「呼び方は『お父様』で良いんじゃないか?」
とヤマザキが言った。
「但し、キーラ博士だけでなく、出産管理区の執政官全員に呼ばせるんだよ。遺伝子管理局長を指す隠語として定着させちゃえば、問題ない。」
「誰が定着させるんだ?」
「僕がキーラにそれとなく勧めておくさ。」
するとハイネが質問した。
「この中で、父親になっている方はいらっしゃいますか?」
ケンウッドは思わず首を横に振った。パーシバルも身に覚えがない。ヤマザキも独身で交際している女性はいるが、子供はいなかった。
「なんだ、この4人の中で父親なのは、父親になってはいけないドーマーだけなんだ。」
パーシバルのぼやきに、残りの3人は思わず笑った。
ケンウッドが時計を見た。
「そろそろ研究室に戻るよ。まだ報告書の作成途中だったんだ。」
「それは悪かった・・・」
とヤマザキが悪びれた様子もなく口先だけで謝った。ハイネもアパートに帰って寝ると言ったので、解散となった。
アパートに向かって歩くハイネとヤマザキと森の出口で別れ、ケンウッドとパーシバルは中央研究所に向かった。
パーシバルが呟いた。
「 ハイネは長年胸の内に秘めていたものを放出したので、かなり晴れやかな表情になった様だな。」
「彼はそれとなく私達にキーラの正体をほのめかしていたよ。隠しきれないでぽろりと出したのか、それとも私達に謎を解いて見ろと挑戦していたのか・・・」
するとパーシバルはケンウッドに尋ねた。
「まさか15代目が君に教えた内緒話とは、彼女のことじゃないだろうな?」
「彼女のことはほんの一端さ。15代目が私に話してくれたのは、昔の執政官達がハイネを可愛がり過ぎた挙げ句、彼の心を傷つけたことだ。コロニー人の驕りだ。善意や愛情のつもりで地球人を苦しめていることを気づけ、と言う忠告だった。」
「失恋のことだけじゃないのか?」
「さっきの失恋の話は、ハイネの側からの視点だけだったろ? 15代目は言ったんだ、マーサ・セドウィックは、他の女性執政官達から密告されたと。」
「密告?」
「月の委員会に、特定のドーマーと深い仲になっていると通報されたんだ。マーサは自分の意志で地球を去ったんじゃない、召喚されたんだよ。だが、月での諮問で妊娠を隠し通したのだろう。もし委員会に知られたら、赤ん坊を取り上げられる恐れがあったから。」
「もしや、その密告者が現在執行部にいるとか?」
「シュウ副委員長もその1人だそうだ。」
「ああ・・・それでサンテシマの弾劾会議の時、キーラが嫌な目つきで副委員長を睨み付けていたのか・・・」
「他にもいろいろあったが・・・」
ケンウッドは空を見上げた。中空に月が浮かんでいた。
「あまり語ると、君が月で生活していくのに、嫌気が差すだろうし・・・」
「うん・・・聞かないでおくよ。有り難う。」
パーシバルは微笑んだ。
「ところで、僕は最近、女性にも興味が出て来たんだが、それは彼女が僕のお気に入りのドーマーに似ているからかなぁ?」
とヤマザキが言った。
「但し、キーラ博士だけでなく、出産管理区の執政官全員に呼ばせるんだよ。遺伝子管理局長を指す隠語として定着させちゃえば、問題ない。」
「誰が定着させるんだ?」
「僕がキーラにそれとなく勧めておくさ。」
するとハイネが質問した。
「この中で、父親になっている方はいらっしゃいますか?」
ケンウッドは思わず首を横に振った。パーシバルも身に覚えがない。ヤマザキも独身で交際している女性はいるが、子供はいなかった。
「なんだ、この4人の中で父親なのは、父親になってはいけないドーマーだけなんだ。」
パーシバルのぼやきに、残りの3人は思わず笑った。
ケンウッドが時計を見た。
「そろそろ研究室に戻るよ。まだ報告書の作成途中だったんだ。」
「それは悪かった・・・」
とヤマザキが悪びれた様子もなく口先だけで謝った。ハイネもアパートに帰って寝ると言ったので、解散となった。
アパートに向かって歩くハイネとヤマザキと森の出口で別れ、ケンウッドとパーシバルは中央研究所に向かった。
パーシバルが呟いた。
「 ハイネは長年胸の内に秘めていたものを放出したので、かなり晴れやかな表情になった様だな。」
「彼はそれとなく私達にキーラの正体をほのめかしていたよ。隠しきれないでぽろりと出したのか、それとも私達に謎を解いて見ろと挑戦していたのか・・・」
するとパーシバルはケンウッドに尋ねた。
「まさか15代目が君に教えた内緒話とは、彼女のことじゃないだろうな?」
「彼女のことはほんの一端さ。15代目が私に話してくれたのは、昔の執政官達がハイネを可愛がり過ぎた挙げ句、彼の心を傷つけたことだ。コロニー人の驕りだ。善意や愛情のつもりで地球人を苦しめていることを気づけ、と言う忠告だった。」
「失恋のことだけじゃないのか?」
「さっきの失恋の話は、ハイネの側からの視点だけだったろ? 15代目は言ったんだ、マーサ・セドウィックは、他の女性執政官達から密告されたと。」
「密告?」
「月の委員会に、特定のドーマーと深い仲になっていると通報されたんだ。マーサは自分の意志で地球を去ったんじゃない、召喚されたんだよ。だが、月での諮問で妊娠を隠し通したのだろう。もし委員会に知られたら、赤ん坊を取り上げられる恐れがあったから。」
「もしや、その密告者が現在執行部にいるとか?」
「シュウ副委員長もその1人だそうだ。」
「ああ・・・それでサンテシマの弾劾会議の時、キーラが嫌な目つきで副委員長を睨み付けていたのか・・・」
「他にもいろいろあったが・・・」
ケンウッドは空を見上げた。中空に月が浮かんでいた。
「あまり語ると、君が月で生活していくのに、嫌気が差すだろうし・・・」
「うん・・・聞かないでおくよ。有り難う。」
パーシバルは微笑んだ。
「ところで、僕は最近、女性にも興味が出て来たんだが、それは彼女が僕のお気に入りのドーマーに似ているからかなぁ?」