2018年8月25日土曜日

4X’s 2 3 - 5

 ローガン・ハイネ・ドーマーは決して堅物ではないし、ユーモアのセンスも十分持っている。たまにその感覚が古くて、若者にはダダ滑りになることもあるが・・・。
 レインは笑うべきなのか、真面目に受け取るべきなのか、一瞬悩んだ。彼がすぐに反応しなかったので、ハイネが説明を追加した。

「彼は18年間外で暮らしているのだから、『通過』は不要の体になっているだろう。」
「しかし・・・」

 レインはやっと局長が本気で言ったのだと理解した。

「まだ彼だと確認した訳ではありませんし・・・」

 するとハイネは何をグズグズ言っている、と言いたげな顔をした。

「君が自分で行って確認して来い。会って彼だと確認したら、その場で任務を命じて働かせろ。」

 レインは何も言い返せなかった。ローガン・ハイネが具体的に何をどうせよと命令するのは初めてだ。少なくとも、彼は初めて直接命令を受けた。
 レインは背後を振り返り、秘書が2人共帰宅していることを知った。これは、間違いなく極秘指令だ。
 もし山の中の石造りの家に住んでいる男が、ドームが探している男でなければ、それっきり忘れれば良い。レインの勇み足だと言われることはないし、誤認だと思われることもない。
 もし男が本物のダリル・セイヤーズで、レインに見つかったと悟って逃亡してしまったら・・・レインの失敗は局長しか知らない。或いは、レインは人違いだったと報告して済ませることだって出来る。
 セイヤーズが逃げないで、しかし命令を拒否すれば、レインは彼を逮捕すれば良い。或いは子供を捕まえて言うことを聞かせるか?
 何れにせよ、ハイネ局長は極秘任務にすることで、万が一の失敗に備えてレインに逃げ道をこしらえてくれたのだ。

「もしセイヤーズが少女を発見したら、すぐに捕まえ・・・いえ、保護します。その前に・・・」

 レインは言った。

「セイヤーズを働かせる条件を考えておくべきだと思いますが?」
「あの男は子供と暮らしているのだったな?」
「はい。」
「子供は遺伝子管理局に登録されていない違法出生児だ。」
「そうです。」
「もうすぐ18歳になるか?」
「その筈です。セイヤーズが逃げて1年程で生まれているのであれば・・・」
「それ迄に正規登録の子供として証明書を発行してやると言うのはどうだ?」

 ハイネは思いつくままに言った。

「セイヤーズは証明書偽造の手順がわかるだろうが、作る道具を持っているだろうか? 運転免許証や、ID、それに端末も持っていないのではないか? 普通に人並みの生活に必要な証明書類を、君の権限で作ってやると言う条件を提示してはどうか?」

 ああ、とレインは納得した。

「それは遺伝子管理局のチーフなら当然出来そうなことですね!」

 ハイネが頷いた。

「具体的なことは君の裁量に任せる。少女を確保したら、セイヤーズも逮捕せよ。」
「はい。」

 レインは何だかすごく嬉しかった。