2019年4月27日土曜日

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 ケンウッドとターナーがシェイを市内の公園に連れて行き、暫しの休日を楽しんでいる頃、ドームでは遺伝子管理局が客を迎えていた。西ユーラシア遺伝子管理局長ミヒャエル・マリノフスキー・ドーマーだった。年齢はハイネ局長と同じ100歳。進化型1級遺伝子の保有者だ。ハイネと違って若い頃から自由にドームを出入りしていたので、外の世界は十分知っている。彼の遺伝子は飢餓に備えて細胞に栄養を溜め込むと言うものだ。だからこの男は若い頃からでっぷりと太っている。太る必要がないのに細胞が脂肪分を溜め込むのだ。食事制限をすると悪循環になるので、西ユーラシア・ドームの執政官達は彼の健康維持に常に神経を尖らせている。この日のアメリカ出張にも栄養士の付き添いがいた。
 丸い顔、真っ白な髪、これは年齢によって白髪になったので、ハイネの白髪が生まれつきなのとは違う。優しい光を放つ青い目は細く、いつも笑っているように見える。
 ハイネはこの滅多に会えない友人が大好きで、仕事の話を早々に終わらせ、雑談で時間を過ごした。それから、ふとあることを思い出した。

「そうだ、ミーシャ、ダリル・セイヤーズ・ドーマー脱走の折には迷惑をかけたな。」
「その話はもう過去に終わったじゃないか。気にするなよ。」
「否、私ではなく、セイヤーズ自身が君に会って謝罪したいと言っているのだ。」

 ハイネは秘書の方へ、誰にともなく声をかけた。

「セイヤーズをここへ呼んでくれないか。」

 ネピア・ドーマーはセイヤーズを好ましく思っていなかったが、仕事だ、素早く反応した。直ぐにセイヤーズの端末にメッセを送った。
 マリノフスキーがハイネに尋ねた。

「セイヤーズは外で子供を作ったそうだね。」
「うん。クローンだが、男性2人の遺伝子を掛け合わせているんだ。」
「ラムジー博士ならやりそうな暴挙だな。古代人も蘇らせていたし。」
「パーカーにも会うかね?」
「否、止めておこう。普通にここの職員として働いているのだろう? 特別な存在扱いはよくないよ。」

 生まれてから特別扱いされてきた2人の男は苦笑し合った。