ラムゼイなるメーカーが、「死体クローン事件」の中心人物サタジット・ラムジーであろうことは、ペルラ・ドーマーも知っていた。ラムゼイの存在が確認され、実在の人間だと判明した時に、ハイネから聞かされたのだ。
ペルラ・ドーマーは50年前、「死体クローン事件」の捜査中、ラムジーの隠し研究所を発見して1人で踏み込み、罠に落ちて危うく落命しかけた。その時、背中に負った大火傷の後遺症で、今でも背中にチクチクと不快な感触が残るのだ。だが・・・
「私は最近ラムジーに対する恨みが消えてしまっていることに気がつきました。」
「恨みが消えた?」
「ええ・・・火傷のせいで外勤務から内勤に異動を余儀なくされましたが、お陰で局長とお近づきになれた上に秘書と言う遺伝子管理局では最高の名誉の職に就けました。そしてゴードン・ヘイワードとも内勤になってから交際を始め、大切な思い出を作ることが出来ました。
歳を取るに従って、運が悪かったと思ったことが幸運に変化して行くのがわかるのです。
私はラムジーに負わされた怪我のお陰で、局長とお友達になれましたし、ケンウッド長官、ヤマザキ博士、パーシバル博士とも仲良くしていただいて、本当に幸せ者です。ですが、ラムジーと言う男はどんな人生を送っているのでしょうね。」
ペルラ・ドーマーは遠くを見る目付きになった。
「彼が死体からクローンを作る禁断の研究に走ったのは、最愛の息子を失ったからでしょう? メーカーに身を落としてしまったのも、まだクローンの研究を続けているからです。あの男は息子を取り戻そうとまだ奮闘しているのですよ、きっと。哀れです。」
彼等は中央研究所のロビーに入った。ペルラ・ドーマーはそこから『黄昏の家』へ通ずる地下道に降りる。現役の遺伝子管理局長は足を踏み入れてはならない場所だ。ハイネはまた何か動きがあれば教えるよ、と彼に言った。ペルラ・ドーマーは、内心、ラムジーも歳だから放っておいてやれば、と呟いたが、流石に声にすることはなかった。
ペルラ・ドーマーは50年前、「死体クローン事件」の捜査中、ラムジーの隠し研究所を発見して1人で踏み込み、罠に落ちて危うく落命しかけた。その時、背中に負った大火傷の後遺症で、今でも背中にチクチクと不快な感触が残るのだ。だが・・・
「私は最近ラムジーに対する恨みが消えてしまっていることに気がつきました。」
「恨みが消えた?」
「ええ・・・火傷のせいで外勤務から内勤に異動を余儀なくされましたが、お陰で局長とお近づきになれた上に秘書と言う遺伝子管理局では最高の名誉の職に就けました。そしてゴードン・ヘイワードとも内勤になってから交際を始め、大切な思い出を作ることが出来ました。
歳を取るに従って、運が悪かったと思ったことが幸運に変化して行くのがわかるのです。
私はラムジーに負わされた怪我のお陰で、局長とお友達になれましたし、ケンウッド長官、ヤマザキ博士、パーシバル博士とも仲良くしていただいて、本当に幸せ者です。ですが、ラムジーと言う男はどんな人生を送っているのでしょうね。」
ペルラ・ドーマーは遠くを見る目付きになった。
「彼が死体からクローンを作る禁断の研究に走ったのは、最愛の息子を失ったからでしょう? メーカーに身を落としてしまったのも、まだクローンの研究を続けているからです。あの男は息子を取り戻そうとまだ奮闘しているのですよ、きっと。哀れです。」
彼等は中央研究所のロビーに入った。ペルラ・ドーマーはそこから『黄昏の家』へ通ずる地下道に降りる。現役の遺伝子管理局長は足を踏み入れてはならない場所だ。ハイネはまた何か動きがあれば教えるよ、と彼に言った。ペルラ・ドーマーは、内心、ラムジーも歳だから放っておいてやれば、と呟いたが、流石に声にすることはなかった。