2019年6月14日金曜日

オリジン 2 2 - 3

 昼食後仕事に戻るゴメス少佐と別れてハイネは図書館に行った。個別ブースに入って半時間ほど昼寝をした。普段より1時間以上早い昼食を取ったので、昼寝から覚めてもまだドームの中は昼休みモードだ。働き者のドーマー達が、のんびりと休憩している。
 ハイネは運動施設に行った。昼休みは比較的空いているのだ。着替えた彼はトレーニングマシンで軽くウォーミングアップしてからスカッシュ競技場に入った。午後は賑わう競技場も昼休みは閑散としている。彼はラケットを取り、マシンが打ち出すボールが壁に当たって戻ってくるのを打ち返す練習をした。相手がいないので、正直なところ退屈なのだが、体をほぐすのが目的だから、彼は業務に戻る迄の短い運動のつもりだった。
 ふと視界に一人の男が入った。ラケットを持っている。ハイネはマシンに声を掛けた。

「休止」

 ボールが止まった。ハイネは球技場の入り口に立っている若い男を振り返った。初めて見る顔だったが、見覚えがあった。ポール・レイン・ドーマーとダリル・セイヤーズ・ドーマーを足して2で割った様な容姿だ。髪の色は緑色に輝く黒髪。日焼けしているが白人で、青い目をしている。その目元がレインにそっくりだった。だが全体の雰囲気はセイヤーズだ。

 これがサタジット・ラムジーの最高傑作か・・・

 ハイネは優しい微笑みを浮かべて若者に声を掛けた。

「ヤァ、スカッシュをするのかね?」

 若者は緊張した表情で彼を見返した。

「こんにちは。スカッシュって言うんですか? テニスみたいだけど・・・」
「テニスから派生した競技だよ。」
「そうなんですか。どんなルールなんですか?」
「簡単に言えば、四方を壁に囲まれたコートとボールを用いて行う屋内球技だ。2名がラケットでボールを交互に打ち合う。全ての打球は前方の壁に向かって打つ必要があるが、そのほかの壁も全て利用することができる。相手がボールを2度床にバウンドする前に前方の壁に打ち返すことができなかったり、ボールが壁に届かなかったりすると、自分の得点になる。逆に言えば、自身がボールを1度目のバウンドの後で打ち返せなかったり、壁にボールが届かなければ、相手の得点になる。」

 若者が頷いた。呑み込めた様だ。ハイネはマシンからボールを一個だけ出した。

「一回やってみるかね?」

 恐らくセイヤーズの息子だから、一回で要領を掴む筈だ、とハイネは睨んだ。若者が頷いてコートの中に入ってきた。