「腹立たしいことだな・・・」
ケンウッドは端末をしまった。スピーカーにしておいたので、ゴーンとハイネにも聞こえた筈だ。ゴーンは黙って首を振っていた。彼女の養子クロエル・ドーマーは父親が不明のアフリカ系の血を引く子供だ。それでもゴーンは敢えて彼を非公式ではあるが養子にした。肌の色も血筋も関係ない、可愛らしかったからだ。ポーレット・ゴダートの両親と夫の父親の言い分がどうにも納得出来ない。可能なら、今彼等の元へ言って説教してやりたい。しかし、地球人の生活に干渉することを地球人類復活委員会は認めていない。結婚や出産と言う重大事項を任されている上に、信仰や信念まで干渉してはコロニーからの侵略と受けとられかねないからだ。
ハイネは我関せずと言う顔だ。毎日同じような事例を扱っているので、ゴダートの件が特別とは思わないのだろう。いちいち気にしていたら、遺伝子管理の業務が出来なくなる。それに子供を養子に出すか出さないか、最終的に決定権を持つのはゴダート自身なのだ。
それより、ハイネはケンウッドがポール・レイン・ドーマーを朝食会に送り込んだ目的の成果を報告したかったので、長官の顔を見つめた。
ケンウッドが彼の視線に気が付いた。
「何かね、局長?」
「レインがドッティを探った結果です。」
レインは殊勝にも合コンは「仕事」と割り切っていた。ドーム長官公認となれば、幹部が彼に何かを期待していた、と解釈した。だから彼は朝食会が解散になった後、セイヤーズとゴールドスミスと別れてまっすぐ遺伝子管理局本部に行き、自身のオフィスで報告書を書いて局長に送った。
ーーアメリア・ドッティは純粋に友情の証に朝食会を企画しました。彼女にドーム事業への妨害や詮索の意図はありませんでした。
ドッティはレインが従兄弟だと言う知識もなかったのだ。あればきっとレインにもっと接近を試みただろう。しかし、彼女はレインをイケメンの遺伝子管理局員としか見ていなかった。セイヤーズとどっちが男前かな、と思っただけだった。
ケンウッドはレインの短い報告書を読んで、拍子抜けした顔をした。
「これだけ?」
「これだけです。」
「短いな・・・」
「レインの報告書はいつもこんなものです。」
レインは本当に重要だと思うことは、局長に直接面会して口頭で報告する。おかしなことに、同じことをレインと正反対の性格のクロエル・ドーマーもするのだが、ゴーンは知らなかった。
「やはりお嬢様は純粋なのかな。」
とケンウッドは呟き、出産管理区の朝食会の件は彼の中ではそれっきりになった。
ケンウッドは端末をしまった。スピーカーにしておいたので、ゴーンとハイネにも聞こえた筈だ。ゴーンは黙って首を振っていた。彼女の養子クロエル・ドーマーは父親が不明のアフリカ系の血を引く子供だ。それでもゴーンは敢えて彼を非公式ではあるが養子にした。肌の色も血筋も関係ない、可愛らしかったからだ。ポーレット・ゴダートの両親と夫の父親の言い分がどうにも納得出来ない。可能なら、今彼等の元へ言って説教してやりたい。しかし、地球人の生活に干渉することを地球人類復活委員会は認めていない。結婚や出産と言う重大事項を任されている上に、信仰や信念まで干渉してはコロニーからの侵略と受けとられかねないからだ。
ハイネは我関せずと言う顔だ。毎日同じような事例を扱っているので、ゴダートの件が特別とは思わないのだろう。いちいち気にしていたら、遺伝子管理の業務が出来なくなる。それに子供を養子に出すか出さないか、最終的に決定権を持つのはゴダート自身なのだ。
それより、ハイネはケンウッドがポール・レイン・ドーマーを朝食会に送り込んだ目的の成果を報告したかったので、長官の顔を見つめた。
ケンウッドが彼の視線に気が付いた。
「何かね、局長?」
「レインがドッティを探った結果です。」
レインは殊勝にも合コンは「仕事」と割り切っていた。ドーム長官公認となれば、幹部が彼に何かを期待していた、と解釈した。だから彼は朝食会が解散になった後、セイヤーズとゴールドスミスと別れてまっすぐ遺伝子管理局本部に行き、自身のオフィスで報告書を書いて局長に送った。
ーーアメリア・ドッティは純粋に友情の証に朝食会を企画しました。彼女にドーム事業への妨害や詮索の意図はありませんでした。
ドッティはレインが従兄弟だと言う知識もなかったのだ。あればきっとレインにもっと接近を試みただろう。しかし、彼女はレインをイケメンの遺伝子管理局員としか見ていなかった。セイヤーズとどっちが男前かな、と思っただけだった。
ケンウッドはレインの短い報告書を読んで、拍子抜けした顔をした。
「これだけ?」
「これだけです。」
「短いな・・・」
「レインの報告書はいつもこんなものです。」
レインは本当に重要だと思うことは、局長に直接面会して口頭で報告する。おかしなことに、同じことをレインと正反対の性格のクロエル・ドーマーもするのだが、ゴーンは知らなかった。
「やはりお嬢様は純粋なのかな。」
とケンウッドは呟き、出産管理区の朝食会の件は彼の中ではそれっきりになった。