ジムで行われた対戦は、情報管理室のモニターで見ることが出来た。実のところ、ポールが部屋に端末を置き去りにしたので、緊急通信が入った時、ダリルは彼が何処にいるのか知らなかった。仕方なく自身で電話に出て、モニターで捜してもらったのだ。
「良いのかなぁ、視察官をこてんぱんにやっつけちゃって・・・」
保安課のモニター係が呟いた。彼の相棒が「良いんじゃない」と言った。
「ハイネが黙認しただろ? それにギャラリーには視察団の人間もいる。連中、楽しんでいるぞ。」
ポール・レイン・ドーマーはゴメス少佐の介入で対戦が終了して内心ホッとしていた。ダリルが負けるとは思っていなかった。ダリルがクロワゼットを傷つけるのではないかと心配だったのだ。ダリルは普段は優しく美しく気儘で猫みたいな男だが、怒ると凶暴な虎に変身する。一撃で相手を倒してしまうのだ。
クロワゼット大尉がギャラリーに向かって何か言った。ギャラリーのドーマー達が笑って何か言っている。大尉も顔が羞恥心で真っ赤になっている。あんな恥をかかされたら、次の視察はここへ来たくないだろう。地球の視察そのものに加わりたくないかも知れない。
「セイヤーズを怒らせるとやばいなぁ。」
ポールは恋人の噂を聞かされに来たのではない。彼はモニター係を急かした。
「緊急の用件とは何だ?」
「ああ・・・忘れてた!」
係官はキーを叩いた。そばのプリンターから4通の文書が吐き出された。
「君の捜し物だと思うけど・・・1度に4通も許可申請を出す人間も珍しいだろ?」
ポールは直ぐには応えなかった。黙って4通の文書を睨み付けていた。それは、成人登録申請書、妻帯許可申請書、婚姻許可申請書、胎児認知届けだった。全部同じ人物から出されていた。
ポールは、ライサンダー・セイヤーズの誕生日も生誕地も知らない。しかし、ダリルが消えた日から約10ヶ月後、ダリルが住んでいた山から近い砂漠のラムゼイ博士の研究施設があった辺りが、成人登録申請書に書き込まれていた。傑作なのは、父親の欄に、ダリル・セイヤーズとポール・レインの名前を無理矢理記入してあったことだ。
ダリルだけで良いのに、律儀に俺の名前まで・・・
母親の欄には誰の名も書かれていない。これはクローンの子供が出す申請書だ。
妻帯許可申請はおいておくとして、婚姻許可申請書は、既に相手との間に関係が出来ていると言う意味だ。女性の名前を見て、彼はどこかで見た名だ、と考えた。
ポーレット・ゴダート?
彼はそばの空いているコンピュータのキーを叩いた。地球上の女性は1人残らずドームに登録されている。果たして、若いアフリカ系の美しい女性の顔写真が画面に現れた。
彼女を知っていた。ここ、ドームの中で会ったのだ。ダリルを連れ戻して、ダリルが記憶を削除されて、ダリルがリハビリでプールに行ってアメリア・ドッティを救助して・・・
アメリアを助けたもう1人の人物だ!
ポールはポーレット・ゴダートのデータを呼び出した。大学教授の娘として産まれ、白人男性と結婚して、出産したものの、夫が急死したために子供は彼女の経済力の無さを理由に養子に出された。その後は1人で暮らしていた様だ。
どこかでいつの間にか、ライサンダーと出遭っていた。
しかも、妊娠している・・・
ポールは事の重大さに気が付いた。男性同士の間に産まれた息子が、女性との間に子供をつくった。自然な交わりで・・・。
胎児は正常なのか? 進化型1級遺伝子を持っているのか? 男か女か?
モニター係が不安げにポールを見上げた。ポールの顔が強ばっていたからだ。
「君の名前が書いてあるけど、無断使用だよね? 問題だよね?」
「そんな次元じゃない。」
「良いのかなぁ、視察官をこてんぱんにやっつけちゃって・・・」
保安課のモニター係が呟いた。彼の相棒が「良いんじゃない」と言った。
「ハイネが黙認しただろ? それにギャラリーには視察団の人間もいる。連中、楽しんでいるぞ。」
ポール・レイン・ドーマーはゴメス少佐の介入で対戦が終了して内心ホッとしていた。ダリルが負けるとは思っていなかった。ダリルがクロワゼットを傷つけるのではないかと心配だったのだ。ダリルは普段は優しく美しく気儘で猫みたいな男だが、怒ると凶暴な虎に変身する。一撃で相手を倒してしまうのだ。
クロワゼット大尉がギャラリーに向かって何か言った。ギャラリーのドーマー達が笑って何か言っている。大尉も顔が羞恥心で真っ赤になっている。あんな恥をかかされたら、次の視察はここへ来たくないだろう。地球の視察そのものに加わりたくないかも知れない。
「セイヤーズを怒らせるとやばいなぁ。」
ポールは恋人の噂を聞かされに来たのではない。彼はモニター係を急かした。
「緊急の用件とは何だ?」
「ああ・・・忘れてた!」
係官はキーを叩いた。そばのプリンターから4通の文書が吐き出された。
「君の捜し物だと思うけど・・・1度に4通も許可申請を出す人間も珍しいだろ?」
ポールは直ぐには応えなかった。黙って4通の文書を睨み付けていた。それは、成人登録申請書、妻帯許可申請書、婚姻許可申請書、胎児認知届けだった。全部同じ人物から出されていた。
ポールは、ライサンダー・セイヤーズの誕生日も生誕地も知らない。しかし、ダリルが消えた日から約10ヶ月後、ダリルが住んでいた山から近い砂漠のラムゼイ博士の研究施設があった辺りが、成人登録申請書に書き込まれていた。傑作なのは、父親の欄に、ダリル・セイヤーズとポール・レインの名前を無理矢理記入してあったことだ。
ダリルだけで良いのに、律儀に俺の名前まで・・・
母親の欄には誰の名も書かれていない。これはクローンの子供が出す申請書だ。
妻帯許可申請はおいておくとして、婚姻許可申請書は、既に相手との間に関係が出来ていると言う意味だ。女性の名前を見て、彼はどこかで見た名だ、と考えた。
ポーレット・ゴダート?
彼はそばの空いているコンピュータのキーを叩いた。地球上の女性は1人残らずドームに登録されている。果たして、若いアフリカ系の美しい女性の顔写真が画面に現れた。
彼女を知っていた。ここ、ドームの中で会ったのだ。ダリルを連れ戻して、ダリルが記憶を削除されて、ダリルがリハビリでプールに行ってアメリア・ドッティを救助して・・・
アメリアを助けたもう1人の人物だ!
ポールはポーレット・ゴダートのデータを呼び出した。大学教授の娘として産まれ、白人男性と結婚して、出産したものの、夫が急死したために子供は彼女の経済力の無さを理由に養子に出された。その後は1人で暮らしていた様だ。
どこかでいつの間にか、ライサンダーと出遭っていた。
しかも、妊娠している・・・
ポールは事の重大さに気が付いた。男性同士の間に産まれた息子が、女性との間に子供をつくった。自然な交わりで・・・。
胎児は正常なのか? 進化型1級遺伝子を持っているのか? 男か女か?
モニター係が不安げにポールを見上げた。ポールの顔が強ばっていたからだ。
「君の名前が書いてあるけど、無断使用だよね? 問題だよね?」
「そんな次元じゃない。」