2019年6月16日日曜日

オリジン 2 3 - 2

 日曜日はドーマー達にとって意味がなかったが、出産管理区では収容されている女性達には意味があった。金曜日だって意味があるのだし、更に言えば全ての曜日が外の地球人には意味があるのだ。ドーム内には宗教施設がない。しかし信仰の形によって集会が出来て、お祈りに集まっている人々の集団がいた。中央研究所の食堂でガラス越しにその様子を眺めながら、ハイネとアイダは朝食を摂った。

「コロニーでもあんなことをしているのですか?」

 ハイネの質問にアイダが頷いた。

「信仰と言うものはいつの時代でも何処の土地でも消えることはないでしょうね。」

 そして彼を見て笑った。

「貴方だって、若い人達から『ドーマーの神様』と呼ばれているじゃないですか。」
「止して下さいよ。私はお供え物なんかもらったことなどありません。」

 ハイネはムッとした表情をして見せた。 そして2人で吹き出した。そこへヤマザキ・ケンタロウがやって来た。

「相変わらず、仲のよろしいことで・・・」

 彼は遠慮なくアイダの隣に座って、ハイネに向き合った。

「ニコはお昼前に帰って来る。帰ったら昼食の後ですぐ執政官会議を招集するそうだ。間も無くゴーンから一斉送信で連絡が入るだろう。君達も出てくれよ。」
「貴方は、ドクター?」
「僕も急患がいなければ出るさ。何か重要な話らしいぞ。」

 勿論緊急臨時会議を開くのだから重要案件があるのだ。アイダは折角の休日なのに、と呟いた。キーラからの連絡ではそんな話は出なかったのだ。ハイネは彼女の手をそっと上から掴んで慰めた。

「会議を引っ掻き回す人がいなければ早く終わるでしょう。」
「そう願いたいね。」

 ヤマザキは離れたテーブルで食べている若い執政官達を見た。ケンウッドが運んで来る案件はきっと新規プロジェクトに関係している。女の子が生まれる遺伝子情報を崩さない人工羊水のプログラムが実施されれば、失業を心配する執政官がいることは確かだ。アメリカ・ドームではケンウッドが決して失職させないと約束したが、他のドームではプロジェクト進行に妨害工作する科学者もいると言う。アメリカ・ドームも一つにまとまっていると言い難いから、ヤマザキは不穏分子が隠れていることに不安を抱いていた。