2018年8月16日木曜日

4X’s 2 1 - 7

 レインは答えられなかった。ハイネが突っ込んだ。

「君はさっき『親』と言った。少年はセイヤーズの子供なのか?」
「町の住民達はそう思っています。」
「母親はいないのだな?」
「女っ気はありません。第1・・・」

 レインは吐き捨てるように言った。

「あんな貧しい家に女が住むとも思えません。」

 ケンウッドとハイネが互いの顔を見遣った。どちらともなく肩をすくめ合った。ケンウッドがレインに向き直った。

「女性は好きになった男が裕福だろうが貧しかろうが気にしないものなのだよ、レイン。」
「しかし・・・」
「確かに、女っ気がある場所には見えないね。」

 ケンウッドは再び局長を見た。

「母親がいないのに、どうして子供がいるのだろうね、ハイネ?」

 ハイネ局長は呟くように答えた。

「クローンでしょうな。」
「しかし・・・」

 レインは恋人が罪を犯したと思いたくなかった。脱走も罪だ。ドーマーはドームに逆らってはいけない。ドームに従うのがドーマーの義務であり、存在理由だ。そしてドームの許可が無いクローン製造は大罪だ。
 何かセイヤーズを弁護する言葉があれば・・・とレインが思考を巡らせようとした時、彼の端末に電話が着信した。彼が部下からの呼び出しに設定しているメロディだ。

 こんな時に誰だ?

 レインは着信拒否にしようと指を動かしかけた。するとハイネが言った。

「出なさい。許可する。」

 局長はそのメロディが局員からの連絡だと承知していた。レインはドームでは知らない者がいない有名人だが、彼自身の友人は少ない。レインの端末に電話を掛けてくるのは部下しかいない。
 レインは早口で礼を述べると通話ボタンを押した。

「レインだ。」
「チーフ、ベーリングの研究所がやられましたっ!」

 タンブルウィード支局に当番で訪問中の第4チームのリーダーが電話の向こうで叫んだ。レインは電話をスピーカーにした。

「ハイデッカー・ドーマー、もう少し詳しく言ってくれないか?」
「わかりました。1時間前の事ですが、ベーリングの研究所に武装した男10人ほどが車で乗り付け、銃で研究所の従業員やクリニックの患者を脅して中に押し入りました。監視していた支局の職員の報告では、彼等は女性2名を連れ出し、乗ってきた車に押し込んで走り去ったそうです。ベーリング側に数名負傷者が出ている模様・・・」

 聴きながらレインは上司を見た。ハイネは通話を聴きながら、会議テーブル上の映像を切り替え、中西部の航空地図を出した。北米南部班のこれ迄の報告でマーカーを付けていたメーカー達のアジトが方々に赤く表示されていた。ハイネはその中からベーリングの研究所を見つけると拡大表示した。オアシスの様に緑に囲まれた個人病院の体をしている建造物だ。
 レインが部下に尋ねた。

「襲撃者の正体はわかっているのか?」
「確認は取れていませんが、一番近い別のメーカーのアジトは・・・ラムゼイです。」

 レインは視野の端でケンウッド長官がギクリとして局長を見るのを目撃した。