2018年11月18日日曜日

牛の村   2 2 - 4

「我々がレインと取引したのだ。」

とそれまで黙していたケンウッド長官が口を開いた。

「セイヤーズを逮捕せずに説得して連れ戻すと彼が言うので、それなら4Xの保護に協力させろと、ね。」

 彼はセイヤーズを見た。

「君は4Xを見つけただろう?」
「はい。」

 セイヤーズは素直に認めた。ここで誤魔化しても意味がない。しかし、こんな話はみんな知っているのではないか? 何故ここで繰り返すのだろうと彼は疑問を感じた。

「自宅に保護しました。」
「それで?」
「引き渡すつもりで、中西部支局を通してレインに連絡を取りました。」
「だが、中西部支局長を君は殴って怪我をさせた。」
「支局の職員の指示でボーデンホテルのレインに面会に行きました。フロントで取り次ぎを頼むと、レインの部屋に行けと言われ、行ってみたら知らない男がいたので・・・」

クロエルがクスッと笑って、また口を出した。

「反射的に殴ったんだなぁ・・・」
「クロエル!」

ハイネ局長がイラッとした声を出した。ケンウッドはクロエルも局長も無視して話しの続きをダリルに促した。

「続けなさい。」
「支局長が私を権限もなしに逮捕しようとしたので逃げました。それで、レインが追ってきて、私を逮捕しました。」
「子供たちはどうした? ベーリングの娘と、君自身の子供が家にいただろう?」

 セイヤーズの子供? チーフたちには初耳だったらしい。室内がざわっとした。
セイヤーズは簡単に説明した。

「少女を見つけた時、ラムゼイと出遭ってしまいました。後をつけられた可能性があったので、留守の間、子供たちを山奥の隠れ場所に隠しておきました。レインが来た時、子供たちは山にいたのです。」