2019年5月25日土曜日

大嵐 2 2 - 2

 夕食の席でケンウッドはハイネからセイヤーズ親子の様子に関する報告を聞いた。ハイネは午後の臨時執政官会議をサボった。ケンウッドが無駄な会議だと感じたのと同様、彼も出席する価値なしと判断したからだ。そしてレインからアメリア・ドッティの電話を受けたと聞かされた。アメリアは命の恩人だったポーレット・ゴダートの殺害事件にびっくり仰天して、レインの端末に直通でかけてきた。彼女はお悔やみを述べ、ライサンダーと胎児の無事を確認したのだが、レインが局長に報告した理由はそんなことではなかった。
彼女はライサンダーが男性同士の間の子供だと知っており、レインが彼女の従兄弟だと言うことも知っていたのだ。つまり、彼女の伯母であるアーシュラ・L・フラネリーが彼女にポール・レインがフラネリー家の次男である事実を教えたことになる。

「アーシュラは、娘のフランシスと俺が双子だとアメリアに言ったそうです。」

 取り替え子の秘密を守って、しかし我が子の存在を親族に伝えておきたい。アーシュラの精一杯のドームへの抵抗だった。
 アメリアはドッティ家の経済界の力を使って事件の後処理をすると約束した。大統領を輩出した家系であり、経済界の大物を夫に持つ彼女は、一族の名誉を守る為に、マスコミへ影響力を行使するつもりだった。つまり、ライサンダーの身元を隠し通してくれるのだ。
 ハイネはレインにアメリアとこれからも連絡を取り合ってドームの秘密を守る努力を怠るなと指示した。そして、その内容をケンウッドに報告した。
 ケンウッドは既にハロルド・フラネリー大統領と話し合っていたので、マスコミ対策は十分だと思っていた。だが大富豪の奥方が味方につけば更に心強かった。そして「双子」のアイデアに感心した。

「それなら、これからレインは大ぴらに実家と接触出来るのではないかね?」
「公には無理です。」

とハイネが否定した。

「現職大統領の兄弟は妹1人だけと言うのが世間の認識です。2人目がいきなり現れては、何故一緒に育たなかったのかと疑問が生じます。余計なことを探られますぞ。」
「そうか・・・確かにそうだな・・・私が甘かった。」

 いつかドーマー達を本当の親族の元へ返してやろうと考えているケンウッドは、時期尚早と反省した。