ポートランド市警がドームを訪問したのは、翌日の午前中だった。刑事が2人やって来たが、彼等が足を踏み入れることを許されたのは、出産管理区のみだった。つまり、一般の地球人が出入り出来る区画だ。そこで設置されているゲストルームでライサンダー・セイヤーズは事情聴取を受けた。ドーム側は弁護士の用意はしなかった。ライサンダーは被害者で、警察は被害者の証言を取りに来たのだ。しかし付き添いとして地球の法律に詳しい執政官が1人同席した。
ライサンダーは妻ポーレットが犯人のドン・マコーリーと幼馴染みだと言う説明を妻から聞いたことがあると言った。妻は妊娠して、産科医のマコーリーに健康管理に関する相談をしていた。マコーリーと彼は電話で会話をしたことはなく、面識もなかった。また事件当日にマコーリーが彼の自宅に来ることも知らなかった。
昼過ぎに帰宅したら妻は姿を見せず、代わりに家の中にマコーリーが居た。拳銃を向けられ、少し言葉を交わした後、マコーリーの仲間が同じく家の奥から現れた。妻の行方を尋ねたが教えてくれず、手錠を掛けられ、家の外へ連れ出された時に、遺伝子管理局の局員が庭に居て、救出してくれた。
そう言う内容のことをライサンダーは刑事に喋った。喋りながら、自分がマコーリーと言葉を交わしていた時にはポーレットは既に殺害されていたのだと思いが行き、涙が出て来た。昨日何度か父に抱き締められて泣いたので、号泣することはなかったが、言葉に詰まる場面が何度かあった。執政官が、気分が悪ければ事情聴取を打ち切らせると言ってくれたが、彼は頑張った。
刑事達は、事件当日クロエル・ドーマーとジョン・ケリー・ドーマーからも事情聴取を済ませていた。彼等の証言とライサンダーの証言に食い違いがないか、チェックしていた。
「貴方の証言と遺伝子管理局の2人の証言は合っていますが・・・」
「何かおかしなところでもあるんですか?」
「マコーリー達は、遺伝子管理局の人間は3人居たと言っているんです。」
ライサンダーは、クロエル達がダリルの存在を伏せたことに気が付いた。彼は証言で局員は2人居たと言ったのだが、その2人はクロエルとダリルのつもりだった。しかし警察の事情聴取に応じたのはクロエルとケリーで、ダリルは一足先にポーレットの胎児をドームへ搬送して事件現場を去ったのだ。ケリーの存在はライサンダーも知っていた。ケリーは庭での乱闘に加わらなかったので、彼は計算に入れなかったのだが、ケリーが事情聴取を受けたことは知っていた。
遺伝子管理局は父さんの存在を警察に知られたくないんだ・・・
ライサンダーはすっとぼけることにした。
「3人でしたか・・・俺はもう何が何だかわからなくて・・・すぐに警察が来たし・・・」
「3人居たと連中は言ってるんです・・・否、まだ喋れないから筆談だけど。」
「喋れない?」
「顔を殴られて、1人が顎の骨を砕かれ、1人が頬骨と鼻骨を骨折してね、3人目は鼓膜を破られて、4人目も歯を折られた。それがブロンドの局員だったと証言しているんですが、居ないんですよね、何処を探しても・・・」
執政官が咳払いした。
「見間違いでは?」
「しかし、証言した局員はドレッドヘアの黒人とダークヘアの白人で、ブロンドじゃなかったんです。私もそのブロンドの局員とちょっとだけ話をしました。セイヤーズさんの奥さんの遺体を発見した時に・・・。」
「消えたブロンドの局員は、警察が来る迄の間に、捕まえたマコーリーの一味全員をぶちのめして怪我をさせてます。ちょっと拙いんですよ。」
「しかし、その男が局員だと言う証拠はないでしょう?」
「マコーリー達はブロンドの男もダークスーツを着用していたと言っています。」
「連中の言うことを信じるのですか?」
「しかし、彼は局員だと名乗りましたし・・・」
「だからそのブロンドが局員だったと言う証拠はない訳ですね。」
刑事達は渋々認めた。
「ないです。」
「申し訳ないが、証言した2人・・・ええっと、クロエルさんとケリーさんにもう1度お話を伺いたいのですが?」
「それは無理ですね。」
「無理?」
「クロエルは今朝早く職務でニカラグアへ飛んで行きました。ケリーもLAへ出かけました。」
「証人を遠くへ行かせたのですか?」
「別に逃げた訳ではありません。職務遂行に励んでいるだけです。数日で帰って来ますよ。」
勿論、ドーム幹部は2人のドーマーが帰投する前に彼等と口裏を合わせるつもりだ。
刑事達は、また伺いたいことがあれば来ます、と言い、ライサンダーも落ち着いたらニューポートランドに帰るので、その時に連絡すると言った。
警察が帰ると、執政官はライサンダーを見て愚痴った。
「君の親父、ダリルは本当に厄介な男だなぁ。余計な乱暴を働かなかったら、証言させていたのに。」
ライサンダーは肩をすくめた。
「俺も、親父があんなに怒ったのを見たのは初めてです。」
ライサンダーは妻ポーレットが犯人のドン・マコーリーと幼馴染みだと言う説明を妻から聞いたことがあると言った。妻は妊娠して、産科医のマコーリーに健康管理に関する相談をしていた。マコーリーと彼は電話で会話をしたことはなく、面識もなかった。また事件当日にマコーリーが彼の自宅に来ることも知らなかった。
昼過ぎに帰宅したら妻は姿を見せず、代わりに家の中にマコーリーが居た。拳銃を向けられ、少し言葉を交わした後、マコーリーの仲間が同じく家の奥から現れた。妻の行方を尋ねたが教えてくれず、手錠を掛けられ、家の外へ連れ出された時に、遺伝子管理局の局員が庭に居て、救出してくれた。
そう言う内容のことをライサンダーは刑事に喋った。喋りながら、自分がマコーリーと言葉を交わしていた時にはポーレットは既に殺害されていたのだと思いが行き、涙が出て来た。昨日何度か父に抱き締められて泣いたので、号泣することはなかったが、言葉に詰まる場面が何度かあった。執政官が、気分が悪ければ事情聴取を打ち切らせると言ってくれたが、彼は頑張った。
刑事達は、事件当日クロエル・ドーマーとジョン・ケリー・ドーマーからも事情聴取を済ませていた。彼等の証言とライサンダーの証言に食い違いがないか、チェックしていた。
「貴方の証言と遺伝子管理局の2人の証言は合っていますが・・・」
「何かおかしなところでもあるんですか?」
「マコーリー達は、遺伝子管理局の人間は3人居たと言っているんです。」
ライサンダーは、クロエル達がダリルの存在を伏せたことに気が付いた。彼は証言で局員は2人居たと言ったのだが、その2人はクロエルとダリルのつもりだった。しかし警察の事情聴取に応じたのはクロエルとケリーで、ダリルは一足先にポーレットの胎児をドームへ搬送して事件現場を去ったのだ。ケリーの存在はライサンダーも知っていた。ケリーは庭での乱闘に加わらなかったので、彼は計算に入れなかったのだが、ケリーが事情聴取を受けたことは知っていた。
遺伝子管理局は父さんの存在を警察に知られたくないんだ・・・
ライサンダーはすっとぼけることにした。
「3人でしたか・・・俺はもう何が何だかわからなくて・・・すぐに警察が来たし・・・」
「3人居たと連中は言ってるんです・・・否、まだ喋れないから筆談だけど。」
「喋れない?」
「顔を殴られて、1人が顎の骨を砕かれ、1人が頬骨と鼻骨を骨折してね、3人目は鼓膜を破られて、4人目も歯を折られた。それがブロンドの局員だったと証言しているんですが、居ないんですよね、何処を探しても・・・」
執政官が咳払いした。
「見間違いでは?」
「しかし、証言した局員はドレッドヘアの黒人とダークヘアの白人で、ブロンドじゃなかったんです。私もそのブロンドの局員とちょっとだけ話をしました。セイヤーズさんの奥さんの遺体を発見した時に・・・。」
「消えたブロンドの局員は、警察が来る迄の間に、捕まえたマコーリーの一味全員をぶちのめして怪我をさせてます。ちょっと拙いんですよ。」
「しかし、その男が局員だと言う証拠はないでしょう?」
「マコーリー達はブロンドの男もダークスーツを着用していたと言っています。」
「連中の言うことを信じるのですか?」
「しかし、彼は局員だと名乗りましたし・・・」
「だからそのブロンドが局員だったと言う証拠はない訳ですね。」
刑事達は渋々認めた。
「ないです。」
「申し訳ないが、証言した2人・・・ええっと、クロエルさんとケリーさんにもう1度お話を伺いたいのですが?」
「それは無理ですね。」
「無理?」
「クロエルは今朝早く職務でニカラグアへ飛んで行きました。ケリーもLAへ出かけました。」
「証人を遠くへ行かせたのですか?」
「別に逃げた訳ではありません。職務遂行に励んでいるだけです。数日で帰って来ますよ。」
勿論、ドーム幹部は2人のドーマーが帰投する前に彼等と口裏を合わせるつもりだ。
刑事達は、また伺いたいことがあれば来ます、と言い、ライサンダーも落ち着いたらニューポートランドに帰るので、その時に連絡すると言った。
警察が帰ると、執政官はライサンダーを見て愚痴った。
「君の親父、ダリルは本当に厄介な男だなぁ。余計な乱暴を働かなかったら、証言させていたのに。」
ライサンダーは肩をすくめた。
「俺も、親父があんなに怒ったのを見たのは初めてです。」