局長室を出たポール・レイン・ドーマーは、朝から留守にしてしまった自身のオフィスへ急いでいた。エレベーターに乗り込む時、後ろからジェリー・パーカーが追いかけて来た。ジェリーは建物の出口迄近道するつもりでエレベーターに駆け込んだのだが、同乗者がポール1人だけだったので、少し気まずく感じた。何しろ、元捕虜と元捕縛者だ。そして今は捕縛者と捕虜だ。ほんの数秒の同乗だが、彼は沈黙が気詰まりに思えたので、声を掛けた。
「JJとのデートは愉しかったか?」
ポールの表情が固まった。そしてエレベーターのドアが開いた途端、ジェリーはポールに腕を掴まれ、引きずり出された。
「おい、俺は下迄降りるんだ!」
「いいから、ちょっと来い!」
ジェリーの目の前でポールはオフィスのドアを指紋で開き、部屋の中にジェリーを押し込んだ。そしてドアが閉じるなり、彼の襟首を掴んで尋ねた。
「俺が今日JJと一緒に居たことを、どうしておまえが知っているんだ?」
ジェリーは何故ポールが怒るのか理由がわからない。
「どうしてって・・・おまえがJJの『お誕生日ドーマー』だから・・・」
「だから、どうしておまえがそのしきたりを知っているんだ?」
「その手を離せ。そうすれば教えてやる。」
ポールは一拍呼吸をして、自身の気を静めた。そしてジェリーから手を離した。
ジェリーは、顔に似合わず乱暴なヤツだ、とぶつくさ言いながら、勝手に中央のテーブルの周囲にあった椅子の一つに座った。
ポールはドアを気にした。ダリルが戻って来ると拙い。
「早く言わないか! 俺は忙しいんだ。」
「デートしていたからな・・・わっ! 殴るなよ!」
ポールが拳を振り上げて見せたので、ジェリーは渋々語った。
「夕べ遅く、俺は中央研究所でケンウッド長官が月の会合で使う資料の製作を手伝わされたんだ。概ねはケンウッドが作成済みだから、後はコンピュータに入れて会合の出席者に見せる為の整理だ。同じ部屋でJJとゴーン副長官と、メイって言う女執政官が同じ様な作業をしていた。ケンウッドは部屋にいなかった。他にも仕事があるとかで。
休憩時間に、メイがJJに誕生日のプレゼントは何が良いか、って聞いたんだ。JJは、物は要らないから、Pちゃんとデートしたいって言った。すると、ゴーンが、『お誕生日ドーマーにレインを指名するのね』と言ったんで、俺がそれは何かと尋ねたら、びっくりするような話をしてくれた。」
「女執政官だけの風習みたいなものだ。誕生日に、好きなドーマーを指名してデートするんだ。そう言ったんだろ?」
「もっと教えてくれたぜ。指名されたドーマーは拒否出来ないんだってな。女は、怪我さえさせなければ、ドーマーを1日限定で好きに出来るそうだ。歌を歌わせても良いし、抱いても良いって・・・しかも、ドーマーは指名されたことを他に喋ってはいけないと言うルールがある・・・」
「だから・・・」
ポールはぶっきらぼうに言った。
「今日の出来事を俺に尋ねるな。」
しかし、ジェリーは止めなかった。
「おまえは初めて指名されたんだってな? おまえのことだから、既に数え切れない程選ばれていたと思ったが、そうじゃないとメイが言った。まず、おまえは人気者だから、独占しちゃならねぇと言う暗黙の了解が女達の間にあったんだとさ。それから、おまえが他人に触られるのを極端に嫌うので、女達は遠慮していたそうだ。
JJは特別だ。彼女は何か人類の未来に関する発見をしたそうだ。本人はわかっていない様だが。女達は彼女に敬意を表す為に、彼女がおまえを指名するのを認めたんだ。」
ポールが溜息をついたので、ジェリーはある発見に気が付いた。
「レイン、おまえ、まさか今朝迄、女に関して言えば、童貞だったのか?」
「JJとのデートは愉しかったか?」
ポールの表情が固まった。そしてエレベーターのドアが開いた途端、ジェリーはポールに腕を掴まれ、引きずり出された。
「おい、俺は下迄降りるんだ!」
「いいから、ちょっと来い!」
ジェリーの目の前でポールはオフィスのドアを指紋で開き、部屋の中にジェリーを押し込んだ。そしてドアが閉じるなり、彼の襟首を掴んで尋ねた。
「俺が今日JJと一緒に居たことを、どうしておまえが知っているんだ?」
ジェリーは何故ポールが怒るのか理由がわからない。
「どうしてって・・・おまえがJJの『お誕生日ドーマー』だから・・・」
「だから、どうしておまえがそのしきたりを知っているんだ?」
「その手を離せ。そうすれば教えてやる。」
ポールは一拍呼吸をして、自身の気を静めた。そしてジェリーから手を離した。
ジェリーは、顔に似合わず乱暴なヤツだ、とぶつくさ言いながら、勝手に中央のテーブルの周囲にあった椅子の一つに座った。
ポールはドアを気にした。ダリルが戻って来ると拙い。
「早く言わないか! 俺は忙しいんだ。」
「デートしていたからな・・・わっ! 殴るなよ!」
ポールが拳を振り上げて見せたので、ジェリーは渋々語った。
「夕べ遅く、俺は中央研究所でケンウッド長官が月の会合で使う資料の製作を手伝わされたんだ。概ねはケンウッドが作成済みだから、後はコンピュータに入れて会合の出席者に見せる為の整理だ。同じ部屋でJJとゴーン副長官と、メイって言う女執政官が同じ様な作業をしていた。ケンウッドは部屋にいなかった。他にも仕事があるとかで。
休憩時間に、メイがJJに誕生日のプレゼントは何が良いか、って聞いたんだ。JJは、物は要らないから、Pちゃんとデートしたいって言った。すると、ゴーンが、『お誕生日ドーマーにレインを指名するのね』と言ったんで、俺がそれは何かと尋ねたら、びっくりするような話をしてくれた。」
「女執政官だけの風習みたいなものだ。誕生日に、好きなドーマーを指名してデートするんだ。そう言ったんだろ?」
「もっと教えてくれたぜ。指名されたドーマーは拒否出来ないんだってな。女は、怪我さえさせなければ、ドーマーを1日限定で好きに出来るそうだ。歌を歌わせても良いし、抱いても良いって・・・しかも、ドーマーは指名されたことを他に喋ってはいけないと言うルールがある・・・」
「だから・・・」
ポールはぶっきらぼうに言った。
「今日の出来事を俺に尋ねるな。」
しかし、ジェリーは止めなかった。
「おまえは初めて指名されたんだってな? おまえのことだから、既に数え切れない程選ばれていたと思ったが、そうじゃないとメイが言った。まず、おまえは人気者だから、独占しちゃならねぇと言う暗黙の了解が女達の間にあったんだとさ。それから、おまえが他人に触られるのを極端に嫌うので、女達は遠慮していたそうだ。
JJは特別だ。彼女は何か人類の未来に関する発見をしたそうだ。本人はわかっていない様だが。女達は彼女に敬意を表す為に、彼女がおまえを指名するのを認めたんだ。」
ポールが溜息をついたので、ジェリーはある発見に気が付いた。
「レイン、おまえ、まさか今朝迄、女に関して言えば、童貞だったのか?」