2018年8月28日火曜日

4X’s 2 4 - 1

 ポール・レイン・ドーマーは1日でも早く石小屋の男の正体を確認しに行きたいのだろう、大人しく静養し、内勤に励んでいた。体内の薬品が抜ける速度は変わらないとヤマザキ・ケンタロウは言ったが、レインは真面目に勤務すれば恋人に必ず会えると思っているのだ。

「健気だわ。」

とアイダ・サヤカがその話をヤマザキから聞いて感想を述べた。ヤマザキは、

「彼が何時外に出かけられるか、それは局長次第だよ。」

と言った。

「医療区が足止めできるのはせいぜい4日だからね。ドーマー達には6日と言ってあるけど。」
「無理させないでね。」

とアイダは母親の気持ちで言った。

「ダリル坊やに会えてもポールが体を壊していたら、元も子もないわ。」
「レインは雑菌を怖がるくせに、自身の体力低下は気にしないからなぁ。」

 ヤマザキはアイダが提出した出産間近の女性達の名簿に目を通した。心臓に問題を抱えている女性が1人いた。アイダは彼女の備考欄に「無重力分娩を推奨」とコメントしている。

「無重力分娩を希望しているのは、本人かい?」
「いいえ、私達スタッフの方ですよ。地球人が開発した分娩方法ですけど、現代の地球人は成層圏まで出かけられないでしょう、だから地球上ではこの方法は廃れてしまって、知っている人が少ないの。」
「本人には説明した?」
「先にこちらの準備態勢を整えてから、奨めようと思っているの。絶対に安心出来ると思わせないと、向こうは承知しないもの。」
「そうだな・・・うん、こっちは何時でも対処出来るよう、クック博士やチー博士に声を掛けておく。無重力室は重力障害予防に使うので、何時でも空けられるよ。」
「有り難う。早速シンディに伝えておくわ。今夜から彼女の担当になるの。私はサポート待機。」
「アパートに帰るのかい?」
「そうしたいけれど、問題を抱えている妊婦がいるから、出産管理区の仮眠室よ。」