2019年6月16日日曜日

オリジン 2 3 - 3

 内務捜査班チーフ副官コリン・エストラーベン・ドーマーが局長執務室に現れたのは、ハイネが業務を始めた15分後だった。第1秘書ネピア・ドーマーの不機嫌そうな顔を全く意に介せずに彼は執務室の中央テーブルを回り込んで歩き、局長執務机の前に立った。

「おはようございます。いきなりで申し訳ありませんが、この画像をご覧下さい。」

 エストラーベンは自身の端末を操作して中央テーブルの上空に画像を表示した。

「げっ!」

とネピアが真っ先に声を上げた。

「ほう・・・」

とハイネ。キンスキーはぽかんと口を開けたまま固まった。
 画像は夜間の庭園だ。森の中のギリシア風東屋で、キスをしている男2人が写っていた。片方の男は金髪だ。暗くてもわかる。名前もわかる。彼の背に腕を回して引き寄せている男の顔は見えないが、黒っぽい髪だ。その体格にハイネはなんとなく見覚えがあった。本人に直接会ったのは1回だが、画像や身体スキャン映像は何度も見ている。
 最初のショックが消えると、ハイネが一番早く立ち直った。エストラーベンを振り返った。

「例のパパラッチサイトか?」
「そうです。今朝、アップロードされました。」

 画像タイトルが出た。

ーー本日のトップニュース! 我らがアイドル、恋人を横取りされる!

 キンスキーが掠れた声で誰にとなく尋ねた。

「セイヤーズが浮気ですか?」
「違うだろう。」

とネピア。

「両者の上体の形状を見たまえ。セイヤーズは珍しく不意打ちに遭ったのだ。」

 正しく筋肉の緊張状態を画像だけで判断したネピアは、局長を見た。

「レインは出張中でしたね?」
「そうだな。」

 ハイネは恋人同士の間で起きるかも知れない波紋を想像して、ちょっと笑った。そしてエストラーベンを見た。

「何か問題でもあるのか?」
「相手のパーカーに付ける護衛を増やした方が良いですか?」

 とエストラーベンが質問を質問で返した。ハイネは首を振った。

「必要ない。パーカーは目的があっての行動だろう。」