2018年11月30日金曜日

トラック    2  1 - 6

 クロエル・ドーマーはストレッチャーに横たわっている男にカメラを向けた。40代後半、50歳になるかならないかの中肉中背の黒っぽい茶色の髪の男だ。肌は日焼けしているが、荒れていない。小麦色の艶のある皮膚だ。
 ハイネはじっと見つめていたが、やがて頷き、呟いた。

「素晴らしい・・・」

 セルシウス、ネピア、キンスキー、そして電話の向こうのクロエルが、思わず彼の顔を見た。彼等はローガン・ハイネが何に感動したのか、わからなかった。
 ハイネはそのまま無言で1分間ラムゼイの秘書を見つめ、やがてクロエルを呼んだ。

「ちゃんとここにいますよ、局長。」
「その秘書をドームに連れて来なさい。その男だけで良い。残りのメーカー供はいつもの様に警察に任せる。」
「了解しました。」

と応えはしたものの、クロエルは何故ジェリー・パーカーをドームに送るのか、理由がわからなかった。

「今夜、レインと先発チームと共に彼を航空機に乗せます。僕はラムゼイを追ってもう暫くこの辺りに残ります。」
「ラムゼイが潜伏している場所に見当が付いているのか?」
「トラック隊が向かっていた方角を考えて、恐らくセント・アイブス・メディカル・カレッジ・タウンでしょう。セイヤーズも同じ考えです。ニュカネンは嫌がるでしょうけど、出張所にスペースを借りて拠点にします。」
「長期は駄目だぞ。」

 ハイネが囁いた。

「ケンウッドが文句を言うぞ。」

 クロエルがニヤリと笑った。ハイネは彼にセイヤーズを同伴しても良いと暗に許可したのだ。