ポール・レイン・ドーマーは、ドームの内外で多くの男達と握手して来た。殆どの者が、美しい彼と握手出来たことを感激して喜ぶのを見てきた。彼は何故彼等がそんなに感激するのか理解出来ないでいたが、今目の前で部下のジェラルド・ハイデッカー・ドーマーが局長ローガン・ハイネ・ドーマーに握手を求められ、感激するのを見て、当然だと思っている自分に驚いた。滅多に会えない人、会えても話しかけるのに気後れしてしまう程相手が上位にいる場合、向こうから握手を求めてくれたら、本当に舞い上がってしまうだろう。
ハイデッカーは話し合いで除け者にされることを素直に容認してしまい、感激したまま局長執務室を退室して行った。
局長は部下にどんな心理的影響を与えたのか、全く気がつかずに机の向こうの席に戻った。「さて」と彼はレインに声を掛けた。
「君は私が何を思いついたのか、察しがついたようだな?」
「局長の思いつきですか?」
レインはびっくりした。
「否・・・俺はただ、局長が俺に何か提案なさりたいことがあるので、ハイデッカーを帰らせたのだと思っただけです。」
ハイネが声を立てずに笑った。
「ハイデッカーには知られたくなくて、君だけに提案したい案を私が思いついたと?」
「違うのですか?」
「全く・・・君は接触テレパスを使わなくても人の心が読めるのだな。」
レインは頰が熱くなるのを感じた。
「4Xの捜索に、時間制限がないドーマーを使いたいとお考えなのでは?」
「うん。」
「南部班の中から『通過』を済ませた局員を集めましょう。」
「そんなに大勢は要らないだろう。」
「しかし、砂漠は広いです。」
「探すのは、クーガー・メンタル・クリニックとその周辺だけだろう。」
「街に逃げ込んだ可能性もあります。」
「君がそう考えるなら・・・」
現場を知らないハイネはあっさり譲った。
「だが、使うのは1名だけで良い。」
「1名ですか?」
レインは最も信頼が置ける『通過』経験者を頭に思い浮かべた。部屋兄弟で副官のクラウス・フォン・ワグナー・ドーマーしかいない。しかし、ワグナーにはチーム・リーダーとしての仕事もある。チーフの副官でチーム・リーダーで、しかも秘書を持たないレインの助手もしている彼は余りに多忙だ。他の部下を順番に思い出そうとしているレインを見て、ハイネがクックと笑った。
「君は重要な男を忘れているよ。」
「・・・と仰いますと?」
ローガン・ハイネ・ドーマーは真っ直ぐにポール・レイン・ドーマーを見つめて、その男の名を呼んだ。
「ダリル・セイヤーズ・ドーマーだ。」
ハイデッカーは話し合いで除け者にされることを素直に容認してしまい、感激したまま局長執務室を退室して行った。
局長は部下にどんな心理的影響を与えたのか、全く気がつかずに机の向こうの席に戻った。「さて」と彼はレインに声を掛けた。
「君は私が何を思いついたのか、察しがついたようだな?」
「局長の思いつきですか?」
レインはびっくりした。
「否・・・俺はただ、局長が俺に何か提案なさりたいことがあるので、ハイデッカーを帰らせたのだと思っただけです。」
ハイネが声を立てずに笑った。
「ハイデッカーには知られたくなくて、君だけに提案したい案を私が思いついたと?」
「違うのですか?」
「全く・・・君は接触テレパスを使わなくても人の心が読めるのだな。」
レインは頰が熱くなるのを感じた。
「4Xの捜索に、時間制限がないドーマーを使いたいとお考えなのでは?」
「うん。」
「南部班の中から『通過』を済ませた局員を集めましょう。」
「そんなに大勢は要らないだろう。」
「しかし、砂漠は広いです。」
「探すのは、クーガー・メンタル・クリニックとその周辺だけだろう。」
「街に逃げ込んだ可能性もあります。」
「君がそう考えるなら・・・」
現場を知らないハイネはあっさり譲った。
「だが、使うのは1名だけで良い。」
「1名ですか?」
レインは最も信頼が置ける『通過』経験者を頭に思い浮かべた。部屋兄弟で副官のクラウス・フォン・ワグナー・ドーマーしかいない。しかし、ワグナーにはチーム・リーダーとしての仕事もある。チーフの副官でチーム・リーダーで、しかも秘書を持たないレインの助手もしている彼は余りに多忙だ。他の部下を順番に思い出そうとしているレインを見て、ハイネがクックと笑った。
「君は重要な男を忘れているよ。」
「・・・と仰いますと?」
ローガン・ハイネ・ドーマーは真っ直ぐにポール・レイン・ドーマーを見つめて、その男の名を呼んだ。
「ダリル・セイヤーズ・ドーマーだ。」