2018年8月19日日曜日

4X’s 2 2 - 3

 ポール・レイン・ドーマーは直ぐにでも現地へ飛びたかった。完璧なクローンを製造する謎のメーカー、ラムゼイと女性を作る方程式を開発したと豪語するメーカー、ベーリングの研究所を調査したかった。警察に荒らされる前に、資料を押収したかった。人類の未来を変える研究をしていたかも知れない2大メーカーが激突したのだ。何もない筈はない。
 しかし彼は前日抗原注射効力切れ休暇を取っていた。つまり、まだ4、5日はドームの外へ出かける許可が出ない。注射なしでも人間は外の世界で活動できるが、レインはまだ大気中に残る昔の放射線や細菌が恐ろしかった。紫外線も無視出来ない。

 ちょっとした勇気だ。クラウスやリュック・ニュカネンは平気じゃないか。ダリルだってもう18年注射なしで生活している・・・

 だが、彼は躊躇った。タンブルウィードの街へ行けば土埃まみれになる。彼は毎回それが嫌だった。
 ハイネ局長がそんな彼の横顔を見て、囁いた。

「ヤマザキ博士に私から薬を変えて注射してもらえるよう、頼んでみようか?」

 レインは驚いて局長を振り返った。

「薬を変える、と仰いましたか?」
「うん。少し軽い薬品がある。連続使用による体の負担を軽減するには、薬品の成分を一部変える必要があるのだ。」

 元薬剤師ハイネは端末を出して、何か調べ物をした。薬品の名前を調べたのだろう。

「直ぐに現場調査したいのだろう、レイン。」
「はいっ!」
「女性達の生死の確認とラムゼイがベーリングを襲った本当の目的を私も知りたい。」

 ハイネはヤマザキ・ケンタロウ医療区長に電話をかけた。相手が早朝に勤務しているのか、まだ寝ているのか、そんなことは調べずに御構い無しだ。

「ああ、ドクター、おはようございます。おや、まだお休みでしたか? それは失礼しました。いえね、ちょっと急ぎの用事が出来まして・・・」