クリスチャン・ドーソン・ドーマーのオフィスに招かれていたポール・レイン・ドーマーが彼自身のオフィスに現れたのは11時近くになってからだった。
オフィスでは秘書らしくダリルが1人で仕事に励んでいた。今日はボスが抗原注射の効力切れ休暇だし、まだ1日が始まって間もないので報告書も申請書の類も届いていない。
ダリルは処理漏れがないかと過去のデータを洗っている最中だった。
部屋に入って来たポールに気が付くと、「休みだろ?」と声を掛けた。住居がすぐ近くだし、アパートに1人居ても暇だろうと思うが、休日なのだから、図書館とかジムで過ごして欲しい、と仕事の虫のパートナーにダリルはちょっと不満を覚えた。
ポールは、「ちょっと調べ物だ」と言って、執務机の端末を操作した。アパートのコンピュータでは仕事上のデータ全てが見られる訳ではない。秘密保持の順位が高くなればオフィスで調べるしかないのだ。
「チーフ・ドーソンから何か言われたのか?」
「うん・・・ちょっと・・・否、かなり気分の悪い話を聞いた。」
「気分が悪い?」
「FOKだ。」
「『クローンの友』と名乗る組織だな?」
「昨日、トロントのクローン収容施設を襲撃した。職員3名が重軽傷を負わされ、子供が9人、攫われた。」
「連中はクローンの解放を謳い文句にしていたが・・・」
「大嘘に決まっている。解放された子供がいたか? これまでのところ、連中が連れ去った子供達は1人も見つかっていない。」
「学生団体だろ? 大勢の子供を長期間隠しておけるだろうか?」
ポールはキーを数十回叩いて、どこかの交流サイトを開いた。
「この男が今年の春にリーダーになって以来、グループの雰囲気が変わった。」
オフィスでは秘書らしくダリルが1人で仕事に励んでいた。今日はボスが抗原注射の効力切れ休暇だし、まだ1日が始まって間もないので報告書も申請書の類も届いていない。
ダリルは処理漏れがないかと過去のデータを洗っている最中だった。
部屋に入って来たポールに気が付くと、「休みだろ?」と声を掛けた。住居がすぐ近くだし、アパートに1人居ても暇だろうと思うが、休日なのだから、図書館とかジムで過ごして欲しい、と仕事の虫のパートナーにダリルはちょっと不満を覚えた。
ポールは、「ちょっと調べ物だ」と言って、執務机の端末を操作した。アパートのコンピュータでは仕事上のデータ全てが見られる訳ではない。秘密保持の順位が高くなればオフィスで調べるしかないのだ。
「チーフ・ドーソンから何か言われたのか?」
「うん・・・ちょっと・・・否、かなり気分の悪い話を聞いた。」
「気分が悪い?」
「FOKだ。」
「『クローンの友』と名乗る組織だな?」
「昨日、トロントのクローン収容施設を襲撃した。職員3名が重軽傷を負わされ、子供が9人、攫われた。」
「連中はクローンの解放を謳い文句にしていたが・・・」
「大嘘に決まっている。解放された子供がいたか? これまでのところ、連中が連れ去った子供達は1人も見つかっていない。」
「学生団体だろ? 大勢の子供を長期間隠しておけるだろうか?」
ポールはキーを数十回叩いて、どこかの交流サイトを開いた。
「この男が今年の春にリーダーになって以来、グループの雰囲気が変わった。」