アメリア・ドッティ言うところの「ドームに囚われの身の王子様2人」は、フラネリー家の人々に別れを告げて車中の人となった。
帰りはダリルが運転した。第2ゲートで銃を返してもらい、森の中の道を走っている間、ポール・レイン・ドーマーはむっつり黙り込んでいた。ダリルはアメリアやハロルドと愉しい一時を過ごしたので、彼の沈黙がなおさら気になった。書斎で母親とどんな話をしたのだろう。書斎から出て来た時、ポールもアーシュラも普段通りに振る舞っていた。ポールは「有意義な情報をもらった」と言い、アーシュラも「フラネリー家への嫌疑は晴れた」と笑った。そしてポールはアメリアとも仲良く世間話をして、その場を上手く乗り切ったのだ。
「怒ってる?」
とダリルは声を掛けてみた。
「ずっと君に触れられるのを拒んだ理由が、アーシュラだったんだ。ラムゼイを誘い出す見返りに、君との面会を要求された。爺様を逃がしたくなかったので、私は焦ってしまい、承諾してしまった。そして、事後承諾の形で、ドームからも君を彼女に会わせる許可が出た。ただ、早い時期に君に伝えれば君が拒否するかも知れないと長官が危惧されて、秘密にするよう指図されていたんだ。」
ポールがまだ黙っているので、彼は一言付け加えた。
「ごめんよ。」
それでも沈黙が続くので、ダリルも流石にイラッときた。
「何か喋れよ。気になるだろうが!」
「何をだ?」
とポールが意地悪く言った。
「君の両親の居場所か?」
ダリルは思わず急ブレーキを踏んだ。タイヤが大きく軋んだ音を立てて、車が停まった。
「危ないじゃないか!」
とポールが怒鳴った。
「後ろに誰かが居たら、追突されているぞ。」
「すまない・・・だけど、君は私の両親の居場所を知っているのか?」
ポールが溜息をついた。
「18年前、君が脱走した時、親に会いに行ったんじゃないかと言う推測が出て、調査したんだ。現在もそこに住んでいるかどうか、俺の知ったことじゃない。会いたいのか?」
「否。」
即答だった。
「私の代わりの娘がいたんだろ? むこうの親は私の存在を知らない。会っても意味がない。」
「だろう? 俺にも意味がないんだ。何故俺を抱きしめて喜ぶのか、わからん。機密漏洩を阻止するために、触られないよう努力するのが精一杯だった。」
ポール・レイン・ドーマーは、ばりばりのドーマーだ。それでも母親や家族を傷つけないよう、努力したのだ。
「車を出せ、部下達が第1ゲートで待っている。」
「うん、」
「今夜は一緒に寝るだろ?」
「いいけど・・・」
「けど?」
「あのベッドは2人には狭くないか? せめてセミダブルに替えないと・・・」
「ああ、君はよく暴れるからな。」
「私が何時暴れた?」
「寝相の悪さを言っているんだよ。」
帰りはダリルが運転した。第2ゲートで銃を返してもらい、森の中の道を走っている間、ポール・レイン・ドーマーはむっつり黙り込んでいた。ダリルはアメリアやハロルドと愉しい一時を過ごしたので、彼の沈黙がなおさら気になった。書斎で母親とどんな話をしたのだろう。書斎から出て来た時、ポールもアーシュラも普段通りに振る舞っていた。ポールは「有意義な情報をもらった」と言い、アーシュラも「フラネリー家への嫌疑は晴れた」と笑った。そしてポールはアメリアとも仲良く世間話をして、その場を上手く乗り切ったのだ。
「怒ってる?」
とダリルは声を掛けてみた。
「ずっと君に触れられるのを拒んだ理由が、アーシュラだったんだ。ラムゼイを誘い出す見返りに、君との面会を要求された。爺様を逃がしたくなかったので、私は焦ってしまい、承諾してしまった。そして、事後承諾の形で、ドームからも君を彼女に会わせる許可が出た。ただ、早い時期に君に伝えれば君が拒否するかも知れないと長官が危惧されて、秘密にするよう指図されていたんだ。」
ポールがまだ黙っているので、彼は一言付け加えた。
「ごめんよ。」
それでも沈黙が続くので、ダリルも流石にイラッときた。
「何か喋れよ。気になるだろうが!」
「何をだ?」
とポールが意地悪く言った。
「君の両親の居場所か?」
ダリルは思わず急ブレーキを踏んだ。タイヤが大きく軋んだ音を立てて、車が停まった。
「危ないじゃないか!」
とポールが怒鳴った。
「後ろに誰かが居たら、追突されているぞ。」
「すまない・・・だけど、君は私の両親の居場所を知っているのか?」
ポールが溜息をついた。
「18年前、君が脱走した時、親に会いに行ったんじゃないかと言う推測が出て、調査したんだ。現在もそこに住んでいるかどうか、俺の知ったことじゃない。会いたいのか?」
「否。」
即答だった。
「私の代わりの娘がいたんだろ? むこうの親は私の存在を知らない。会っても意味がない。」
「だろう? 俺にも意味がないんだ。何故俺を抱きしめて喜ぶのか、わからん。機密漏洩を阻止するために、触られないよう努力するのが精一杯だった。」
ポール・レイン・ドーマーは、ばりばりのドーマーだ。それでも母親や家族を傷つけないよう、努力したのだ。
「車を出せ、部下達が第1ゲートで待っている。」
「うん、」
「今夜は一緒に寝るだろ?」
「いいけど・・・」
「けど?」
「あのベッドは2人には狭くないか? せめてセミダブルに替えないと・・・」
「ああ、君はよく暴れるからな。」
「私が何時暴れた?」
「寝相の悪さを言っているんだよ。」