2018年8月16日木曜日

4X’s 2 1 - 8

 ポール・レイン・ドーマーは北米南部班第4チーム・リーダー、ジェラルド・ハイデッカー・ドーマーに指示を出した。

「襲撃者の正体を特定し、拉致された女性達が何者なのか調べろ。」

 救出せよとは言わなかった。遺伝子管理局は警察ではない。拉致された民間人がいれば警察に通報するだけだ。だが襲撃者と被襲撃者がメーカーなら、話は別だ。拉致された人間もメーカーの一味と考えられるからだ。それに襲われたベーリングは、4Xと呼ばれる「女性を作る方程式」を開発したと言われている。拉致された女性達はその方程式に関わっているのかも知れない。
 ハイデッカーが指示に了解した旨を告げると、レインは事態に進展があれば随時報告せよと指示して通話を終えた。
 レインと部下の会話が終わると、ケンウッド長官がハイネ局長に尋ねた。

「ラムゼイと言うメーカーは、例の男だと思うかね?」
「可能性は高いです。」

とハイネが頷いた。

「しかし、生きているとなると、かなりの爺さんです。私とそう変わらんでしょう。」

 見た目の姿は40代後半のハイネがそう言うので、もうすぐ40歳になるレインはどう反応して良いか判断に迷った。そして長官と局長が話題にしている「例の男」とは誰の事なのか、質問すべきだろうかと考えた。
 セイヤーズの話をしている途中だったと彼が思い出した時、また端末に電話が着信した。チラリと発信者を見た彼は眉を顰めた。

「局長、またハイデッカーです。」

 彼は上司の返事を待たずに電話に出た。

「何かあったのか、ハイデッカー?」
「チーフ、ベーリングが手下を総動員して襲撃者と拉致された女性達の追跡を始めました。武装しているので、反撃して女性を奪還する腹の様です。」

 スピーカーでそれを聞いたケンウッドが不安気にハイネとレインを見比べた。

「メーカー同士の抗争かね?」
「その流れになりそうです。」
「遺伝子管理局を巻き込ませてはいかんぞ。」
「勿論、部下は遠ざけておきます。」

 レインが保障した。裏で情報操作してメーカー同士を闘わせ、共倒れさせるのがレインの戦術だ。絶対に自分達の手は汚さない。部下に危険な事はさせない。
 ハイネは別の事を気にした。

「4Xの奪い合いだな?」
「恐らく・・・」
「女性を人質にして方程式を聞き出すつもりなのか?」
「或いは、拉致された女性が方程式を作ったのかも・・・」

 ケンウッドは拉致された女性が2人だったことを思い出した。1人はドームで生まれたマルセル・ベーリング、トリスタン・ベーリングの妻だ。もう1人は・・・?
 地球上の女性は1人残らずドームのマザーコンピュータに登録されている。されていなければならない。女性はドームの中でしか生まれないのだから。もし登録されていない女性がいれば、それは密入星したコロニー人か、クローンと言うことになるが、女性クローンを製造出来るのはドームだけだ。マルセル・ベーリングと共に拉致された女性は何者なのか?
 レインはハイデッカーに引き続きメーカー達の動きを距離をとって見張る様に指示して通話を終えた。

「セイヤーズはこのメーカー同士の抗争には無関係なのだろうな?」

とハイネがレインに確認した。レインは無関係ですと断言した。

「セイヤーズは山に引き篭もっています。我々に発見される事を恐れて隠れているのです。彼が元遺伝子管理局の局員だとメーカーにバレたら子供の生命が危険に曝されます。彼自身も危ないでしょう。ですから、彼はメーカーと接触を避けている筈です。」
「では、彼の子供は誰が作ったのだ?」
「それは・・・」

 返事に窮したレインに、上司達はそれ以上突っ込まなかった。
 ハイネが指示を与えた。

「先ずはメーカー同士の争いを監視して、どんな決着になるのか見届けよ。そして可能ならば4Xの具体的な情報を回収するのだ。」
「了解しました。」
「この件が落ち着く迄、セイヤーズは監視するに留めておく。但し、山から移動する気配を見せたら、直ちに身柄を確保せよ。」
「了解しました!」

 レインはやっと逃げた恋人に一歩近づけた思いがした。