エイブラハム・ワッツ・ドーマーからロビン・コスビー・ドーマーを紹介された時、ケンウッドは次期ドーム維持班総代表は狐に似ているなぁと感じた。勿論、彼は生きた本物の狐をその目で見たことがなかったのだが。
ドーム副長官と言う職が行う業務は、ドーマー達の健康管理とドーマー達が要求してくる予算の調整だ。ワッツとは普通の執政官時代は全く接点がなかったのだが、副長官になると殆ど毎日端末で話をしてきた。それが若い(と言っても60歳近いが)コスビーに代わるのだ。
ケンウッドはコスビーの人となりをまだよく知らないので、緊張を覚えた。
リプリー長官も同じだろう。長官の仕事は執政官の管理とドーム全体の施設維持の予算調整だ。彼もワッツと毎日予算を巡って鬩ぎ合いをしてきた。闘う相手が交代するのだ。コスビーは彼の「要注意人物」リストになかったのだろう、かなり注意深く相手を観察していた。
立ち会いのハイネ遺伝子管理局長は暢気そうに座って会見を眺めている。ちょっと小憎たらしい、とケンウッドは思った。遺伝子管理局はドーム維持班の管轄ではないので、コスビーが早速リプリー長官相手にドーム壁の補修費用の話を始めても、局長は我関せずの顔をしている。
ケンウッドはつい皮肉っぽく話しかけた。
「今日は機嫌が良さそうだね、ハイネ。」
局長が彼を見た。
「そう見えますか?」
「少なくとも怒っているとは思えないな。」
するとワッツが小声でちゃちゃを入れた。
「朝っぱらから美女と飯を食ったからでしょう。」
ハイネがケンウッドからワッツに視線を移した。
「もう噂が拡散しているのか?」
「ドーム中に知れ渡っているさ。」
ハイネは先手を打ってケンウッドに言い訳した。
「セドウィック博士ですよ。旅行中パーシバル博士に無理をさせるなと注意しただけです。」
ケンウッドは微かな微笑みを浮かべて頷いて見せた。ハイネが友人としてパーシバルを気遣ったのか、それとも娘が男性と旅行することを心配したのか、彼には判断出来なかった。
リプリーがコスビーから解放された。コスビー・ドーマーは初仕事として要求通りの予算案を認めさせたのだ。長官は明日の執政官幹部会議でそれを承認させなければならない。もし反対されたら、彼はドーマーと執政官の板挟みになってしまう。
ケンウッドは長官に強力な武器を持たせることにした。万が一長官が会議で執政官幹部達に言い負かされたら、維持班建築班の予算が通らない。だから、ケンウッドは遺伝子管理局長に尋ねた。
「局長、次期維持班総代表の予算案は妥当かね?」
ハイネは彼流の言い方で承認した。
「否定する要因はありません。」
するとワッツ・ドーマーが立ち上がった。
「これでロビン・コスビー・ドーマーが維持班総代表として働ける人間であると証明出来ました。さて、皆さん、これから昼食をご一緒しませんか?」
ドーム副長官と言う職が行う業務は、ドーマー達の健康管理とドーマー達が要求してくる予算の調整だ。ワッツとは普通の執政官時代は全く接点がなかったのだが、副長官になると殆ど毎日端末で話をしてきた。それが若い(と言っても60歳近いが)コスビーに代わるのだ。
ケンウッドはコスビーの人となりをまだよく知らないので、緊張を覚えた。
リプリー長官も同じだろう。長官の仕事は執政官の管理とドーム全体の施設維持の予算調整だ。彼もワッツと毎日予算を巡って鬩ぎ合いをしてきた。闘う相手が交代するのだ。コスビーは彼の「要注意人物」リストになかったのだろう、かなり注意深く相手を観察していた。
立ち会いのハイネ遺伝子管理局長は暢気そうに座って会見を眺めている。ちょっと小憎たらしい、とケンウッドは思った。遺伝子管理局はドーム維持班の管轄ではないので、コスビーが早速リプリー長官相手にドーム壁の補修費用の話を始めても、局長は我関せずの顔をしている。
ケンウッドはつい皮肉っぽく話しかけた。
「今日は機嫌が良さそうだね、ハイネ。」
局長が彼を見た。
「そう見えますか?」
「少なくとも怒っているとは思えないな。」
するとワッツが小声でちゃちゃを入れた。
「朝っぱらから美女と飯を食ったからでしょう。」
ハイネがケンウッドからワッツに視線を移した。
「もう噂が拡散しているのか?」
「ドーム中に知れ渡っているさ。」
ハイネは先手を打ってケンウッドに言い訳した。
「セドウィック博士ですよ。旅行中パーシバル博士に無理をさせるなと注意しただけです。」
ケンウッドは微かな微笑みを浮かべて頷いて見せた。ハイネが友人としてパーシバルを気遣ったのか、それとも娘が男性と旅行することを心配したのか、彼には判断出来なかった。
リプリーがコスビーから解放された。コスビー・ドーマーは初仕事として要求通りの予算案を認めさせたのだ。長官は明日の執政官幹部会議でそれを承認させなければならない。もし反対されたら、彼はドーマーと執政官の板挟みになってしまう。
ケンウッドは長官に強力な武器を持たせることにした。万が一長官が会議で執政官幹部達に言い負かされたら、維持班建築班の予算が通らない。だから、ケンウッドは遺伝子管理局長に尋ねた。
「局長、次期維持班総代表の予算案は妥当かね?」
ハイネは彼流の言い方で承認した。
「否定する要因はありません。」
するとワッツ・ドーマーが立ち上がった。
「これでロビン・コスビー・ドーマーが維持班総代表として働ける人間であると証明出来ました。さて、皆さん、これから昼食をご一緒しませんか?」