2018年11月22日木曜日

牛の村   2 2 - 8

 ケンウッドは会議場内を見渡し、執政官達に閉会を告げた。

「我々は地球人の世界に干渉することを許されていない。ドームの外で起きていることは、ドーマー達に任せるより他はない。彼等が今夜全員無事に帰投することを祈ろう。
 この会議のことは、ここだけの話だ。招集されなかった者には他言無用。よろしいか?」

 ダルフーム博士を始めとする幹部執政官達が頷いた。皆秘密を守ることには慣れている。彼等はドームでの研究内容や生活のことをコロニーの家族にすら語らないのだ。
 学者達が立ち上がって議場から出て行くのを見送り、ケンウッドは端末を出した。ハイネからメッセージが入っていた。慌てて開いた。

ーー執政官達は納得しましたか?

 10分も前の送信だ。局長はケンウッドが上手く幹部達をまとめてくれたかと心配しているのだろう。急いで返事を送った。

ーー我々は全員納得した。有難う。君達の任務が無事に成功するよう祈っている。

すると折り返しメッセが来た。簡単に、「お休みなさい」とあった。
 時計を見ると午前2時だった。セイヤーズとクロエルはレインの部下を率いて朝1番の航空機で中西部へ向かう。ハイネは彼等に短くても睡眠を取るよう命じたに違いない。
ケンウッドは疲れを感じ、アパートへ引き揚げた。ヤマザキは勤務明けなので、十分眠る時間があると言っていたが、長官はそうも行かない。チャーリー・チャンとジャクリーン・スメアの両秘書に1時間ばかり出勤が遅れるとメッセージを入れておき、やっと彼はベッドに入った。