ケンウッドが一般食堂でテーブルに着いて間も無くハイネが現れた。2人は周囲の人々に事件の話を聞かれたくなかったので、さりげない日常会話をした。どんな辛い話題も誤魔化せる話術が身についた己に、ケンウッドは内心うんざりした。もう科学者ではなく政治家だな、と自分で思った。
半分まで食べた頃に、ヤマザキ医療区長がクロエル・ドーマーと共にやって来た。普通に同席の許可を求め、着席したクロエルは小声で報告した。
「過去に起きたFOKの犯罪と同じ扱いをしてもらうことを、警察に確約させました。」
ケンウッドとハイネは頷いた。FOKがクローンの子供を人体実験に用いる目的で誘拐して殺害した一連の事件と同じ扱いでマスコミに発表するのだ。実際、ドン・マコーリーはそのつもりでライサンダーの家族を襲ったのだから。
「ゴダートの両親には連絡が着いたのか?」
とケンウッドは被害者遺族の対応を心配した。クロエルは、警察に任せています、とだけ答えた。
「胎児の保護は遺伝子管理局とドームの仕事ですから、外の世界も承知しています。特別扱いではありませんからね。」
ゴダートの両親は娘の最初の結婚も二度目の結婚も認めなかった。だからライサンダーがドームに保護されても何も言わないだろう。
ヤマザキがライサンダーの様子を報告した。
「セイヤーズの息子は眠っている。目覚めた時にパニックになるかも知れないので、セイヤーズに付き添わせているんだ。」
「セイヤーズも・・・ダリルの方だが・・・まいっているだろう?」
ケンウッドはドーマーの身を心配した。クロエルが答えた。
「セイヤーズは強いっす。ライサンダーも感情の波を乗り越えたら、大丈夫っすよ。彼等には胎児って言う希望があるっすから。」
子供は希望だ、とケンウッドも思った。どこの世界でもいつの時代も、子供は希望なのだ。
そう言えば、クロエルも受胎3ヶ月で母胎から出された。母親に生まれることを拒否されたのだ。しかし、彼は現在多くの人々に愛されている。クロエルを可愛がっているハイネが話題を変えた。
「FOKは銃器を使ったのか?」
クロエルが上司を振り返った。
「向こうは持ってました。でも僕ちゃん達は素手で応戦したっす。ちょろい連中で・・・」
ヤマザキが笑った。
「君とセイヤーズに掛かれば、大概の連中はちょろいだろうさ。ケリーも頑張ったんだろ?」
「当然っすよ! アイツは監視役の責任を感じて必死でした。今、パトリック・タンの部屋に行ってます。きっと事件の話をしてるんでしょ。」
ジョン・ケリーはパトリック・タンの誘拐事件の責任を感じていた。皆んなから否定されても、彼自身はこだわっていたのだ。今回もその自責の念に苦しむだろう。だから、ケリーがライサンダーの容体を伺いに医療区に来た時に、ヤマザキはタンの部屋に寄って行け、とアドバイスした。タンは退院が近い。だから、仕事の話で社会復帰の準備をしてやれ、とさりげなく心の中を同僚に打ち明けるセラピーを勧めたのだ。タンの対人恐怖症を克服する為にも、ケリーの悩みを解消させようとすることで自信をつけさせるのだ。
「ライサンダー・セイヤーズの心理的治療は君達に任せるよ。」
とケンウッドはヤマザキとドーマー達に言った。
「私は外の事件にドーム関係者が巻き込まれた場合のマスコミ対応を、大統領と相談する。ドームの秘密主義を外の人々が不審に思うだろうしね。」
半分まで食べた頃に、ヤマザキ医療区長がクロエル・ドーマーと共にやって来た。普通に同席の許可を求め、着席したクロエルは小声で報告した。
「過去に起きたFOKの犯罪と同じ扱いをしてもらうことを、警察に確約させました。」
ケンウッドとハイネは頷いた。FOKがクローンの子供を人体実験に用いる目的で誘拐して殺害した一連の事件と同じ扱いでマスコミに発表するのだ。実際、ドン・マコーリーはそのつもりでライサンダーの家族を襲ったのだから。
「ゴダートの両親には連絡が着いたのか?」
とケンウッドは被害者遺族の対応を心配した。クロエルは、警察に任せています、とだけ答えた。
「胎児の保護は遺伝子管理局とドームの仕事ですから、外の世界も承知しています。特別扱いではありませんからね。」
ゴダートの両親は娘の最初の結婚も二度目の結婚も認めなかった。だからライサンダーがドームに保護されても何も言わないだろう。
ヤマザキがライサンダーの様子を報告した。
「セイヤーズの息子は眠っている。目覚めた時にパニックになるかも知れないので、セイヤーズに付き添わせているんだ。」
「セイヤーズも・・・ダリルの方だが・・・まいっているだろう?」
ケンウッドはドーマーの身を心配した。クロエルが答えた。
「セイヤーズは強いっす。ライサンダーも感情の波を乗り越えたら、大丈夫っすよ。彼等には胎児って言う希望があるっすから。」
子供は希望だ、とケンウッドも思った。どこの世界でもいつの時代も、子供は希望なのだ。
そう言えば、クロエルも受胎3ヶ月で母胎から出された。母親に生まれることを拒否されたのだ。しかし、彼は現在多くの人々に愛されている。クロエルを可愛がっているハイネが話題を変えた。
「FOKは銃器を使ったのか?」
クロエルが上司を振り返った。
「向こうは持ってました。でも僕ちゃん達は素手で応戦したっす。ちょろい連中で・・・」
ヤマザキが笑った。
「君とセイヤーズに掛かれば、大概の連中はちょろいだろうさ。ケリーも頑張ったんだろ?」
「当然っすよ! アイツは監視役の責任を感じて必死でした。今、パトリック・タンの部屋に行ってます。きっと事件の話をしてるんでしょ。」
ジョン・ケリーはパトリック・タンの誘拐事件の責任を感じていた。皆んなから否定されても、彼自身はこだわっていたのだ。今回もその自責の念に苦しむだろう。だから、ケリーがライサンダーの容体を伺いに医療区に来た時に、ヤマザキはタンの部屋に寄って行け、とアドバイスした。タンは退院が近い。だから、仕事の話で社会復帰の準備をしてやれ、とさりげなく心の中を同僚に打ち明けるセラピーを勧めたのだ。タンの対人恐怖症を克服する為にも、ケリーの悩みを解消させようとすることで自信をつけさせるのだ。
「ライサンダー・セイヤーズの心理的治療は君達に任せるよ。」
とケンウッドはヤマザキとドーマー達に言った。
「私は外の事件にドーム関係者が巻き込まれた場合のマスコミ対応を、大統領と相談する。ドームの秘密主義を外の人々が不審に思うだろうしね。」