2019年6月27日木曜日

オリジン 2 4 - 3

 ケンウッドはアパートの自室で書き換えの日に備えて打ち合わせ会を開いた。出席者はハイネ、ヤマザキ、ペルラの3名で、実質飲み会のメンバーなのだし、実際酒を飲んだのだ。しかし立場上ドーマーに飲酒させていることを公表出来ないし、本当に打ち合わせもしたのだ。
 ヤマザキが丸一日コンピューターに縛られるケンウッドとハイネの健康を案じて、端末を使っただけだが、簡単に健康診断を行った。そして書き換え作業の合間に端末を用いて日課業務を行えると言ったハイネに、余計な仕事はするなと忠告した。

「確かに君の能力なら両方の作業をこなせるだろうけど、精神的肉体的に余裕を持たせて仕事をして欲しい。君は認めたくないだろうが、100歳ってぇのは、無理して欲しくない歳なんだぜ。」
「それに、万が一間違えられては困ります。折角女の子誕生が目の前に迫ってきているのに・・・」

とペルラがヤマザキに味方した。ハイネが眉を上げて睨みつけるフリをすると、彼は言葉を追加した。

「そろそろお仕事の形態を変えてみては如何でしょう?」
「形態を変える?」
「日課を局長だけの仕事とする時代は終わりになさっては如何です?」

 ケンウッドとヤマザキはペルラの発想に感心した。遺伝子管理局長が日々行っている作業は、分業出来る筈だ。出生届けと死亡届け承認だ。地球人類復活委員会が発足して、遺伝子管理を地球人にさせようと決めた時、生死の公式承認をするのは局長の仕事と委員会が決めたのだ。しかし、膨大な人名のリストと届出書類に目を通して承認するのは、局長でなくても良いではないか。局長は部下が目を通した書類の総括の最終承認をするだけで良いのではないのか。
 生まれた時から、局長職とはこんなものだと教え込まれてきたハイネは、困惑してケンウッドを見た。ケンウッドは、長官として、ドーマーの親として、そして親友として、ペルラの意見を理解し、賛同した。

「ハイネ、内勤の局員は大勢いるだろう? 生死リストが何か彼等は知っている。重要性も知っている。彼等の中から数名ピックアップして、業務内容を教えてはどうかね? それぞれに担当の支局を決めてやり、誕生と死亡を2人以上で代わり番こにチェックするのだ。彼等が承認した書類の総括の最終承認署名を君が行う。
 常々思っていたが、内勤の局員数が増えているんじゃないか? 元から内勤に就いている局員に加えて、外勤の局員が引退して内勤に異動する人数が増えているだろう? 仕事のシェアをするなら、新規の業務を作るのも有りだと思うんだ。君が楽をする為に分けるんじゃない。彼等に重要な仕事を与えて外勤は引退してもまだ必要とされていると思ってもらえるようにしなくては。」

 ペルラがケンウッドの意見に勇気付けられて、微笑んだ。

「局長、みんな生死リストの日課が重労働で外の人間にとって最重要の仕事だと理解しています。それを任されるのは名誉ですよ。」