2019年5月3日金曜日

訪問者 2 2 - 2

 出資者様の視察団が来る正式な連絡が来たのはベルトリッチ委員長がケンウッドに内密の報告をした1時間後だった。視察団の目的は女子を生める遺伝子を持ったセイヤーズと古代人ジェリー・パーカー、それに不思議な能力で染色体を肉眼で見る少女JJ・ベーリングに面会したいと言うことだった。
 ケンウッドはそれを執政官宛の一斉送信で通知して、その夜に臨時会議を開くことを連絡した。またおもてなしの相談だ。副長官にはおもてなし旅行の立案も頼まなければならない。ゴーンに申し訳なく思ったが、これは副長官の仕事なのだ。当然ながら、遺伝子管理局長にも通知して、入院する準備を促した。
 ヤマザキ医療区長から電話が掛かってきた。

「ハイネの捕獲予定日を知らせろとのことだが、必要なのか?」
「委員長から彼と私に話があるので、入院前に伝えたいと言われているんだ。」
「話?」
「内容はまだ秘密で、私も何も教えられていない。正直なところ不安だよ。」

 するとヤマザキがなんでも無いような口調で言った。

「多分、希少遺伝子の提供の相談だな。」
「希少遺伝子だって? それは関係無いと言っていた。セイヤーズが持っている遺伝子は関係無いとか・・・」
「進化型とか、そう言う改造型のものは関係無いってことだ。地球人には色々遺伝子異常とか突然変異とかあるから、そう言うのを提供しろって言う話だろう、多分。」

 成る程、それなら遺伝子管理局長も同席しろと言う理由になる。ケンウッドは深く考えないことにした。少なくとも、実際に内容を聞かされる迄は。

「ハイネは視察団が来る前日に捕まえるよ。そうだな・・・オヤツの時間にしよう。菓子に下剤か何か仕込んで診察に来させる。」

 サディスティックな案を出してヤマザキは愉快そうに笑った。