家がある。牛はクローン技術で増やして、今は自然交配も出来る様になった。その農家は、パーカーと言う人物の名義なのだが、パーカーは数年前に死亡していることがわかった。
 北米南部班はその農家の内偵をして、多くの人間が出入りしている事実を掴んだ。
さらに、出入りする人物の中には、葉緑体毛髪の少年も含まれていることを、付近の聞き込みで掴んだ。」
「ちょっと待って下さい。」

 セイヤーズが聞き捨てならぬことを耳にして、局長を遮った。

「その緑の髪の少年と言うのは・・・?」

なんで部下たちは自分の話を遮ってばかりいるのかなぁ・・・ハイネ局長は苦虫を潰した様な顔をした。

「レインはその少年を君の息子だと断定した。」
「どうして・・・」

とセイヤーズは呟いた。息子が謎の農家にいる理由を考えたのだが、ハイネは違う意味に捉えた。

「少年が自らレインの直通電話に掛けてきたそうだ。」
「ライサンダーが?」
「何故彼はレインの番号を知っていたんだ?」

尋ねられてセイヤーズは考えた。何故だ? そして可能性の高い答えを導き出した。

「レインが連絡用に送って来た端末で番号を知ったのでしょう。」

親子ねぇとラナ・ゴーンが呟いたが、その言葉の意味がわかったのは極少数だった。

「息子はレインに何の用があって掛けたんです?」
「少年はレインに、『ラムゼイは引っ越す』と告げたそうだ。」
「ああ、成る程、その農家がラムゼイのアジトだったんですね。」

北米北部班チーフ、ドーソンが発言した。

「すると、ベーリングの娘もそこに居るんですね?」
「南部班のルーカスが目視で確認した。娘もそこに居る。但し、子供たちが捕虜なのか使用人になったのか、それは不明だ。」

そこでやっとハイネ局長は本題に入った。

「昨日の早朝、レインは北米南部班第1チームを率いてラムゼイのアジトへ家宅捜査に向かった。子供2人を保護してラムゼイも逮捕出来れば上出来だったはずだが、計算が狂った。」

局長は一拍おいてから、結果を述べた。

「支局にいたスパイに罠を仕掛けられ、レインがラムゼイに捕まった。」