2018年11月8日木曜日

牛の村   2 1 - 7

 3人のチーフがテレビを利用して局長と会議を持った。ドーソンもドルスコもワグナーの報告書から事態の深刻さを直ちに理解した。

「レインの抗原注射の効力を考えると、24時間以内の救出を前提に話を進めないといけないな。」

とドーソンが言った。

「南部班は現在第1チームと第4チームが現地にいるのだね?」
「彼等も24時間が限度っすよ。」
「ワグナーはハリスを追跡中だな?」
「すると第4チーム・リーダーが指揮官か?」
「否、まだワグナーが指揮を執っているらしい。」
「そいつは大変す。」
「レインの救出に24時間の制限があると言っても、部下は新たに送り込んだ方が良いだろう。」
「指揮官もワグナー以外の者に任せるべきだ。ワグナーはハリスの追跡に専念させる。」
「では、誰を指揮官にする?」

 テレビの中のホアン・ドルスコ・ドーマーが、局長執務室のクロエル・ドーマーを見た。クリスチャン・ドーソン・ドーマーもクロエルを見たので、ローガン・ハイネ・ドーマーもクロエルに顔を向けた。クロエルが目を丸くした。

「え? え? 僕ちゃん?」
「まさかこんなおちゃらけたヤツが遺伝子管理局の人間だとは、ラムゼイも想像すらしないだろうさ。」

とドルスコが呟いた。ちょっと待って、とクロエルが焦った。

「僕ちゃん、リオ・グランデから北は地理がわかんないっす。」
「何も1人で行けとは言ってない。」
「北米南部班がいるじゃないか。」

 ドーソンがハイネ局長に向き直った。

「私が指揮を執ることも考えたのですが、それでは北米大陸の遺伝子管理業務を統括する者がいなくなります。レインが不在の間、私が北米全般の業務を担当します。また、クロエルの中米は、ホアンが南米と同時に統括出来る筈です。
 クロエルは昔レインと組んで業務をした経験があったでしょう? レインの性格はわかっている筈ですから、救出の際のレインの動きや考えもある程度見当がつくと思います。」
「だけど・・・」

 クロエルは躊躇った。レインが先輩として慕っていたドーソンの方が、レインを理解しているのではないか、と。
 ハイネが首を振った。

「確かに、遺伝子管理業務は1日たりと休む訳にはいかん。レインの救出が24時間以内で成功すると仮定しても、ラムゼイ逮捕や少年少女の保護、全てを同じ時間で行える保証はない。
 クロエル、君は北米のチーフ代理を務められるか?  それとも、ドルスコを指揮官にして君が中南米の統括をするか?」

 クロエルは事務仕事より外で救出活動を指揮する方がましだ、と感じた。